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学校における「コミュニケーション・エラー」を予防しよう

連載
タバティのLet’sスマイル (レッツスマイル)学校づくり

教育コンサルタント

田畑栄一

日常の対話や会話で、「なんかうまく伝えられていないなあ」と違和感を覚える瞬間はないですか。
こちらの考えは相手に伝わった、という感触を得ていたのに、こちらの意図していたものとは異なる結果になってしまった。実は、ここには、「コミュニケーション・エラー」が起きている可能性があります。私たちの日常生活での人間関係のトラブルやストレスは、この「コミュニケーション・エラー」から大方は発生しています。うまくかみ合わない対話や会話の4場面を取り上げ、「コミュニケーション・エラー」について考えていきましょう。

【連載】タバティのLet’sスマイル(レッツスマイル) 学校づくり #18

PCで予定を確認する子供

日常に潜む「コミュニケーション・エラー」の数々

⑴情報伝達不足型

例えば、学習課題や指示が子どもたちに伝わってないケースが、これに当たります。
授業で学習課題を口頭で伝えたとき、おしゃべりをしていて聞いていないので、「学習課題は何ですか」と再度問う子どもがいます。「学習課題の意味が分かりませんでした。もう一度教えてください」と問う子どももいます。
特に質問はしないのですが、学習課題に正対していないことをしてしまい、そのまま提出してくる子もいます。意図した学習課題を子どもたち一人ひとりに理解させるのは、実はとても難しいです。
伝える側の発問や課題の工夫と、聞き手の集中度が求められます。

⑵情報誤解型

指導の文脈や、発言の真意を受け止める前に、何らかの「ひっかかり」が生じて、正しく解釈されない例がこれにあたります。
例えば、「そんなばかなことを」という言葉に対して、「先生からばかだと言われた」などと受け止めてしまうケースですね。
ここに保護者が関与することで、大きな問題に発展することもあります。
「先生から『ばかだ』と言われたと、子どもから聞きました。教師たるもの、このような言葉遣いをするのは如何なものか!」等、保護者は子どもの言葉を鵜呑みにしているケースが多いのです。
言葉の前後関係を説明し、発言の真意を理解してもらうために、大きな精神的負担を強いられることになります。

⑶情報伝達乖離型

話し合いで物事を決めたり、作り上げたりする場合には、質問や答え、意見や提案のやり取りがあるはずですが、それがない場合というのがあります。
これは、
①相手が話の内容を理解できるだけの素養を有していない。
②話を咀嚼できるほど、相手に心理的な余裕がない。
等の理由によります。すなわち、自分と相手の意識に乖離が生じていることによって起こるエラーです。
丁寧に双方向型のコミュニケーションを行うことで相手に伝わりやすい表現を探るか、議論に参加できるだけの余裕が生じるのを待つか…解決には根気を要します。

⑷情報読み上げ型

一斉授業や説明型の授業がこれに当たります。教えたい内容をとにかく一方的に話し、板書する昭和時代のかつての授業です。……大人の会議、実はこれが今でもほとんどです。
少し書きにくいのですが…。
実は、毎月行われる校長会では教育委員会からの指示伝達があり、複数の分厚い資料が配付されて、順番に担当者が説明をしていきます。それを校長は黙って2~3時間、聞いています。
始終、発表者が一方的に文書を読み上げていきます。中には極小の文字で長大な参考資料を添付し、それまで読み上げる人もいるのですから驚きます。
これでは聞く側は疲れてしまい、聞き漏らすことも多々あります。居眠りを始める人もいます。
まさに昭和感覚です。
文書をわざわざ読み上げずとも、後で自分たちで読めばよいだけのことですし、リモート会議のツールが備わった今、毎月メンバーを召集してわざわざ開催するほどの価値のある内容なのかと、疑問と徒労を感じます。
これで伝達漏れが生じたら、その責を負うのは受け手の校長のほうですが、伝える側はわざと、エラーを誘うようなプレゼンをしていると言っていいでしょう。

