小4国語科「工芸品のみりょくを伝えよう」板書例と全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小4国語科「工芸品のみりょくを伝えよう」(光村図書)の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/神奈川県相模原市教育員会教職員人事課副主幹・荒木昭人
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、自分の考えとそれを支える理由や事例との関係を明確にして、書き表し方を工夫する力を育てます。理由を記述する際には、「なぜなら~」、「その理由は~」など、事例を記述する際は、「例えば~」、「事例を挙げると~」などの表現を用いることで、自分の考えとの関係性が明確になるような表現ができるようにしていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、前単元の「未来につなぐ工芸品」や日本の工芸品について書かれた本を読んで要約する学習を踏まえ、工芸品のよさについて調べ、理由や例とともにリーフレットにまとめ、友達に知らせる言語活動を設定します。
リーフレットは、限られた紙面内で読み手に対してわかりやすく伝えるために、自分の考えや理由・事例を明確にして書くことを学習するのに適した言語活動だといえます。
また、「工芸品のよさを伝える」という目的を意識して書くためには、「興味のある工芸品を選ぶ」ということや「紹介する工芸品のよさを知る」ということが重要になります。
4. 指導のアイデア
書くことの学習において、何より「書きたい」と思える題材を設定することが重要です。
工芸品について、図書資料やインターネット図鑑等を活用して調べるだけでなく、実際に候補となる工芸品に触れる機会を設けたり、社会科や総合的な学習の時間との関連を図り、工芸品を作っている人の話を聞く機会を設けたりすることで、「この工芸品についてもっと知りたい」「この工芸品を紹介したい」等の意欲が高まっていきます。
このように教科横断の視点で学習を関連付けることを意識して単元全体の計画を立てることにより、子供自身が「何のために取り組むのか」「どんなことをしたら目的が達成できるのか」という意識を高める単元づくりや、授業内での声かけなどにつながります。子供たちが導入の段階から見通しをもって学習に取り組む姿や、目的に向かって粘り強く学習に取り組む姿が見られるようになります。
また、題材の情報を集めるために、一つの工芸品に対して複数の資料を用意しておくことも重要です。多様な情報から子供自身が「伝えたい」と思える情報を選択できる状況をつくることで、対象に対する自分の考えを明確にすることにつながります。
作成したリーフレットを共有する場面においても様々な工芸品の情報に触れることで興味や関心が高まるとともに、友達の文章と自分の文章を比べてそれぞれのよさについて考えることにもつながっていきます。
さらに、リーフレットの組み立てを考えたり、リーフレットを作成したりする場面においては、「モデル」を提示することが有効となります。教科書に掲載されている例や教師が作成した例、さらには実際に配付等されているリーフレットやパンフレットを紹介することで、子供のよりよい組み立てや表現につながっていきます。
1人1台端末については、例えば「工芸品について情報を集めたり、集めた情報を整理したりまとめたりする場面」「リーフレットを作成する場面」「完成したリーフレットを読み合い、そのよさを伝え合う場面」等での活用が考えられます。子供の実態を踏まえて、積極的に活用していきましょう。
5. 単元の展開(7時間扱い)
単元名: 工芸品のみりょくをリーフレットで伝えよう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 工芸品についてのリーフレットを作る流れを確かめ、学習の計画を立てる。
・第二次
(2時、3時、4時、5時、6時)
② 紹介したい工芸品について詳しく調べ、分かったことを書き出して整理する。〈 1人1台端末の活用① 〉
③ 教科書の例を読み、組み立ての特徴や表現の工夫について確認する。
④ 工芸品のよさが伝わるようなリーフレットの組み立てについて考える。
⑤⑥ 考えた組み立てに沿って文章を書く。〈 1人1台端末の活用② 〉
・第三次(7時)
⑦ リーフレットを読み合い、感想を伝え合う。〈 1人1台端末の活用③ 〉
全時間の板書例、発問例、児童の発言例
〇 単元の導入場面において、子供自身が「本単元でどんな言語活動に取り組むか」という見通しをもつことが重要です。そのために、教科書でリーフレットとはどんなものなのか確認したり、教師が作成したモデルを紹介したりするとよいでしょう。
また、実際にリーフレットを使って活動を紹介する際は、リーフレット作成に役立つ図鑑やサイトについても紹介できると、単元全体の見通しをもつことにもつながります。
さらに、ここから取り組む学習の計画を子供と一緒に立てることも有効です。
みなさんは「未来につなぐ工芸品」を読み、どんなことを考えましたか。
まだまだ私たちが知らない魅力があるということを知り、もっと工芸品の秘密を知りたくなりました。
「奈良墨」や「南部鉄器」などのよさや特徴が紹介されていましたが、紹介されていた以外の工芸品の魅力についても調べてみたいです。
社会の学習の中で◯◯県の工芸品である△△について学びましたが、職人さんがインタビューの中でおっしゃっていた「もっと△△のよさを多くの人に知ってほしい」ということと、「未来につなぐ工芸品」の筆者の考えには、「未来につなぐ」ということや「多くの人に知ってほしい」という部分に共通点があると思いました。
「未来につなぐ工芸品」の作者も工芸品の職人さんも、工芸品を「未来につなぐ」ことや「多くの人に知ってほしい」という思いをもっているのですね。
皆さんは、工芸品を未来につないだり多くの人に知ってもらったりするためには、どうしたらいいと思いますか。
まず工芸品のよさについてもっと調べて、どんな魅力があるかを知る必要があります。
工芸品の魅力を知ったら、それをまとめて校内や家族に伝えたいです。
伝えるときには、実物を用意するのは難しいかもしれないので、写真などを使って分かりやすくすることが大事だと思います。
分かりました。では今度は学習したことを生かして、みなさんで工芸品のよさを校内や家族に伝えることを目指しましょう。よさを広める方法の一つに「リーフレット」というものがあります。(リーフレットの実物を見せながら)さて、このリーフレットはどんな特徴があるでしょう。
1枚の紙を折って本のような形にしています。
外側にも内側にも写真や図が使われていて読みやすそうです。
このリーフレットに、みなさんが選んだ工芸品のよさをわかりやすくまとめて読んでもらうのはどうでしょうか。
写真も文章も入れられるのでよさをしっかり伝えられそうでいいと思います。
私もリーフレットを作って家族に紹介したいです。
イラスト/横井智美