「トラブルの解決スキル」が身につく効果的な学習方法とは?【ソーシャルスキル早わかり9】

特集
人づきあいのコツがわかる「ソーシャルスキル早わかり」記事まとめ
関連タグ

ソーシャルスキル学習は、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」を学ぶトレーニングです。今回は、避けることはできない、人間関係のトラブルに対処するために必要なスキルについて学びます。

執筆/荒木秀一

本を友達がなかなか返してくれない

ソーシャルスキル学習とは?

ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2

トラブルの解決スキル① 問題は?

人間関係のトラブルは、避けることはできません。大切なのは問題から逃げることではなく、いろいろな解決策を考え、挑戦してみることです。しかし、トラブルが発生していることはわかっても、解決すべき問題がはっきりせず、問題が深刻化してしまうこともあります。

トラブルの解決スキルは、まず問題を明確にすることです。そして、トラブルに対処する方法を身につければ、よりよい人間関係づくりに大いに役立つことでしょう。

授業の基本的な進め方

  1. 日常生活で友達との関係でいやな気持ちになったときのマイナス感情を把握する
  2. 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話合いでポイントを整理する
  3. そのときの気持ちや問題点を明確にする練習をする▶グループで
  4. 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際

①つかむ インストラクション

日常生活をふり返り、それぞれの場面でどんな気持ちになったのか考えさせます。

「普段の生活で、友達との関係でいやな気持ちになったことはない? あなたの心の中はどんなことが起こっていたのかな?」というように、プラスとマイナスの感情に分けられることをおさえておきます。

授業の約束を確認します。

◉場面①

いつも親しくしている友達が、自分以外の人と楽しそうに話しているのを見た。

いつも親しくしている友達が、自分以外の人と楽しそうに話しているのを見て不満そうな顔の子

◉場面②

遊び係として昼休みの遊びを提案しようとしたが、友達が勝手に決めてしまっていた。

遊び係として昼休みの遊びを提案しようとしたが、友達が勝手に決めてしまっていた。

②気づく モデリング

おばあちゃんからもらって大事にしているボールペンを、友達が借りたがっています──この場面のロールプレイを見て、どこが問題なのかを考えさせます。

【ロールプレイ】

おばあちゃんからもらって大事にしているボールペンを、友達が借りたがっている

問題点を明らかにし、それを見つけるには、気持ちについて考えることが大切であることに気づかせます。自分の気持ち、自分の問題、相手の気持ちについて考えると問題がはっきりしてくることを理解させます。

問題点

①自分はどんな気持ちだった?
②何が問題だった?
③友達はどんな気持ちだった?


③やってみる リハーサル

●グループで

クラスの友達と遊ぶ約束をした近くの公園に、自転車でA君と向かっていたとき、A君の自転車が壊れてしまいました。約束の時間は過ぎていて、公園で友達が待っています。

友達が待っているのに壊れた自転車を調べている友達に対してやきもきしている子

このような場面を設定し、グループに分かれて、ワークシートを使って練習します。

ワークシート

楽しい雰囲気で、「二人の気持ち」や「問題点」の明確化をはかりましょう。「気持ち」と「問題点」をつかめている子にグループ内で発表させます。問題がつかめていない子には、「いやな気持ち」に目を向けるよう支援します。


④ふり返る フィードバック

「トラブルを解決するには、まず問題点は何かを考え、理解することです。それには、自分のマイナスの気持ちに目を向け、そうなった理由に気づくことが大切です。毎日の生活の中で、自分のマイナスの気持ちについて考えましょう。」とまとめ、ふり返りカードに感想を書かせます。

トラブルの解決①ふり返りカード

⑤生かす 定着化

学習後、自分たちの生活の中でトラブルの例を見つけさせます。そして、上記のようなワークシートを作成し、トラブルについて問題点や考え方を記録します。

トラブルの解決スキル② 方法は?

トラブルの解決は、

1.「問題は何か?▶問題場面について自分の気持ちを考える
2.「解決方法を考える▶問題場面について自分ならどうするかを数多く考える」
3.「どの方法がいい?▶結果を予想し、解決方法を選択する」
4.「やってみよう▶自分の気持ちはどうか? 相手の気持ちはどうか? を考えて実行する」

の4段階をふまえる必要があります。

ここでは、2〜4を説明します。

授業の基本的な進め方

  1. 解決法の4 つの分類の確認と問題場面を把握する
  2. 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話合いでポイントを整理する
  3. よりよい解決方法を練習▶グループで
  4. 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際

①つかむ インストラクション

おばあちゃんからもらって大事にしていたボールペンを、友達がいつのまにか使っています。あなたはどうしますか?

おばあちゃんからもらって大事にしていたボールペンを、友達がいつのまにか使っている

場面を見てそれぞれの気持ちと問題点をつかみ、四つに分類(自分中心、相手中心、お互い中心、その他)して解決方法を考えます。

1▶自分中心・うばいかえす
2▶相手中心・そのままにしておく
3▶お互い中心・使いたいなら貸してと言ってと言う
4▶その他・先生に言う

授業の約束を確認します。

色々な表情をした二人の友達

②気づく モデリング

四つから一つ選ぶため、実際にやってみたらどうなるのか、結果を予想させます。

分類表「どの方法がいい? 予想して一つ決めよう」(ワークシートと黒板で)

分類表「どの方法がいい?予想して一つ決めよう」

予想してワークシートに書き込み、グループ内で発表し合って一番よい方法を選びます。どれがいいかを話し合うと、一番多い意見は「お互い中心」になります。その方法は、自分にも相手にもよい結果をもたらすからだということに気づかせましょう。

解決方法のポイント

○「お互い中心」で解決してみる


③やってみる リハーサル

あなたが貸した本を友達がなかなか返してくれません。あなたはどうしますか?

本を友達がなかなか返してくれない

昼休みの遊びをみんなで決めています。友達が言ったことに決まってしまいそうです。でも、あなたはしたい遊びがほかにあります。あなたはどうしますか?

昼休みの遊びをみんなで決めていて、友達が言ったことに決まってしまいそうだが本当はしたい遊びがほかにあり、言い淀んでいる子

④ふり返る フィードバック

「トラブルの解決には、まず問題点は何かを考え理解することです。そして解決方法をいろいろ考えます。その中から一つ決めるには、やったらどうなるかを予想することが大切です。友達も自分も大切にしたいと考えるなら、『お互い中心』が一番いい方法でしょうね。」とまとめ、ふり返りカードに感想を書かせます。

トラブルの解決②ふり返りカード

⑤生かす 定着化

自分もよくて相手にもいいトラブルの解決策を考え、実行できるように個別指導を充実させます。ストレスマネジメント(深呼吸や自己コントロールのシグナルなど)を利用すると、特別支援の必要な子どもたちにとってもわかりやすくなるでしょう。


イラスト/宮地明子

「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
人づきあいのコツがわかる「ソーシャルスキル早わかり」記事まとめ
関連タグ

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました