小3特別活動 学級活動編「成長を伝える会をしよう」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子
小3特別活動 学級活動編「成長を伝える会をしよう」指導アイデア

文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。3月は、<「成長を伝える会をしよう」学級活動(1)>の実践です。

年度末には、みんなで積み上げてきた1年間の取組や学級生活を振り返り、自分や友達の成長と学級の成長を実感し、次の学年への意欲をもつことができるようにします。今回は、保護者に自分たちの成長を伝える「学期末参観授業」に向けた話合い活動を中心に紹介します。

執筆/北海道公立小学校教諭・福本勇太
監修/文部科学省視学官・安部恭子
 北海道公立小学校校長・山下尊子

年間執筆計画

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4月 学級活動(1) なかよし集会をしよう ※学級会オリエンテーションをかねて
5月 学級活動(1) 学級を楽しくする係をつくろう
6月 学級活動(1) 学級あそびをしよう
7月 学級活動(1) 学級のマークをつくろう
9月 学級活動(1) 前期がんばったね集会をしよう
10月 学級活動(3) ウ 進んで取り組む家庭学習
11月 学級活動(2) エ バランスのよい食事
12月 学級活動(1) スポーツ集会をしよう
1月 学級活動(1) 学級カルタをつくろう ※学級の取組を振り返って
2月 学級活動(3) もうすぐ4年生 ※クラブ活動のオリエンテーションも含めて
3月 学級活動(1) 成長を伝える会をしよう ※学年末参観、学年集会活動などの場面で

本時のねらい

3年生として過ごす最後の1か月。3月は、これまでみんなで積み上げてきた1年間の取組や学級生活を振り返り、自分や友達の成長と学級としての成長を実感し、「4年生もがんばろう」と次の学年への意欲をもつことができるようにしましょう。
本議題では、「成長を伝える会」を通して、がんばってきたことを互いに認め合い、1年間の成長をともに喜び合うことで、4年生へとつなげていくことを目指します。伝える相手によって様々な場面や内容が考えられますが、今回は、保護者に自分たちの成長を伝える「学年末参観授業」に向けた話合い活動を中心に紹介します。

事前の活動

<1年間の取組を振り返り、自分の成長と学級の成長を実感する>
1年間のまとめとなる3月は、4月からの取組や学級生活を振り返り、自分や友達の成長と学級の成長を実感することが大切です。成長の実感が自信となり、次への意欲につながります。話合いの前に、自分や友達の成長、学級の成長をたくさん感じられるようにしましょう。

「キャリア・パスポート」を活用する
自分の取組を振り返るときに効果的なのが、「キャリア・パスポート」です。「キャリア・パスポート」を見返すことで、学習面や生活面で自分ががんばってきたこと、できるようになったこと、学校行事の取組の様子、自分の気持ちなどを具体的なエピソードとともに思い出すことができます。今までの自分を見つめ直し、自分自身の成長を実感できるようにしましょう。

学級の歩みを記録してきた掲示物を活用する
学級の取組を振り返るときに効果的なのが、今までの学級の歩みを記録してきた掲示物です。この時期になると、学級の積み重ねが分かるようになってきていることでしょう。掲示物を見直すことで、そのときの様子を思い出すことができます。写真などを見ながら、そのときの様子や気持ちをみんなで共有するとよいでしょう。時間が経っているからこそ、客観的に自分たちの成長や課題を見ることができます。

学級活動(1)「学級かるたをつくろう」で学級の取組を、学級活動(3)ア「もうすぐ4年生」で自分の取組を振り返ったことを生かしましょう。2つの学習を振り返ることで、改めて自分や学級の成長を感じられるようにするとよいでしょう。

みんな、リコーダーの練習をがんばって、いろいろな曲が吹けるようになったよね。

わたしは、授業中に発表するのが苦手だったけど、学級会で自分の意見を言うようにがんばったら、自分の考えを伝えることができるようになったよ。

わたしは、係活動が一番の思い出だなあ。学級生活を楽しくするために、みんな係活動をがんばったよね。たくさんの企画が生まれて楽しかったな。

音楽会では、毎日みんなで練習して、1つの発表をつくり上げたよね。ぼくは、みんなで合唱してとても気持ちよかったし、ハーモニーがきれいだったと家の人にほめられてうれしかったな。

