新学習指導要領で外国語授業どう変わる?重要な変化と改善ヒント

学習指導要領の改訂にあたり、そのポイントや授業改善の視点、外国語活動・外国語における重要な点などをテーマに、文部科学省・直山木綿子視学官と沖縄県宮古島市立東小学校・平良優教諭に対談していただきました。

直山木綿子さんと平良優さん
直山木綿子さん(左)と平良優さん(右)

直山木綿子(なおやま・ゆうこ)●文部科学省初等中等教育局教育課程課視学官。英語科教諭として京都市の中学校に勤務後、平成10年度より京都市立永松記念教育センター(現京都市総合教育センター)に勤務。京都市における小学校英語指導計画、教材を作成、小学校外国語活動のカリキュラムを開発。平成21年4月より現職。『Hi, friends!』『We Can!』『Let’s Try!』の開発・活用とともに、全国各地での研修や講演など、日本の英語教育の充実と推進に日々邁進する。

平良 優(たいら・すぐる)●沖縄県宮古島市立東小学校教諭。公益財団法人未来教育研究所研究員(外国語活動と各教科等との関連)、文部科学省主催 小学校における英語活動等国際理解活動指導者養成研修会講師、文部科学省作成授業DVD 授業者 “Hi,friends!2 Lesson7” などを歴任。外国語の充実と推進に日々情熱を注ぐ。

言葉でのやり取りが重要

平良 小学校の新学習指導要領の外国語活動・外国語の最大の特徴は、どのような点ですか。

直山 新学習指導要領の大きな特徴は、「言語活動」を軸に置いていることです。言語活動とは、実際に英語を使って自分の考えや気持ちを伝え合うことです。新学習指導要領 小学校外国語活動・外国語、中学校及び、高等学校の外国語の目標に「言語活動を通して、コミュニケーションを図る/素地となる/基礎となる/資質・能力を次のとおり育成することを目指す」と記されています。

現行中学校・高等学校、学習指導要領の外国語においても、言語活動という文言を使用していましたが、現行小学校学習指導要領の外国語活動では使っていませんでした。

それは、外国語活動は、技能を身に付けることを第一のねらいとしている中高との違いを出すためでした。しかし、今回の改訂では、小中高一貫した目標を設定していることから、文言もそろえています。

この「言語活動」は何ぞや、ということですが、それは現行の中学校学習指導要領を見ることでよくわかります。現行の中学校学習指導要領解説外国語編には、「言語活動」について、次のように記されています。

「言語材料についての知識や理解を深める言語活動から、考えや気持ちなどを伝え合う言語活動」

一方、新学習指導要領では、「言語活動」を「実際に英語を使って自分の考えや気持ちを伝え合うこと」と捉えています。これまでも、このようなことを大切にしてきていますが、「言語材料についての理解や練習で授業が終わってしまっているのではないか」ということからです。

平良 今回の改訂では、自分の考えや気持ちを相手に伝え合うような、英語でのやり取りをより意識するということですね。

直山 はい、そうです。

 外国語活動 目標 
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
⑴ 外国語を通して、言語や文化について体験的に理解を深め、日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。
⑵ 身近で簡単な事柄について、外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う。
⑶ 外国語を通して、言語やその背景にある文化に対する理解を深め、相手に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」より一部抜粋

 外国語 目標 
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
⑴ 外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気付き、これらの知識を理解するとともに、読むこと、書くことに慣れ親しみ、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。
⑵ コミュニケーションを行う目的や場面、状況などに応じて、身近で簡単な事柄について、聞いたり話したりするとともに、音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり、語順を意識しながら書いたりして、自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。
⑶ 外国語の背景にある文化に対する理解を深め、他者に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」より一部抜粋

