意識調査【わかる!教育ニュース#41】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第41回のテーマは「意識調査」です。
目次
学校で教える学習量や授業時間を、保護者などの過半数は「ちょうどよい」と捉える
学校の時間割は、ぎゅうぎゅうだと思いますか。子供が学ぶことは多すぎでしょうか。きっと、人それぞれ考えは違うでしょう。
学校で教える学習量や授業時間を「多い」と思う教員が半数いる反面、保護者や社会の人々の過半数は「ちょうどよい」と捉えていて、考えに隔たりがあることが、文部科学省の意識調査で分かりました。義務教育に関する政策に生かそうと、小中学校の教員、小中学生、保護者など社会の人々に対して、2023年1~2月に行った調査です。
授業時間について、「多すぎる」から「少なすぎる」まで5段階で尋ねると、50.3%の教員が「多すぎる」「やや多い」と答えました。特に小学校の教員に多く、中学校教員の43.3%を14.7ポイント上回る、58.0%です。
ところが、保護者や社会の人々の受け止めは違いました。多いという人は21.5%にとどまり、最も多いのは「ちょうどよい」の61.9%です。
学習量についても同じような結果。多いと思う教員は48.0%ですが、保護者などは「ちょうどよい」が55.3%に上ります。多いと捉える人は24.8%でした。
一方で、義務教育で子供に身に付けさせたいことの最多は、「基礎的・基本的な知識・技能」で一致しました。割合も教員73.4%、保護者など72.9%とほぼ同率。基礎・基本を固めさせたいという思いは同じでも、そのために必要な時間や学習量は食い違うようです。
30.5%の子供が授業の内容を「むずかしすぎる」
学ぶ内容や時間割の基になるのは、学習指導要領です。全国どこでも一定水準の教育ができるよう、教えるべき最低限のことを示しています。おおむね10年に1度見直し、中央教育審議会の議論や答申を踏まえて、文科省が定めます。
学習内容は、1960年代の「詰め込み教育」への批判を受け、77年の改定で「精選」を唱えて削減。98年の改定でも完全学校週5日制を見据え、「ゆとり教育」を掲げて、学ぶ内容を大幅に削りました。すると今度は学力低下論が出て、揺り戻しに。2008年改定で増加に転じました。17年改定では、小5、6で英語を正式な教科にし、各教科で「主体的・対話的で深い学び」の授業を提唱。学ぶ量や内容の深さが増した分、教員も教えることが増えました。
そんな変遷のさなかにいる子供たちの回答に、目を引く点があります。30.5%が授業の内容を「むずかしすぎる」と感じているのです。「分からないところを、分かるまでしっかり教えてほしい」という子も、60.2%に上りました。 学ぶ内容がむずかしい、分かるまで教えて、という子が一定数いる以上、ていねいに教える姿勢が求められます。学ぶ量や時間について温度差があるにせよ、保護者などの69.2%が教員の負担軽減に賛成しています。まずは「教える」という本来の仕事に集中できるよう、教員が担っている業務の見直しと改善が急務です。
【わかる! 教育ニュース】次回は、2月29日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子