小3算数「三角形と角」指導アイデア《辺の長さに着目した三角形の仲間分け》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小3算数「三角形と角」指導アイデア

執筆/お茶の水女子大学附属小学校教諭・久下谷明
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、東京都目黒区立八雲小学校校長・長谷豊

年間指導計画 三角形と角

単元の展開

第1時(本時)辺の長さに着目した三角形の弁別

第2時 二等辺三角形の作図

第3時 正三角形の作図

第4時 円の性質に着目した二等辺三角形と正三角形の作図

第5時 三角形の角の大きさの相等・大小関係

第6時 二等辺三角形と正三角形の角の特徴

第7時 まとめ

本時のねらい

辺の長さに着目して三角形を弁別し、二等辺三角形や正三角形の意味や性質について理解する。

評価規準

辺の長さに着目して、三角形の弁別の仕方を考え、説明している。

本時の展開

本時の前半では3人~4人のグループをつくり、グループで協力して三角形をつくる活動に取り組む。

三角形をつくる活動のために、1グループにつき、5㎝(赤色)、9㎝(緑色)、13㎝(青色)の棒を、それぞれ12本用意する。

※なお、上記のように、本実践で使用する学習材は棒の長さによって色を変えているため、三角形の特徴を棒の色で説明しようとする子もいます。授業導入時だけでなく、その都度、必要に応じて色の違いは長さの違いであることを確認していきます。

(3種類の長さの棒を示しながら)ここに3種類の長さの棒があります。色の違いは何の違いになっていますか。

長さの違いです。

そうですね。色の違いは長さの違いになります。同じ色の棒は、同じ長さになっています。今日はまずは、この3種類の長さの棒を使って、いろいろな三角形をつくりたいと思います。ちなみに、三角形とはどのような形でしたか。

辺が3本ある形です。

角が3つある形です。

頂点が3つある形です。

3本の直線で囲まれた形です。

すごいですね。三角形とはどのような形かについて、その特徴がたくさん出てきました。2年生で学習したように、三角形は3本の直線で囲まれた形で、今みなさんが言ってくれたように、(その場所を確認しながら)辺や角や頂点が3つありますね。

問題
3しゅるいの長さのぼうを使って、いろいろな三角形をつくりましょう。
グループできょう力しよう! いくつできるかな?

今日は先ほど言ったように、(3種類の棒を示しながら)ここにある3種類の長さの棒を使って、いろいろな三角形をグループで協力してたくさんつくりましょう。(3種類の長さの棒のセットをグループごとに配る。)

※グループで三角形づくりに取り組む。

どうでしょうか。何種類つくれましたか。

7種類つくれました。

8種類つくれました。

9種類つくれました。

9種類できたというグループもありますね。9種類できるか、もう少し考えてみてください。9種類の三角形をつくったグループは、つくった三角形に同じものがないか確認してみてください。また、これ以上違う種類の三角形はできないのか、さらに考えてみてください。

●三角形づくりに取り組むなかで、次のような質問や様子があった際には、必要に応じて全体で共有して確認を行う。

(下記のように棒4本で三角形をつくり)これはいいですか。

図1

三角形をつくるときには、1本の棒で1つの辺としてください。2つまっすぐつなげて1つの辺とするのはなしにします。

(下記のような三角形を2つ見せて)これは同じでいいですか。

図2

どう思いますか。

裏返したり回したりして、同じになれば同じでいいと思います。

そうですね。そのように考えましょう。

●三角形をつくりながら、できた三角形を整理(仲間分け)して机の上に置いているグループもある。そのようなグループがあった場合には、その取り組みを下記のように紹介する。

このグループでは、つくった三角形を見やすく整理して机の上に置いていますね。


つくった三角形を、辺の長さに注目して仲間分けしましょう。

見通し

どのグループも9種類のいろいろな三角形ができました。どのような三角形ができたのか教えてください。

※できた三角形を1つずつ発表していく。

●発表された三角形と同じものを教師のほうでつくり、下記のようなやりとりをしながら子供に渡して、黒板に貼るように促す。そして、このやりとりを何回か繰り返す。

今、発表してくれたものと同じ三角形をつくりました。これでよいですか。

はい。

では、黒板に貼ってください。

●順番に貼っていく際に、正三角形、二等辺三角形、それ以外の三角形のように、子供が整理(仲間分け)しながら貼っていくことを期待したい。このような姿が見られた場合には、3個目、4個目あたりから、前に出てきて子供が貼る前に、全員に、「この三角形はどこに貼ったらよいかな?」と問いかけ、それぞれが考える時間を少し取るようにしたい。そして、このようなやりとりをした後、7個の三角形を貼った時点で、一度止め、下記のように問うようにする。

なお、整理しながら貼っていく様子が見られなかった場合には、3個~4個の三角形を貼った時点で、「整理して貼っていくことができないかな?」と問いかけ、整理(仲間分け)しながら貼っていくように促す。

(整理されて黒板に貼られた三角形を指しながら)三角形が仲間分けされ、整理されて貼られていますね。同じように、自分でもノートに仲間分けをしてかきましょう。

※ノートに9種類の三角形を仲間分けしてかく。

図3

何に注目して、どのように三角形を仲間分けしているでしょうか。ノートに自分の考えをかきましょう。

何に注目して、どのように仲間分けしているのかな??

