小学校理科で、子どもたちが主人公の観察・実験にするためには? 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】
子どもが主人公の観察、実験にするためには?

理科の授業を進めるにあたり、教師の誰もが「子ども一人一人の思いを大切にしたい」「子ども主体の観察、実験をさせてあげたい」と願うことでしょう。
しかし、指導の中には、子ども自身ができるはずのことまで教師がやっていることも少なくありません。そうすると、観察、実験が「教師が用意したもの」「教師から与えられたもの」になってしまい、子どもが学びの主人公から遠ざかってしまうことになってしまいます。 優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法やアイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/北海道公立小学校主幹教諭・加藤久貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1 観察、実験に必要な器具は「何を使えばいいかな?」

観察、実験の計画を立てる際に、「必要な実験道具はこれです」と言って実験道具を説明していませんか?
いつも教師が提示した実験道具で実験を行っていると、子どもは「実験器具の準備は教師がしてくれるもの」と認識し、自分たちで実験計画を立てる力が育成されません。
そこで、観察、実験に使う器具は子どもと一緒に決めていくことを強くお勧めします。
例えば、 第5学年の「ものの溶け方」の学習で、50mLの水に食塩を溶かすとしましょう。その際に、適切な実験器具は何かを子どもに選択させるのです。

どのように確かめたらいいかな。

ビーカーを使ったらいいと思います。

ビーカーの大きさはどうしましょう?

50mLの 水なんだから50mLのビーカーでいいんじゃない?

それだと、食塩を入れてかき混ぜたときにあふれてしまうかもしれないよ。

それじゃ100mLにしてみよう。

こうして自分たちで選択した実験器具を活用することで、適切な実験器具を選択する力が身に付き、この経験を繰り返すことで、自ら考えながら問題を解決しようとする力を育成することにつながるでしょう。
なお、子どもたちの力では思いつかないものや、新しい実験器具を活用する際も、一度子どもに実験方法を考えさせてから紹介するようにします。
そうすることで、その器具を使うことの意味や器具の便利さなどにより気づくことができるでしょう。

複数の大きさのビーカーをもちながら話し合う子供たち

2 観察、実験に使用する器具は「どこにあるかな?」

実験に必要な器具をグループごとにトレイに分けて各テーブルに用意するなどして、すぐに実験が始められるように準備してあげている方も多いのではないでしょうか?
私も以前は子どもたちにとって良かれと思い、そうしていました。
しかし、一見親切に思えるこの活動も、よく考えてみると、子どもの主体性を育てる面においては、必要なかったように感じています。
前項のように、せっかく子どもたちと実験方法について考えたのであれば、観察、実験の準備もまた、子どもに任せてみませんか。
子どもたちは、楽しんで実験器具を探します。初めのうちはうまく見つけることができずに時間がかかるかもしれませんが、そこは我慢して待ってみましょう。探す活動すら、子どもたちは楽しみます。探検のような感覚です。子ども同士で声をかけながら協力しながら見つけることができます。

験器具を探している様子

理科準備室で器具を管理している場合も、薬品関係などの適切な保管や安全面についての事前指導を確実に行うことで、自由に出入りさせてよいでしょう。
このように進めることで、子どもたちが自律的に実験の準備をする力が育成されるでしょう。観察、実験を自分で進めている、という実感をもつことで、子どもたちはより理科の学習に熱中することでしょう。皆さんも子どもを信じて積極的に「あずけて」みませんか。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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加藤久貴先生

<執筆者プロフィール>
加藤久貴●かとう・ひさき 北海道公立学校主幹教諭
北海道教育委員会の学力向上推進事業による授業改善推進チームとして、市内の全小学校を訪問し、ICT端末を活用した授業づくりを推進している。
共著に「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「これからはじめる “GIGA” 全学年×1人1台端末×活用事例小学校理科3・4年」(日本標準)等


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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