1年間様々なことに取り組み、たくさんのことができるようになったり、ステップアップしたりしましたね。どれもすばらしい成長です。

様々な視点から意見が出てくると思います。それを教師が価値付けることで、自分や友達の成長、学級の成長に気付くことができるようにします。

最後の授業参観で、学習発表会みたいに、自分たちががんばってきたことや成長したことを発表することはできないかな。

成長したことを発表する会だね。こんなことを学習した、ということは学習発表会で発表したから、今度はどんなことがいいかな。

がんばったね集会を提案している人がいるから、成長したことも伝える発表会にしてはどうか、聞いてみようよ。

今回は、出された議題案をもとに計画委員会で話し合い、「成長を伝える会をしよう」を選定しました。がんばったね集会を提案した子供に計画委員会に入ってもらい、成長を伝えることを含めた会にしたらと提案したところ、「いいね!」ということになり、提案してもらうことになりました。
教師は、子供たちに声かけなどを行い、「自分ががんばったことやみんなでがんばったこと、成長したことを『伝えたい』」という思いをもてるようにします。学級活動の時間だけではなく、様々な教科等の学習の中でも、「まとめ・表現」の時間を大切にすることで、学んだことを表現する習慣が身に付きます。

<議題と提案理由を全員に伝え、会の目的と話し合う内容を共有する>

<議題>「1年間の成長を伝える会をしよう」
<提案理由>
3年○組のみんなで学級の合言葉の「ステップアップ」を意識して、力を合わせていろいろなことをがんばってきました。「1年間の成長を伝える会」をすることで、自分たちの「ステップアップ」した姿をお家の人にも見てもらいたいです。そして、みんなで成長を喜び合い、4年生もがんばろうという気持ちになって3年生を終えたいと思って提案しました。
<決まっていること>
3月◯日( )5時間目、授業参観の時に行う。
場所は多目的室
一人一人が成長を発表する時間と、学級の成長を発表する時間を取る。
学級の成長を発表する時間は10分間
<話し合うこと>
①学級の成長発表タイムで何をするか。
②どんな工夫ができるか。

<プログラム>
①はじめの言葉
②学級の歌
③一人一人の成長発表タイム
④学級の成長発表タイム
⑤先生から
⑥終わりの言葉

集会を行うときは、「なんのために行うのか」という目的がとても大切です。議題と提案理由を全体で共有し、話合いに向けて見通しをもてるようにしましょう。

<一人一人の成長発表タイムと学級の成長発表タイムについて共有する>
決まっていることを学級全体で共有する際、一人一人の成長発表タイムと学級の成長発表タイムの違いは何か、それぞれどのようなことができそうかといったことをなかなかイメージできない子供もいるかもしれません。事前に全体で共有しておくとよいでしょう。話合いの前に共通のイメージをもっておくことが大切です。

一人一人の成長発表タイム
今回は、計画委員会で話し合って、1年間の自分の成長を1人ずつ発表することにしました。自分が自信のあることやがんばったと思っていることを発表し合うことで、友達のよさやすてきなところも改めて感じることができる時間になります。ただ得意なことを発表するのではなく、この1年間の努力や成長、自分らしさを発揮できると、次の学年への自信にもつながります。2人で発表、3人で発表など、同じテーマの友達といっしょに発表するのもよいでしょう。本時の活動後、一人一人が自分の成長に合わせて、発表することを意思決定し、準備をしていくようにしましょう。
例)リコーダー、縄跳び、音読、自分の成長についてのスピーチ など

音読やリコーダーの発表する様子。

学級の成長発表タイム
計画委員会で話し合って、学級として一番よりよくなったことや一番がんばってきたことなど、学級で1年間積み重ねてきたことを発表したらいいね、ということになりました。そこで、学級会ノートを書く前に、帰りの会で学級のみんなに、リコーダー合奏・長縄跳び・合唱など、学級としてみんなでがんばったから上達したりうまくいったりしたことの例を紹介し、発想が広がるようにしました。

