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学校に客としての対応求める「ユーザー化する保護者」どう対応すべき?

令和時代の保護者対応とは――? 来年度から新学習指導要領が小学校で全面実施。教育現場には、保護者や地域との連携も求められますが、現実には難しい面が多くあります。心理学的な見地から学級経営について研究している早稲田大学教育・総合科学学術院の河村茂雄教授に、保護者との関係構築や対応方法について伺いました。

河村茂雄(かわむら・しげお) 早稲田大学教育・総合科学学術院教授。岩手大学助教授、都留文科大学大学院教授を経て、現職。近著『アクティブラーナーを育てる自律教育カウンセリング』(図書文化社)など、著書多数。

全教員が地域の保護者のニーズを共有する

現在の保護者対応のニーズは、ひと昔前と比べると大いに多様化しています。さらに地域によってもそのニーズに違いがあり、学校側の方針にも差が生じています。一般的に教員が保護者対応を行うときに向き合うのは、自分が担任する学級の保護者です。しかしこれからは、その学校の保護者の全体像を押さえ、そのニーズをどのように整理し、学校経営に生かすのかということが前提となります。

学校経営のもとに、学級経営がある、これが大原則です。教員すべてが自分たちの地域の保護者のニーズは何なのかを把握し、整理する。それに対して、学校ではこのように関係性を構築していこうと方針を定め、それを骨組みとして学級での対応をしていくという考え方が必要です。

保護者との関係づくりが上手な学校は、このポイントをしっかり押さえています。保護者が担任にクレームを言うのは、別のクラスの先生と比べて、その対応の違いに不満を持つからです。教員それぞれがバラバラな指導方針や意識を持っている学校ほど、クレームが多い傾向があります。ですから、保護者のニーズの大枠をしっかりと捉え、問題に対する対応策が全教員で確認・共有できていることが重要になります。こうした学校経営における保護者対応策が準備できていることが絶対に必要です。

このいちばんの大枠となる方針は、校長が発しなければいけません。保護者からのさまざまなニーズすべてに対応することは、現実的には不可能です。学校として大枠の方針をもとに優先順位をつけ、対応策を明示することでクレームは生じにくくなります。方針の項目としては、例えば授業の進め方や生徒指導、児童生徒間の関係づくりなどがあるでしょう。

この方針を示すのは年度初めに行い、節目の学校だよりで保護者にも共有していくことが大事です。そして、学校経営に学年経営が位置づき、その学年経営に学級経営が位置づくことが必要です。

年度初めに大枠の方針を共有し、「チーム学校」として保護者との関係を構築した後は、学年でさらに詰めた方針を確認していきます。保護者対応の足並みをそろえるためには学年が核となりますから、担任たちがチームとなり、保護者対応にあたっていく必要があります。

保護者対応では、まずニーズをヒアリングすることが絶対に必要です。ニーズを聞いて整理し、原則としての学校側の方針を具体的に示す。これは絶対に押さえるべきポイントです。保護者からのニーズを集める方法としては、アンケートを実施してもよいですし、学校だより・学級だより・学年だよりの下部にヒアリングシートを作り、切り取って提出してもらう形式でもよいでしょう。また、PTA役員に直接聞くなど、さまざまに方法はありますので、工夫して準備してもらいたいと思います。

ここでのポイントは、ニーズを吸い上げるだけでなく、情報を整理し、それを他の保護者に知らせるということです。学校は公教育の場であり、保護者個人の要望は、学校の大枠の方針の中でしか対応してもらえません。しかし、他の保護者のニーズを知ることで、学校方針の優先順位を測ることができ、納得感を得ることができます。

保護者のユーザー化で学校への要求が高まっている

多様化した保護者は「ユーザー」と化してきています。そして、現在厳しい状況にあるのは、これまで「先生」と呼ばれていた職業の人々でしょう。教員、医師など社会的に一目置かれていた存在の人々が、保護者や患者などのユーザーから従来のように評価されなくなってきています。ユーザーはそういった「先生」に、お客さん意識でストレートに要求を投げかけてもよいと考えてしまっているのです。この令和の時代には、そういった関係性がさらに鮮明になってくるでしょう。

報道にも取り上げられていますが、学校の校則を見直そうという動きが進んでいます。学校のルールも社会のルールも同じレベルで捉えて、学校だけを特別だと考えることはないからです。これは欧米の考え方に近いと思います。路上で暴力事件が起きれば、警察が動きます。学校においても、以前のように学校内での処分で終わらせるという時代ではなくなってきています。

これまでの日本の教育現場における保護者との関係は、あまり説明をせずとも察することができる人間関係だったと言えます。しかしそれは、この令和時代においては成立しないのではないでしょうか。現在、外国にルーツを持つ住人が増加したこともあり、「察する」ことが非常に難しくなり、あらかじめ決められたルールの中で判断・行動する「契約」に近い人間関係となっています。学校として、この事例にはこの方針で進めるという明確な方針がなければ、混乱が起こってしまうことになります。

教員自身の情報を開示して保護者との関係を築く

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