自力解決の様子

A つまずいている子
・棒の色が1色と2色と3色で分けている。
・考えをかくことができない。


B 素朴に解いている子
・3つの辺の長さがすべて同じ三角形、2つの辺の長さが同じ三角形、辺の長さが全部違う三角形に分けている。


C ねらい通り解いている子
・辺の長さに注目して、3つの辺の長さがすべて同じ三角形、2つの辺の長さが同じ三角形、辺の長さが全部違う三角形に分けている。


学び合いの計画 

何を問われているのか分からずに困っている子や、どのように分けているのかについての説明の仕方が分からずに悩んでいる子もいます。考えている際中であれば、その姿勢を価値付けて励ますようにしましょう。

また、困っているようであれば、まだ取り上げていない三角形を1つ示し、「自分だったら、この三角形をどのグループに入れる?」と問いかけ、やりとりを通しながら、子供が問いの意味を理解できるようにしていきます。そして、「この三角形は、どうしてこのグループに入れたの? 何か理由はある?」と問いかけ、まずは、話し言葉による説明を促し、説明するきっかけをつくるようにしていきます。

分ける際に注目した点が明示されていない場合には、「この分け方はどのような違いに注目して分けたの?」と問いかけ、説明することができた場合には、「なるほど、それもかいておこう」といった声かけをしていきます。

自力解決後は、自分たちがつくった9種類の三角形を実際に動かし、同じように仲間分けをしながら、グループのなかで考えを説明し合う時間をとるようにします。このようにグループのなかでも、考えを聴き合う場をつくり、自分の考えを相手に伝える力も育んでいくようにしましょう。

なお、本実践で使用する学習材は、棒の長さによって色を変えているため、ノートに自分の考えをかく際、色の違いに注目して“棒の色が1色だけ、2色、3色”といったように説明する子もいます。その場合には、授業導入時と同様に、色の違いは長さの違いであることを確認し、色の違いではなく辺の長さの違いといった文言を使って説明していくように声かけを行います。

ノート例

B 素朴に解いている子

三角形と角 ノート例1

A つまずいている子

三角形と角 ノート例2

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

※9つのうち6種類提示し、以下のように問いかける。

黒板に貼られた三角形は、何に注目してどのように仲間分けがされていますか。

※グループで話し合わせた後、考えを発表させる。

辺の長さに注目をして仲間分けをしています。左は“3つの辺の長さがすべて同じ三角形”です。

真ん中は“2つの辺の長さが同じ三角形”です。

右は“同じ長さがない三角形”です。

そうですね。確かにそのようになっていますね。

●ここで、“2つの辺の長さが等しい三角形” に対して、さらに下のように “縦に長い三角形” “横に長い三角形” という分け方を考える子もいる。そのような考えが出された場合には、形の見方として認めつつ、辺の長さに注目したときには “2つの辺の長さが等しい三角形” として1つの仲間になることを確認する。

図4

あと3つありましたね。この3つの三角形はどこの仲間に入りますか。

※下記のようなやりとりをしながら子供に渡して、黒板に貼るように促す。

この三角形はどこに貼ったらよいですか。

真ん中です。

どうしてですか。

2つの辺の長さが同じ三角形だからです。

この三角形は、どこに貼ったらよいですか。

左です。

どうしてですか。

3つの辺の長さがすべて同じ三角形だからです。

図5

学習のまとめ

上記のやりとりを通して以下のように、二等辺三角形、正三角形を定義していきます。

・2つの辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形と言います。
図6
・3つの辺の長さがどれも等しい三角形を正三角形と言います。
図7
辺の長さに注目すると、二等辺三角形、正三角形、その他の三角形に分けることができます。

また、「等しい」は「同じ」ということ、辺につけたのしるしは、辺の長さが等しいことを表していることを伝えます。

評価問題

へんの長さをはかり、下の図から二等辺三角形や正三角形をえらびましょう。また、長さが等しいへんには、へんの長さが等しいことを表すしるしをかき入れましょう。

図8

解答例

二等辺三角形 イ、エ、カ
正三角形 ア、ウ、ケ

※辺の長さが等しいことを表すしるしの記入例は省略。
→辺の長さに着目して三角形を弁別し、二等辺三角形や正三角形を選ぶことができる。

感想例

  • 三角形は、辺の長さに注目して、二等辺三角形や正三角形に仲間分けすることができることが分かった。
  • 2つの辺の長さが等しい三角形は二等辺三角形、3つの辺の長さがどれも等しい三角形は正三角形ということが分かった。
  • 三角形には、正三角形や二等辺三角形という仲間があることが分かった。

1人1台端末活用アイデア

端末を活用し、端末上に示された9種類の三角形(9枚の写真)を自由に動かして仲間分けができるようにし、仲間分けの観点(何に注目して仲間分けをしたか)を書き込めるようにします。それを互いに見せ合い、説明し合うことで考えを交流し、見方・考え方を広げ深めることができます。

また、考えるきっかけをつかめていない子には、友達の取り組みを見ることを通して、そのきっかけをつかめるようにするなどの方法も考えられます。

三角形の成立条件と作図アイデア

本時で扱う3種類の棒、5㎝(赤色)、9㎝(緑色)、13㎝(青色)では、「5㎝(赤色)2本と13㎝(青色)1本」の組み合わせで三角形をつくることができない。

図9

授業のなかで、そのことに気付く子もいます。本時の内容を終えた後、その気付きを共有し、なぜ三角形をつくることができないのか、また、つくることができるのはどのような場合かについて考えていくこともできます。

その理由を共有していく過程において、できない場合とできる場合を対比させながら、棒の動きを動的に捉えて、二等辺三角形ができない(できる)様子を示していきます。

このような見方は、三角形ができない(できる)理由や三角形の成立条件を理解する手助けになるだけでなく、次時以降で学習する、二等辺三角形の作図方法にもつなげていくことができます。

ワークシート(ダウンロード可)
ワークシート「三角形と角」
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板書例

板書例 三角形と角

イラスト/横井智美

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