本時の活動

議題 1年間の成長を伝える会をしよう」

提案理由
3年○組のみんなで学級の合言葉「ステップアップ」を意識し、力を合わせていろいろなことをがんばってきました。「1年間の成長を伝える会」をすることで、自分たちの「ステップアップ」した姿を保護者の方々に見てもらいたいです。そして、みんなで成長を喜び合い、4年生もがんばろうという気持ちになって3年生を終えたいと思って提案しました。

決まっていること
3月◯日( )5時間目、授業参観の時に行う。
場所は多目的室
一人一人が成長を発表する時間と、学級の成長を発表する時間を取る。
学級の成長発表タイムは、5分間
※一人一人の成長は、似た内容の友達とグループで発表することも考えられます。

話し合うこと
学級の成長発表タイムで何をするか
成長が伝わるためにどんな工夫ができるか
どんな係が必要か

板書例

本時の板書例

話し合うこと① 学級の成長発表タイムで何をするか 

<出し合う>
3年○組の成長を伝えるために何をするかのアイデアを出し合います。

ぼくは、合唱がいいと思います。1年間、みんなでたくさんの歌を歌ってきて、心が1つになって歌えるようになったからです。

わたしは、劇がいいと思います。話合いをがんばってきたので、その様子を劇で伝えたいです。

わたしは、長縄跳びがいいと思います。長縄跳びをみんなでがんばってきたことが、一番のステップアップだからです。

<くらべ合う>
賛成意見や反対意見を発表し合います。成長の具体の姿を語りながら、理由をくらべ合います。また、それぞれの意見のよさに目を向け、共通点や相違点を明らかにしていきます。

わたしは、合唱に賛成です。合唱がみんなで一番がんばってきたことだと思うからです。

ぼくは、劇に賛成です。劇だったら、話合いだけではなく、成長をたくさん伝えられるからです。ぼくは、がんばったことを全部伝えたいです。

ぼくは、劇に反対です。成長したことすべてを伝えられるのはいいと思いますが、5分で発表するのは難しいからです。なので、○組みんなで励まし合い、一番がんばってきた長縄跳びがいいと思います。

1年間、話合い活動を積み重ね、話合い方を身に付けてきた子供たちです。けれども、まだ3年生ですので、共通点や相違点を見付けるのは難しいかもしれません。そんなときは、「○組が一番成長したと思うのはどれか」「どんな姿を保護者に見せたいか」「成長が伝わるのはどの方法か」「合唱と劇では何が違うのか」など、必要に応じて教師が関わり、子供たちの意見と提案理由、意見と意見がつながるようにします。そうすることで、学級として大切にしたいものが見えてきます。

<まとめる・決める>
意見の違いやよさを認め合いながら、5分間で自分たちの成長をより伝えられるものはどれかを考え、合意形成を図ります。

(司会)長縄跳びと合唱に賛成意見が集まっていますが、どのように決めていきますか。

どちらもいいと思いますが、今回は長縄跳びがいいと思います。○組が一番がんばってきたのは長縄跳びだからです。

賛成です。長縄跳びが一番「ステップアップ」につながったと思います。

(司会)みんなで一番がんばってきた長縄跳びがよいのではないかという意見が出てきましたが、どうですか。

確かに、長縄跳びが一番「ステップアップ」を伝えられると思うので、長縄跳びがいいと思います。

(司会)それでは、長縄跳びに決めてもよいですか。

はい! いいです!

