学級じまい:最高のエンディングを演出する3つの工夫
学級じまいで子どもを幸せにするという視点から考えたいことがあります。それは、「○年生のほうが楽しかった」「○○先生がよかった」 そう思わせてしまわないことです。もちろん、そう思われれば教師として悪い気はしません。ですが、進級した子供たちを幸せにするのでしょうか? 最高のエンディングを考えるとき、それは言うまでもなく子供たちにとってのものでなければなりません。
執筆/新潟大学教育学部附属長岡小学校教諭・畠山明大
目次
エンディングはオープニングの始まり
最高のエンディングとは
どの子も別れを惜しみ、このクラスでの一年間が終わってしまう悲しみで涙する。若い頃、そんな「エンディング」に憧れていました。ですが、それは教師の自己満足なのではないかと思うようになりました。 私が考える最高のエンディングとは、「自分たちの変化や成長を自覚し、自信と期待感をもてること」です。
涙を流すほど自学級に愛着を感じられることは、とても素敵なことです。しかし、最も大切なことは、別れを惜しみながらも、自信とやる気をもって次の学年へ進むことではないでしょうか。
エンディングを迎えるということは、程なく次の学年のオープニングを迎えるということなのです。いつまでも現学年の思い出に浸ることなく、「次の学年で充実の毎日を送ること」こそが大切なのです。そのための最高のエンディングと心得ましょう。
次につながる「エンディング」
例えばこの3点でエンディングを演出してみてはいかがでしょうか。
○自分たちで計画・準備する「学級解散パーティ」
○成長を具体で自覚する「学級物語」
○仲間からの言葉がうれしい「サークルメッセージ」
学級解散パーティ
【具体例】
・カラオケ大会
・お楽しみドッジボール
・仲よく調理実習
・お笑い、一発芸大会
・大縄新記録チャレンジ
一年間の最後に解散パーティを開催します。これ自体に新しさはありません。内容は学級のカラーに応じて、何でも構いません。ただし、計画から準備、当日の進行まで、子供たちが行うのです。極力、先生は手を出しません。
「みんなで力を合わせれば、何でもできる」
一年間の締めくくりにもう一度、子供たちにこの思いをもたせたいのです。
学級物語
【作成例】
・学級の様子が分かる写真をスライドショーにする
・教師が見取った成長をメッセージとして写真につけ加える
・音楽会で歌った歌や運動会の応援歌、学級の思い入れが深い歌をBGMにする
「一年で一番思い出に残ったことは?」と子供たちに聞くと、どのような答えが返ってくるでしょうか。「運動会」「音楽会」それとも「林間学校」でしょうか? 子供たちに限らず、人間は思い出を「強く印象に残った一場面」「総合的なイメージ」で記憶しているようです。
ですから、「どうして運動会?」と聞くと、子供たちは「優勝したから」「みんなで協力したから」と答えるのです。しかし、それでは自分の成長をなかなか具体的に自覚できません。
そこで、一年間撮りためた写真を「学級物語」として子供たちに見せます。「あー、あの後大変なことが起きたんだよな」「○○さん、あの時すっごく頑張ってたね」と、より具体的に振り返ることができます。
自分たちの成長への自覚が具体的であればあるほど、子供たちの自信と次へのやる気は高まっていくことでしょう。
サークルメッセージ
【行い方】
・円になって座る
・おもちゃのマイクやボールを持った人が話す
・仲間への感謝や学級の成長を話す
・話し終わったら、次の人に交代
・学級の実態に応じて、事前に話すことを書いてきてもよい
「学級物語」の映像だけでなく、仲間からの言葉がけでも成長を自覚したいものです。やり方は簡単です。全員で円(サークル)を作って、一人一人が学級の成長や感謝の言葉を述べていくのです。
学級の仲間から感謝してもらうことは、子供たちにとって大きな喜びです。
エンディングに向けて仕込み期間は必要
「学級物語」も「サークルメッセージ」も、作り方や行い方は簡単です。ですが、エンディングのときにだけやろうとしても子供はうまくできません。少なくとも、学級内に互いを認め合い、尊敬し合える風土がなくてはなりません。
その上で、一日単位、一週間単位で自分や学級について振り返る活動を地道に積み重ねていくことです。毎日の学校生活の中で、教師が子供の素敵な行為を取り上げて価値づけてあげることです。
学級活動や帰りの会、ちょっとした隙間時間に、子供たちが互いをほめ合うような活動を積み上げることです。そうすることで一層、最高のエンディングに近づいていくのではないかと思います。
今からでも、できることはたくさんあります。何が必要かを見極めて、そのクラスにしかない、最高のエンディングを迎えましょう。そして、子供たちに笑顔があふれ、「次の学年になっても頑張るぞ!」という気持ちにして、送り出してあげましょう。
イラスト/設楽みな子
『小五教育技術』2019年1月号より