PISA【わかる!教育ニュース#39】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第39回のテーマは「PISA」です。
目次
学習到達度調査で、読解力・科学的応用力・数学的応用力の順位が上昇
今回は、世界の15歳を対象にした学力調査の結果から見えた、これからの学びの課題です。
経済協力開発機構(OECD)がこのほど、2022年に行った学習到達度調査(PISA)の結果を発表しました(参照データ)。2000年からおおむね3年ごとに実施している調査です。22年はOECD加盟37、非加盟44の計81か国・地域から約69万人が参加し、日本は高1生約6000人が受けました。
結果は好成績と言えます。読解力は前回18年調査の15位から大幅に上昇して3位。平均得点は516点(OECD平均476点)で、前回より12点上がりました。科学的リテラシー(応用力)は前回より18点高い547点(同485点)で、5位から2位に浮上。数学的応用力は9点高い536点(同472点)で、6位から5位に上昇しました。ちなみに、1位は3分野ともシンガポールです。
ただ、手放しで喜べそうにはありません。
各分野の成績を6段階に分けて分析すると、読解力や科学的応用力は上位2層が前回と比べて有意に増え、下位2層も減少傾向です。けれど、数学的応用力は、上位2層こそ増えたものの下位2層の減りは鈍く、特に最も低い層は前回より微増。ここ20年ほどの推移を見ても1割程度のまま横ばいで、低得点層をどう引き上げるかが課題です。
数学の知識や手法を使って課題を解決する力が課題
もう一つ、気がかりなことがあります。日本の子供は学んだことを生活の中で生かせているのか、です。
PISAは毎回、3分野のうち1分野を重点調査の対象にしています。今回は数学的応用力。PISAでは数学的応用力を、「数学的に推論し、現実世界の様々な文脈の中で、問題を解決するために数学を定式化し、活用し、解釈する個人の能力」と定義しています。むずかしい言い回しですが、要は、数学の知識や手法を使って、社会で起きることについて考え、課題を解決する力と言えます。
ところが、生徒への質問調査で、日本は「実社会の問題の中から、数学的な側面を見つけること」に「自信がある」と答えた子が、22.7%。OECD平均51.2%の半分にも届きません。
教える側の課題も浮き彫りになりました。数学を使い、日常生活の問題をどう解決するかを考える授業の頻度を調べると、日本は「全て」から「半数程度」までが36.1%。数学が生活の中でどう役立つかを示す授業は、28.0%にとどまりました。このような、生活と絡めた指導について尋ねた9つの問いの回答を分析すると、日本はOECD加盟37か国のうち36位でした。 抽象的な理論や昔の話ばかりでは、身近に引き付けて考えにくいものです。日々の暮らしや今の社会との関わりを意識し、子供たちが「自分事」としてとらえられる工夫が求められます。
【わかる! 教育ニュース】次回は、1月30日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子