※会場のスペースにより、できることが異なります。場所にも留意して決めるようにします。
※また、今回は、学級の合言葉「ステップアップ」の姿が一番表現できる長縄跳びに決定しましたが、どの方法になったとしても、大切なのは子供たちの「思い」がそこに込められていることです。学級の成長について具体の姿をみんなで語り合い、どんな姿を見せたいのかを十分話し合って決めるようにしましょう。特に長縄跳びなどの運動系の内容は、苦手な子供もいます。教師はそうした子供の思いに寄り沿い、つらい思いをすることがないように配慮することも必要です。

長縄跳びをする子供たち

話し合うこと② 成長が伝わる工夫 

<出し合う>
3年○組の成長を伝えるための工夫についてアイデアを出し合います。

あいさつもがんばってきたので、家の人に気持ちのよいあいさつを実際にしたらいいと思います。

○組は学級会で話合いをたくさんして、話合いの仕方が上手になったので成長を伝える会の中でも話し方、聞き方を意識するといいと思います。

みんなで気を付けて上手になったことやできるようになったこともたくさんありますね。でも学級の成長発表タイムの中だけでは伝えきれないので、他の場面で伝えられる成長はないか考えてみましょう。

<くらべ合う>
出てきた意見をくらべ合い、学級の成長を伝えられそうな工夫を決めていきます。
意見の中には、工夫というよりも、「発表する際に気を付けること」が多く出されることが考えられます。小見出しの短冊をつくって、分類・整理し、成長が伝わるための工夫をしっかりと考えることができるようにします。

<まとめる・決める>
今回は、「会全体の工夫」について、どれもやったほうがいいし、全部できそうだということになり、すべて決定しました。「発表するときに気を付けること」は、一人一人が気を付けることに決まりました。

事前の活動の中で学級の成長についてみんなで共有すると、きっと「話し方、聞き方が上手になった」「姿勢を意識して過ごせるようになった」「気持ちのよいあいさつができるようになった」「みんなで協力して取り組めるようになった」など、学校生活のあらゆる場面における成長した姿が出てくると思います。話し合うこと②では、そういった成長の姿が「成長を伝える会」の中で伝わる工夫について話し合い、「会全体の工夫」として、できそうなことはすべて決めるようにし、「発表の時に気を付けること」は、各自が発表するときに気を付けるようにしました。そうすることで、1年間の成長をたくさん伝えることができます。

※工夫についての話合いは「全部いいから全部やったほうがいい」となりがちです。教師は、「本当に全部やったほうがよりよいものになるのか」「実際の場面を想起したときに、本当に全部できるのか」などについて子供たちに投げかけるなど、安易に決めてしまうことがないようにします。

事後の活動

<決めたことを基に、全員で準備し、練習する>
話し合って決めたことを基に、成長を伝える会に向けて準備を進めていきます。自分たちの成長を100%伝えられるように、休み時間なども使って協力し合って準備や練習を行います。本番に向けた取組を通して、改めて自分たちの1年間の学級生活を振り返ることができ、互いの成長を実感することにつながります。

<振り返りを通して、達成感や充実感を共有し、次への意欲につなげる>
「成長を伝える会」の本番が終わりではなく、実践後の振り返りまで行うことが大切です。伝える会までの準備や練習の過程、伝える会当日の互いのがんばりなどを振り返ることで、達成感や充実感を全員で共有することができます。この達成感や充実感が、「がんばってよかった」「4年生でもみんなでがんばっていこう」という、次の学年への意欲につながります。ICT端末を活用して短時間で行うこともできますから、必ず振り返りの場を設定するようにしましょう。

<「成長を伝える会」の子供たちの姿について、保護者の方々から感想をいただく>
成長を伝える会終了後は、学級通信やICT端末などを活用し、保護者の方々から感想をいただくようにするとよいでしょう。友達や教師からだけではなく、保護者の方々からも自分たちの成長やがんばりを認めてもらうことで、自分の成長、友達の成長、学級集団としての高まりをより実感することができ、それが自信につながっていきます。

「成長を伝える会」は、「誰に伝えるか」によって「学年末参観」「学年集会活動」など、様々な場面が考えられます。
<学年末参観>
伝える相手…保護者
伝える内容…学級、または学年の成長
<学年集会活動>
伝える相手…学年の友達
伝える内容…学級の成長
※どの場面であっても、「自分たちの成長を伝えたい」という、子供たち自身の思いの実現となるようにし、教師が「発表させたいこと」にならないように留意します。

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


安部恭子

監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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