単位分数を変えながら数直線づくりをし、分数も数であると意識させる【「系統」を見通し、学年ごとに押さえる! つまずきなしの「分数」指導法 #4】
前回から、3学年の分数指導について、新潟市立上所小学校の志田倫明先生に具体的な授業場面で説明していただいていますが、今回は簡単な分数の加法、減法の指導について話していただきます。
目次
たし算やひき算は同種同単位のものでなければ計算できない
前回は、3学年の分数指導の知識・技能の中から、(ア)端数部分の扱い(イ)単位分数の幾つ分、を中心に説明していきましたが、今回は(ウ)簡単な分数の加法及び減法の意味を理解し、それらの計算ができることを知ることについて、具体的な授業場面を例に取りながら説明をしていきたいと思います。
ここでは本当に簡単な場合について学習するのですが、実は前回ご説明した授業場面でも、子供たちが[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]を出すときに、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]という式表記を出す場合もあります。そういったものを認めていってよいと思いますが、ここではもう少しまとまりで見た場合を扱っていきます。例えば、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]=[MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]というものがそれです。
2学年の素地指導を除いて、子供たちはこれまでの学習では整数を扱ってきましたから、1つの数値を表すのに使われる数字は1つでした。しかし、分数では分母と分子、2つの数字が使われています。ですから、よく起こる間違いが、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]という計算式だけを見て、分母と分母を足し、分子と分子を足して3/10にしてしまうというものです。このような間違いをしてしまう子が必ず出てきます。
「ではこの式を計算するときに、どう考えたらいいんだろう?」と考えるときに役立つのが、前回の学習で使ったようなdLマスを等分した図です。図を示して、「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]dLはこういう量だったよね、[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]dLはこういう量だったね。じゃあ、この[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]と[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]をたすとどうなるかな?」と問えば、算数が苦手な子供でも色を塗るなどして考えることができますから、[MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]dLと考えることができます(資料1参照)。
【資料1】
この場面で子供がどのように考えているかというと、つまりは[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]dLが1つだったものと、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]dLが2つだったものを合わせると、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]dLが3つになるということで、基になる単位が同じだということです。これは、たし算、ひき算の原理原則です。たし算やひき算は同種同単位のものでなければ計算ができません。過去の学習で、例えば2+3を計算するときも、1が2個と1が3個だから1が5個と計算したわけです。それが2+30であれば、1が2個と10が3個なのでたせません。だから、10が3個であれば、1が30個と単位を揃えて計算し、32としていました。このように整数の世界では位を揃えていましたが、単位が揃うからこそ計算ができていたわけです。
ですから、「[MATH]\(\frac{3}{10}\)[/MATH]」と言う子供がいたときに、「そもそも[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]dLってどういうものだっけ?」「[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]dLってどういうものだっけ?」と問いかけ、図に描かせて、単位分数である[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が1つ分と2つ分という意味に立ち返って考えさせたり、[MATH]\(\frac{3}{10}\)[/MATH]との違いを確認したりすることが大切です。そこをしっかり確認すれば、「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が1つと[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が2つあるものをたすと、[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]が3つになるというのはおかしいよね」ということに気付けるでしょう。
小数より分数を先に扱う場合は、数直線で[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]も扱って学習しておく
学習指導要領解説(p154)には、「分数を数として捉えることができるようにする」ことも示されており、そのため「分数を数直線の上に表示するなどの指導の工夫が必要」とされています。先のような学習で、分割するとか、何等分するというと、分数に「基になるものを分けていく」という考え方が貼り付いてしまいます。しかし分数一つ一つを数として認めていくことも必要で、数直線づくりのような学習を通して分数を数として位置付けていくわけです。
例えば、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]で考えていくとすると、まず[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]があり「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]がもう1つあると、ここ(数直線上の位置)はいくつになるかな?」と問うと、「[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]!」と答えるでしょう。そのようにして、「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が3つだと[MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]」「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が4つだと[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]」と進み、「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が5つだと[MATH]\(\frac{5}{5}\)[/MATH]」となります(資料2参照)。これまでの学習ではまず1があって、それを5等分したものの1つ分が[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]だったのですが、ここでは「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が集まっていって、5つ集まると1になる」というように、逆の思考過程を通して確認したわけです。
【資料2】
このようにして、分数を数として数直線上に位置付け、左側は小さく、右に行くほど大きくなることを確認していくのですが、ここまで学習してくると、「じゃあ、もう1つ行ったらどう表すのだろう?」ということを言い出します。それは子供たちに自由に考えさせると、おもしろいでしょう。子供たちはこれまでの学習過程で、表現としては「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が2つあるから[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]」「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が3つだから[MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]」と単位分数を基に説明してきていますから、「ここは[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が6つだから[MATH]\(\frac{6}{5}\)[/MATH]と言うんじゃない?」と子供の中から出てくるはずです(資料3参照)。
【資料3】
こうやって、[MATH]\(\frac{6}{5}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{7}{5}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{8}{5}\)[/MATH]…と増やして数直線づくりをしていくと、「[MATH]\(\frac{10}{5}\)[/MATH]になったら2になるんじゃない?」ということも言い出していきます。さらに単位分数を変え、例えば、[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]で数直線づくりをしていくと「今度は8つ集まると1になるよ!」と言うでしょう。このようにして、単位分数を変えながら数直線づくりをして、分数も数であるということを意識させていくのです。
このときに、「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]や[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]のところが、もし1だったら?」と考えていくと、「1が1つで1」「1が2つで2」「1が3つで3」…となり、整数も分数も同じ仕組みになっており、同じ数であるということが子供の中に落ちていくでしょう。このような数学的活動を通して、初回に概説した通り、分数は有理数の表現形式の一つということを学んでいくわけです。
ちなみに、教科書による分数と小数の学習の扱い方について触れておくと、分数の学習の前に小数を学ぶ教科書と、分数の学習の後に小数を学ぶ教科書があります。もし、分数を先に扱う場合は、先の数直線で[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]も扱って学習しておくと、小数を学習するときに「1を10個に分けた1つ分を[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]と言ったな。[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]を0.1とも言うんだな」と、分数から小数を指導することができます。小数を先に学習していたら、単位分数を[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]にすると、[MATH]\(\frac{2}{10}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{3}{10}\)[/MATH]…と進んで、[MATH]\(\frac{10}{10}\)[/MATH]で1になったときに、「これって1を10等分したものだから0.1とも言うな」「小数と同じだな」と気付く子が出てくるでしょうし、ここで指導することができます。
これが初回の概説でご説明した、「分数や小数で表現される数(有理数)の概念について理解するとともに、その表現方法を学習する」ことにつながるのです。
執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之
つまずきなしの「分数」指導法
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