学校評価はなぜ行う?学校評価と業務改善~シリーズ「実践教育法規」~
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- シリーズ「実践教育法規」
教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第14回は「学校評価と業務改善」について。「自己評価(義務)」とは違い、「学校関係者評価」の実施と結果の公表は努力義務とされていますが、地域や家庭との協働のためにも、各学校において重要なことといえます。
執筆/大野 裕己(兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)
【連載】実践教育法規#14
目次
教育水準確保・向上の具体的方策のひとつ
2000年代の学校改革においては、学校の裁量拡大を通じた特色ある教育活動・学校づくりを基調に、学校が提供する教育水準の向上や保護者・地域の理解・協力の獲得もめざされました。その具体的方策として学校評価が着目され、2002年の学校設置基準(省令)制定を契機に、段階的にその制度が構築されました。
特に2007年の学校教育法・学校教育法施行規則改正により、現在につながる学校評価とその実施手法の骨格が定められました。関連して、文部科学省作成・公表の「学校評価ガイドライン」が、学校や設置者の取り組みにおいて参照されることになります。
教育基本法は、義務教育の機会保障と水準確保にかかる国・地方公共団体の役割・責任(第5条3項)、学校における体系的な教育の組織的な実施(第6条2項)、学校・家庭・地域住民等の相互の連携協力(第13条)を規定しています。
これらに基づき、学校教育法には、各学校が教育活動その他の学校運営の状況についての評価を行い、その結果に基づく必要な改善措置を講ずる学校評価に関する規定(第42条)が設けられています。また、これと関連して、各学校に対して、当該校の保護者及び地域住民その他の関係者に対する教育活動・学校運営の状況に関する情報提供を求める規定(第43条)が設けられています。
自己評価と学校関係者評価
学校評価の実施手法については、省令である学校教育法施行規則(第66・67条)で「自己評価」「学校関係者評価」の2つが定められています(「学校評価ガイドライン」では、設置者・学校が任意で実施しうる、外部専門家等による「第三者評価」も示されています)。
「自己評価」は、校長をはじめ全教職員が当該校の目標・計画等に即して評価項目を設定したうえで、その達成状況や達成に向けた取り組みの適切さ等について評価を行うもので、各学校には実施及び結果の公表が義務づけられています。
「学校関係者評価」は、当該校の保護者や地域住民等の関係者が、教育活動の観察や意見交換等を通じて自己評価の結果を踏まえた評価(自己評価の結果の内容や改善方策の適切性等)を行うものです。学校関係者評価の実施及び結果の公表は努力義務となっています。
現在の学校評価制度は、各学校での主体的な目標設定や点検・評価の作用を内含する「自己評価」に中心的な位置を与えるとともに、その自己評価の結果を踏まえた評価を基本とする学校関係者評価を加えて、自己評価の客観性・透明性の向上や学校・家庭・地域の共通理解と協働を促す構図となっています。これは、冒頭でふれた学校改革の考え方及び教育基本法の論理に基づくものと言えます。
業務改善の点検・評価と学校評価を連動
ところで、教育課題の多様化に伴い、学校の役割期待の拡大やその結果としての教職員の長時間勤務等の問題が顕在化し、学校の業務改善(働き方改革)の必要性が増しています。この文脈からは、直接的な教育活動ではない学校評価の活動は余分な「こなし仕事」のようにも映ります。
しかし、上記の自己評価・学校関係者評価の構図を踏まえると、各学校がそれぞれ設定した教育目標の達成に向けて、学校評価を通じて①諸取り組みの(目標に対する)効果を検証し、取り組みの重点化・精選を図ること、②評価結果や改善意図を家庭・地域に積極的に発信して必要な支援・協力を得ることの重要性を指摘できます。
文部科学省「学校現場における業務改善のためのガイドライン」(2015年)でも、学校評価のプロセス自体が業務改善の前提としての実態把握につながる、といった業務改善と学校評価の連動の意義が示されています。
『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正