小3国語「春風をたどって」京女式板書の技術
今回の教材は、「春風をたどって」です。この単元の学習活動は、「登場人物の行動や気持ちを踏まえて、物語の続きを書いて、伝え合う」です。そのため、登場人物の気持ちが分かる言葉を見付けて、気持ちを考える活動をします。登場人物の気持ちが分かるための板書での仕かけを紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・古垣内千鶴子
教材 「春風をたどって」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全8時間)
- 教材文を読んで感じたことを伝え合い、学習の見通しをもつ。
- 場面ごとに、登場人物の行動を確かめながら音読する。
- 「ノノン」に対して「ルウ」がしたことや言ったことから、気持ちが分かる言葉を見付けて、そのときの気持ちを考える。
- 森や花畑を見ながら「ルウ」がしたことや言ったことから、気持ちが分かる言葉を見付けて、そのときの気持ちを考える。
- 花畑の場面の様子を表す言葉から「ルウ」の気持ちを考える。
- 物語に沿って「ルウ」がどのように変わっていったかを想像する。
- 登場人物の行動や気持ちを踏まえて、物語の続きを考え、書く。
- 物語の続きを読んで、感想を伝え合い、学んだことをまとめる。
板書の基本
〇教材「春風をたどって」は、旅に出たいと考えていたりすのルウが身近な森の中に、すてきな場所があることを見付けるという物語です。登場人物は、ルウと友達のノノンです。ルウの心を動かした森の中には、すてきな花畑があるという場面です。情景を表す文章は美しく、ゆったりとした時間の中で展開する心が表れる作品です。
主体的な学習活動へ導く「見通しをもとう」は次のようになっています。
まず、「とらえよう」で場面を確かめることです。そして、ルウの気持ちが分かる言葉を見付けることを主な学習活動として示しています。
次に「ふかめよう」では、物語が進むにつれてルウがどのように変わったのかを考えることを指示しています。
「まとめよう」「ひろげよう」では、物語の続きを想像する、書いたものを伝え合おうということを大事にした学習活動を設定しています。
この学習過程を大事にするには、物語の全体像を理解する必要があります。気持ちが分かる言葉やルウの変化、さらには、続きを考えるといういずれの学習活動においても物語の全体を理解することが前提と考えています。
〇本時に行う板書は、次のことを大事にしています。
①登場人物・りすのルウの「旅に出たいなあ」という気持ちが、お話の全体を貫いているので、最初の場面を丁寧に読むための仕かけを板書で行う。
②登場人物・りすのノノンのことや森の中で見付けた「花ばたけ」について理解を深める板書をする。
③ノノンが考えている「ぼくの知らないすてきな場所」から広がる続きを想像する学習活動につながるように板書をする。
物語は、題名である「春風をたどって」のように、温かさがあります。子供が抱く初めの感想を大事にして、全体の見通しをもてるようにしたいと考えました。
板書のコツ(4/8時間目前半)
板書のコツ①
日付・題名・めあてを板書します。
めあては、「言葉に着目して、ルウの気持ちを読む。」です。これは、学習の手引きに示している目標です。とくに、言葉に着目するという学習活動を大事にする授業を進めたいと考えています。
板書のコツ②
物語は次の文章から始まります。
「旅に出たいなあ。」
りすのルウは、さいきん、そんなことばかり言っています。
心をうきうきさせるような春風が、高い木のえだにすわったルウのしっぽをくすぐっていきます。
このルウの姿を想像させながら、はじめの場面の音読から授業を始めます。たからものである写真に着目させるために、次のことを板書します。
( )海
( )山々
( )さばく
( )に興味をもたせながら、「たからもののことを思い出しました。」「ルウのたからものは、風の強い日にどこからかとばされてきた、たくさんのしゃしんです。」「見なれたけしきをながめて、ルウはためいきをつきます。」という文章に目を向けていく指導をします。めあてである「言葉に着目する」ことを分かりやすく指導するための( )を使った仕かけです。
板書のコツ(4/8時間目中盤)
板書のコツ①
「最初に行くのは、~きらきらしていてきれいだもん。」という文から森の中の場面は変わります。顔見知りのノノンと出会います。ここで、登場人物の確認をするために、「登場人物」と板書をして意識させます。
板書のコツ②
「森の中」の場面では、ルウが、ノノンの行動をたどるうちに、自分には気付けなかったかすかなにおいに気付いているノノンの知らなかった一面に驚きをもって気付いていく過程を板書していきました。
( )は、めあてである「言葉に着目する」ように、ノノンに導かれて見付けた花ばたけの様子とルウの気持ち(感動している様子)を表す言葉や表現に着目させる仕かけです。
板書のコツ(4/8時間目後半)
板書のコツ①
物語の後半には、ノノンに導かれて「花ばたけ」を見付けたルウの気持ちを伝える文が次々と出てきます。
子供たちの感想にも、根拠となる文章をもとにして発表をさせるという指導を取り入れながら、次の2つの文を板書します。
1つ目は「ぼくひとりだったら、花ばたけを見つけることはできなかっただろう。」
2つ目は「ぼくの知らないばしょが、ほかにもあるかもしれない。」
板書のまとめとして、物語の全体の見通しを確かめさせます。はじめに読んだときの感想はどの部分であるかということを確かめるために板書を見るという学習活動です。
板書のコツ②
「学習の手引き」をもとに、学習用語の確認を行います。
用語として「言葉に着目する」「4つの場面」「ルウの行動を確かめる」「気持ちが分かる言葉」があります。板書をもとにして、学習用語について補足するために活用します。「物語のつづき」を想像する学習活動を予告し、本時のまとめにします。
構成/浅原孝子