【相談募集中】子どもたちに責められて学校に行けなくなりました

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臨床心理士・公認心理師

大多和二郎

現在休職中の初任の先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。先生や保護者は親切に対応してくれていましたが、肝心の子どもたちから責め立てられて学級崩壊状態に。復帰予定ですが、不安でたまらないそうです。今回答えてくれたのは、教員向け法定研修でメンタルヘルス研修の講師をされている臨床心理士・公認心理師の大多和二郎先生。心理的コミュニケーションの視点からアドバイスをしてくれました。

悩んでいる女性
イラストAC

Q.子どもたちに責められて泣いてしまい、学校に行けなくなりました

現在病休中の初任者です。今後仕事を続けていけるか不安です。気持ちを病んでしまった原因のほとんどは、子どもとの関わりでした。先生方や保護者の皆様は優しいけれど、一番肝心の子どもと本当に上手くいきませんでした。

学級崩壊状態で、授業の時間の大半は静かにしてほしいと伝えることで消費されていきました。他の先生に聞いた、黙ってみる、小さな声で話してみるなどのテクニックを使っても全然ダメ。子どもたちは「学校は最悪」「つまらない」と、ことあるごとに口にし、「先生のせいで好きだった教科が嫌いになった」「先生のせいでクラスが荒れてるんだよ、分かれよ!」と強い言葉で私を責め立てました。

どうにかしたいと思っても、どうしていいのか分からず、他の先生に相談しても具体的な改善案はあまり出てこなくて、ずっと右往左往していました。

ある日、子どもから強く責め立てられた際についに限界を迎えて、教室でうずくまって泣いてしまい、そこから学校に行けなくなりました。 復帰する予定なのですが、毎日のように子どもに「先生は邪魔」「先生のせいで……」と責め立てられる夢にうなされて、不安でたまりません。(かすみ草先生・女性・20代)

A.子どもたちは先生がリードして授業を進めてほしいと思っています

現在病休中の初任者の先生ですね。お休みに入った理由としては、子どもたちとの関わりが原因とのことですね。具体的に学級の状況が書かれているので、その大変さが伝わってきました。授業の時間の大半は静かにしてほしいと伝えることで消費されているという状況が続き、子どもたちからも責め立てられるという状況で限界に達したとのことですね。では、これから復帰するにあたって、どのようなことに注意したらいいか考えていきましょう。

クラスの中には、いつも落ち着かず口や体が動き続けている子もいれば、先生の話を熱心に聞こうとしている子もいると思います。熱心に聞こうとしている子にとっては、騒がしいおしゃべりをする子は本当に迷惑です。「静かに授業受けようよ」と言う子どももいると思います。ただ、落ち着かないクラスの状況が続きますと、真面目に授業を受けたいと思っている子もイライラしてきますね。そして「先生!何とかしてください」と言うようになります。結果として、クラス全体がイライラしたムードになってきて、授業も進まず、学校が面白くないと感じる子どもも出てきます。そして、先生の戸惑いや不安が子どもにも伝わり、「先生、しっかりしてよ!」というようなことを言われるようになってしまいます。

「責め立てられ、うずくまって泣いてしまった」ときはとても不安で心細かったと思います。大変でしたね。しかし、子どもたちの強い言葉は攻撃的に聞こえるかもしれませんが、「困っているのでどうにかしてほしい」「先生に期待している」「先生に頑張ってほしい」という気持ちもあると思います。子どもたちも不安で余裕がないので、強い口調になりますが、先生が自分たちをリードして授業を進めてほしいという気持ちも持っています。

「他の先生方や保護者は優しい」ということですので、落ちつかないクラスのムードさえなんとかすることでやっていけると感じました。そのためにはクラスの雰囲気をうまく整えられる方向性を知ることがとても重要だと思いました。そこで、心理的コミュニケーションの視点から、参考になりそうなことをお伝えします。以下の3つがポイントになります。

  • 子どもは、先生に押さえつけられるのは嫌だけれど、リードしてくれるのは嬉しい。
  • 子どもは、授業で何かを知ったりできるようになったりする体験は嬉しい。
  • 子どもは、先生が生き生きと授業をしていると嬉しい。

「〜してください」とお願いするのは、心理的コミュニケーションの視点からいうと、相手に主導権を取らせる発言です。「〜したくないよ」という選択肢を与えてしまっています。

「静かにしてください」よりも「静かにします」の方が先生がリードしているコミュニケーションです。さらに言うなら、「授業を始めます。今から先生が話します」とリードを前面に出すスタートでも良いと思います。最初はザワザワしていても、先生の話に注目する子どもが少しずつ増えてくると結果的に静かになります。そのためには、子どもが耳を傾けるような話し方を心がけると良いでしょう。「実はね……、みんな、知っているかな……?」というような語りかけは、好奇心が刺激されて、注目する子どもが増えます。そしてお腹から発する声で語りましょう。お腹から出るしっかりした声には説得力があります。子どもは敏感です。先生がリードして授業を進めると決めたのだと、先生の発言の仕方や声の違いから理解します。そうすれば、以前とは違ったクラスの雰囲気になると思います。ぜひ、お試しください。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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