中学年及び高学年の授業改善のポイント

平良 中学年及び高学年の授業ポイントについて聞かせてください。

直山 まず、中学年外国語活動と高学年外国語科の相違点と共通点を、小学校学習指導要領(平成29年3月改訂)を基に十分に理解することが大切です。共通点は、目標にある通り、「コミュニケーションを図る資質・能力」につながる力を「言語活動を通して」育成することです。一方、相違点は、中学年外国語活動は「コミュニケーションを図る素地となる資質・能力」を、「聞くこと、話すことの言語活動を通して」であることに対して、高学年外国語科は「コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力の基礎」を「聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して」です。

中学年外国語活動の指導の在り方について

平良 中学年と高学年の共通点と相違点を理解する必要があるということですね。

それでは、まず、中学年の外国語活動の指導の在り方について教えてください。

沖縄県宮古島市立東小学校・平良優教諭
平良優教諭

直山 中学年の外国語活動を、これまでの高学年の外国語活動を単に中学年に降ろしたと考えるのは間違いであり、中学年児童の発達の段階に応じた題材のもと、「聞くこと」「話すこと」を中心とした言語活動を設定することが求められます。また、「実際のコミュニケーションで活用できる基礎的な技能を身に付ける」ことをねらいとしている高学年外国語科と大きく違うのは、「外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませる」がねらいの一つであることに十分留意する必要があります。さらに初めて外国語に触れることから、簡単な語句や基本的な表現を用いて友達との関わりを大切にした体験的な言語活動を通して、言葉への自覚を促し、幅広い言語に関する能力や国際感覚の基盤を培うため、日本語や我が国の文化を含めた言語や文化に対する理解を深めることも大切です。そうすることで、言葉の大切さや豊かさ等に気付いたり、言語に対する興味・関心を高めたり、これらを尊重する態度を身に付けたりすることにつながります。

文部科学省・直山木綿子視学官
直山木綿子視学官

高学年外国語科の指導の在り方のポイント

平良 次に、高学年の外国語科の指導の在り方のポイントを教えてください。

直山 外国語活動と大きく異なる点は、外国語による「聞くこと」「話すこと」に加えて、「読むこと」「書くこと」を扱い、「慣れ親しみ」ではなく、実際のコミュニケーションで活用できる基礎的な技能を身に付けることが求められていることです。

つまり、音声や文字、語彙、文構造、言語の働きなどを気付きで終わらせることなく、知識として理解し、技能として使えるようにすることが求められるということです。ただし、それらの知識や技能は限定的であることに留意したいです。例えば、「読むこと」に関しては、何度も目にし、口頭でも言えるようになっている語彙や表現を、視覚情報を伴いながら推測して読めることであって、初めて見る語を読めるようになることを目指しているわけではありません。

1年生は、まず母語で聞く力を育てよう

平良 移行期の現在、1年生の担任は何をするのが好ましいですか。

直山 外国語活動の授業がある3年生や5年生になったからといって、子供たちが急に外国語で話を聞けません。母語でも聞けない子が、どうして外国語を聞けるでしょうか。だから、3年生〜6年生で実践している外国語活動を「あれは3・4年や5・6年のもの」と捉えるのではなく、5年生で、外国語で話が聞けるためには、1年生の時から、母語でしっかり人の話が聞けるように、学校がチームになって取り組むことが大切です。

さらに言うと、単に耳で音を拾うだけではなく、「相手が何を言いたいんだろう」「自分の考えと比べながら聴く」ことができるよう、1年生から母語で「聞く・聴く」指導を充分してほしいと思います。

コミュニケーションの第一歩は、傾聴することから始まります。相手の思いに耳を傾け、自分の考えと比較しながら聴きます。

母語でしっかり聞く子供を育ててほしいと思います。そのためには、先生が子供の話を聞いて、子供のつぶやきに耳を傾けてください。

※この対談は、教育技術MOOK『何が変わるの? 教科等の要点が簡潔にわかる! 新学習指導要領 ここがポイント』(好評発売中)からの転載です。

『教育技術 小五小六』2019年12月号より

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