これらが、まさに学校の日常に潜む「コミュニケーション・エラー」の一例です。

「コミュニケーション・エラー」の予防対策・改善策

⑴ 学習課題は黒板・ホワイトボード等に明確に書く

課題解決型学習(PBL)なら、一文・短文(主語+述語)で、黒板・ホワイトボード・タブレットに明確に書くことです。うっかりと聞き漏らした子どもでも、黒板を見れば確認することができるように配慮しておくことが大切です。ここでは決して「ちゃんと聞いて」等、余計な言葉を挟まないことです。
意味が分からない、という子どもには学習課題を再度ゆっくり、説明し直します。
例えば、図解を活用して説明する、隣の子どもの力を借りて説明してもらう、タブレットを活用して再度説明する等、その子の特性に応じて具体的に対応する姿勢が大事です。
学習課題に正対していないでノートに自説を書いている子どもには、誤答と処理するだけでなく、なぜそういった解答になったかをみんなでその子の立場になって、ポジティブに捉える対応も必要です。
無視したり、流したりしないで、みんなでケアし合える雰囲気が教室には必要だと捉えています。言葉を丁寧に扱い、理解し合う教室が相互承認し合う感性を育てていきます。

⑵ 子どもとの日頃の人間関係で信頼関係を構築する

教育活動を熟成させていくためには、日々の関わりの中で、子どもたちとの相互理解を深め合うことが大事です。ぜひ、子どもたちの特性や個性を理解するように努めましょう。そして、目の前でトラブルが起きても、感情的になって「マイナスの意味を持った言葉」を使うことだけは避けましょう。
「変だ」「おかしい」「黙りなさい」「うるさい」などの言葉には、どんな理由があるにせよ、前後関係のやり取りに関係なく、子どもは傷つきます。その「傷ついた」という感情が子どもの中で優位に立つことで、言葉尻を捉えられ、トラブルに発生していく可能性を含んでいるのです。十分に配慮した言葉選びをしておけば、この問題は決して起こりません。

⑶ 資料は簡潔に。必要に応じて聞き手側が「メモ」を取れるように

授業のプレゼンでも職員会議の提案でも気をつけなければならないのは、思い込みです。
例えば、「自分は分かるから大丈夫だろう」「こんなことは、もうすでに分かっているだろう」「時間がないから端折って話をしても大丈夫だろう」「資料があるから大丈夫だろう」等の思い込みが、伝わらないコミュニケーションやプレゼンになっているのです。
これを改善するためには、共有するレジュメや資料を簡潔にすることです。会議のレジュメはA4の表面だけ。添付すべき資料がある場合、その裏面で簡潔に説明します。
そして、聞き手には「メモ」を促します。聞き手が、それぞれの理解度や必要性に応じてメモを取れるくらいのプレゼンが最も望ましいのです。
情報量が多すぎると漏れの原因につながりますから、少ないくらいの資料がちょうどいいのです。
聞き手側の様子を見ながら、双方向のやり取りを意識してプレゼンしましょう。聞き手はメモを取りながら、真剣に耳を傾けるようになります。この「メモを取るプレゼン」は、子どもたちの指導においても大いに効果的です。文字ではなく、イラストや図解、写真等の、視覚に訴える創意工夫もしてみましょう。
そして、授業や会議で集まる面々は、日々顔を合わせる大切な仲間たちです。日頃のコミュニケーションの積み重ねで、信頼し合える人間関係を構築していきます。これこそがコミュニケーション・エラーを防ぐ大きなポイントです。

⑷ 教育委員会はコミュニケーション力・プレゼン力等を磨き「範」を示す

例えば教育委員会はタブレットの使用率を毎月報告させ、各学校に点数をつけたりしませんか?
しかしその一方で、教育委員会は校長会において、毎回分厚い紙資料を配付し、長時間の説明を行います。
教育委員会のデジタルシフトに点数をつけるとするなら、まさに「0点」です。学校にデジタル活用を指導助言する立場にあるのに、自分たちがやっていることとの間に開きがありすぎます。
教育委員会こそコミュニケーション能力とプレゼンテーション能力を磨き、双方向型の対話的な会議や、タブレット端末を活用した会議等、教職員の模範になる必要があります。時代にふさわしい校長会のあり方を創造したり、先駆けとなるプレゼンをしたりと、意識を改革すべき時にきています。そろそろ本気で、自ら招いている「コミュニケーション・エラー」の予防をしたほうがいいと思います。

我々ももちろん、一斉授業や説明型授業はやめ、「対話的で深い学び」授業へ切り替え、タブレット端末の効果的な活用を追求していきましょう。

職場のコミュニケーション・エラーを防ぐポイント

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