学級担任の知識が子供の命を守る!学校での食物アレルギー対応
初任者の先生や、初めて食物アレルギーの児童を受け持つ学級担任になった教員にとって、学級における給食のアレルギー対応については不安なことが多いのではないでしょうか。この記事では、各自治体や学校で作られるアレルギー対応マニュアルを基本方針としながら、学級担任として確実に児童を守るためにできることについて紹介します。
執筆/東京都公立小学校教諭・松原夢人
目次
痛ましい事故を二度と起こさないために
以前、ある小学校で、食物アレルギーの既往のある子供に除去食が提供されたにも関わらず、おかわりをしてしまったことで、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を引き起こし、子供が亡くなったという痛ましい事故が起きました。
二度と同じような事故を繰り返さないようにするためには、各自治体や学校で作られているアレルギー対応のマニュアル厳守の上に、「学級」での対応力も身につける必要があります。
学級担任単独での判断は絶対に行わない
まず大前提として、子供の食物アレルギー対応については、学級担任単独で絶対におこなってはいけません。
どの学校でも、担任はもちろん、管理職、学年主任、養護教諭、栄養士(栄養教諭)、給食調理員、保護者の共通理解のもと、職員会議等で子供の食物アレルギーに関する情報を共有しながら、組織的に食物アレルギー対応を進める必要があります。
「エピペン(食物アレルギーなどによるアナフィラキシーに対して使用する医薬品)」の使用に関する研修、さらに、食物アレルギー対応マニュアルに沿って役割分担を決めた実技訓練などを年に1回は行うなど、まずは学校全体で協力体制を整えて対応にあたる意識が大切です。
しかし、栄養士がいる学校といない学校、除去食のおぼんの色が違う学校とそうではない学校があるなど、学校によってバラツキがあるのも事実です。
私は幸運なことに、非常に丁寧な食物アレルギー対応を指導された経験があり、その内容をここでみなさんに共有したいと思います。
除去食が提供される日に、どのような動きをするのか?
まず、保護者には、除去食が提供される日を予め伝えておき、その日は電話にすぐに出てもらえる状態にしておきます。
当日の流れ
当日の朝、学級担任は、管理職と養護教諭、栄養士に「今日は○○さんの除去食が出ます」と情報共有を行います。事前に伝わっている情報なのですが、当日もしっかりと確認するとともに、職員室のホワイトボードにも大きな字で明記しておきます。
給食の時間には、該当する子供本人に確実に除去食が渡ったことを担任が確認するとともに、管理職または栄養士に教室に来ていただき確認してもらいましょう。
除去食を提供したことは書類に書いて、記録を残します。
給食後は、健康状態を観察して経過を見ます。
養護教諭も情報を共有しているので、何かあれば保健室に行っても迅速に対応できます。
他の給食のメニューでも食物アレルギーが出ないとは言い切れないので、保護者の自宅の電話番号や携帯電話の番号、会社等の連絡先を常に控えておきます。
このように複数の大人が連携して対応することにより、ミスを確実に防ぎ、子供の命を守ります。
子供の命を守る学級経営
学級では、「子供たち全員で食物アレルギーの対応に関わる」ということを前提に学級経営をすることも大切です。
- 食物アレルギーは命に関わるリスクがあること
- だれでも食物アレルギーになる可能性があること
- 世の中に、食物アレルギーで苦しんでいる人がたくさんいること
- 食物アレルギーの対応の仕方が分かれば、もし自分の身近な人に起きてしまった時に助けることができること
以上の4つのポイントを継続して指導します。
そして、「食物アレルギーをもつ友達をみんなで守る」をスローガンに、学級全体で対応していくことが望まれます。
給食の献立(メニュー表)にマーキングをする
多くの子供たちは、給食が大好きです。そんな子供たちが、毎日のように目にするのが「給食の献立(メニュー表)」です。
給食の献立が書かれたB4〜A3サイズ程度の用紙に、アレルギー対応の給食が提供される日に、蛍光ピンクや蛍光イエローなどの目立つ色でマーキングしておき、教室の掲示板に貼っておきます。
こうすることで、担任や子供たちがパッと見ただけで、除去食がある日かどうか判断することができます。
朝の会で「今日の給食の献立」を紹介する時間を設けると、さらに確実に行うことができます。
除去食が提供される日のルールを徹底する
除去食が提供される日のルールについては、子供本人だけでなく学級全体でも共有して協力体制をつくります。
<ルール>
- 除去食が提供された日は、子供本人はおかわりしないこと
- 除去食が出る日は、保護者が記入した連絡帳を使って、保護者・子供本人・担任で情報を共有すること
- 給食後に気分が悪くなったら、近くにいる先生や友達に伝えること(周囲の子供たちは気分が悪そうな様子を感じたら先生に知らせること)
この3つのポイントを守るように徹底します。
年度初めに、除去食の対象となる子供の保護者と面談をすることになっています。
「食物アレルギーについての情報を共有し、学校全体と学級全体で命を守ること」「ルールを徹底させること」について、保護者に了解をとった上で行動すると、スムーズに進めることができます。
これらのことが、食物アレルギーを持つ子供が、安全かつ快適に学校生活を送れるようにするために不可欠です。
全ての子供たちがお互いを尊重し、サポートし合う環境を育むことが学級経営において大切なのです。
いかがでしたか?
食物アレルギーに苦しむ子供たちへの理解を促し、全ての子供たちが安心して楽しく給食が食べられるような学級経営を普段から心がけていくことが、大切ですね。