小6体育 「チームで勝利を目指せ!ダブルゴールバスケットボール」 〈E ボール運動(1)ア ゴール型〉

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高学年の「ボール運動」は、ルールや作戦を工夫したり、集団対集団の攻防によって仲間と力を合わせて競い合ったりする楽しさや喜びを味わうことができる運動です。特に「バスケットボール」は、世界的に見ても競技人口が多く、生涯を通して親しまれているスポーツの1つです。実際に、小学校でも校庭にバスケットゴールが設置されていたり、ミニバスのチームがあったりするところも多いでしょう。

一方で、バスケットボールには、「ルールが複雑で分かりにくい」「シュートをしても入らない」など、子供の意欲を削いでしまうような面もあります。そこで、子供が「やってみたい」「またやりたい」と思えるような授業をつくるために、「ダブルゴールバスケットボール」という授業実践を行いました。

執筆/東京都公立小学校教諭・河田侃也

はじめの規則

・1チーム8人。(チームの中をAとBに分け、前半にA、後半にBがゲームを行う)
・試合時間は8分。(前後半4分ずつ)
・ゴールは、2つ。(Aがゲームをしているときに、Bが1人ポートボール台に立ってポートマンになる)
・ボールを持って2歩まで歩くことができる。
・止まったらパスをする。(ダブルドリブルの禁止)
・反則やボールがサイドラインやエンドラインから出たら、相手チームからのスローインから始める。
・得点を入れたら、帽子を赤から白に変える。
・バスケットゴールに入ったら5点。ポートマンへのシュートは1点。(ポートマンへのシュートは、肩より上を得点とする)
・得点が入ったら、ゴールの下からゲームを再スタートする。
・相手ゴールのある側のコートに攻撃側が1人残る。

バスケットボール コート図

単元指導計画(全6時間)

単元指導計画

ドリルタイム…最低限の知識・技能を身に付けるために、ドリルゲーム行う時間。
タスクタイム…ゲームに直接生かすことができるタスクゲームを行う時間。
パワーアップタイム…自分やチームの課題に合った練習を行う時間。

子供が「やってみたい」と思える工夫

「チームで勝利を目指せ!ダブルゴールバスケットボール」の学習を進めるにあたり、まずはじめに子供が「やってみたい!」と思える工夫をしました。事前にとったアンケートで「シュートがしたい」という子供たちの声が多かったことから、単元の導入で、「ゴールを2つにすること」「バスケットゴールに入ったら5点」というルールを提示しました。子供たちからも、歓声が上がり、子供の「やってみたい」という思いを引き出すことができたと感じました。

また、もう1つのゴールは、ポートボールのようにしました。こうすることで、ゲームをしていない半分の子供もポートマンとして参加し、単元名のようにチームで勝利を目指すことができる工夫をしました。

子供が「またやりたい」と思える工夫

子供たちが「またやりたい」と思える工夫として、以下の手だてを用意しました。

ICTの活用

自分の役割を明確にしたり、作戦を選択したりする方法として、ICTを使用しました。「自分たちのチームは、『前で待ってる作戦』だから、Aくんは、ゴール前にいてね」などの作戦の選択と役割の把握をするとともに、チームでの課題解決のための手段としてICTを活用しました。以下のような作戦を用意し、自分のチームの特徴に合った作戦を選択し、実行していきました。

最低限の知識・技能の保証

バスケットボールは、「シュート」「ドリブル」「パス」とバスケットボール特有の技能があります。ゲームの中で技能を身に付けることは難しいため、ゲームを最低限楽しむことができるよう、以下の「ドリルゲーム」(個人技能の習得をめざした記録達成のゲーム)と「タスクゲーム」(個人とチームの技術的・戦術的能力の向上をめざしたゲーム)を用意しました。この「ドリルゲーム」と「タスクゲーム」は、第4時以降のパワーアップタイムでチームに選択させていきます。

ドリルタイムでは、以下のゲームを行いました。

①ドリブルリレーゲーム

2人1組で行う。1人がドリブルでエンドラインからセンターラインまで進み、折り返してエンドラインの近くまで戻り、エンドラインで待つもう1人にパスをする。パスを受け取った子も、エンドラインとセンターラインをドリブルで往復し、2往復の速さを競う。先に走った子は、もう1人の子にパスしたらエンドラインで待つ。

ドリブルリレーゲーム イラスト

②パス・シュートゲーム 

2人1組で行う。1人が、シュートを打ちやすいエンドラインからパスをし、もう1人がキャッチをしてからシュートをする。シュートとパスに分かれて30秒ずつ交代して行う。

シュートの得点を組同士で競い合う。

パス・シュートゲーム イラスト

③ピボットゲーム

2人1組で行う。攻める側はボールをキープし、守る側はボールを追いかけてボールにタッチする。ボールに30秒間で何回タッチできるかを競う。 

ピポットゲーム イラスト

④三角パスゲーム

チームごとで行う。チェストパス・バウンズパス(両手と片手)をし、パスをしたら、反時計回りに移動する。1分間行う。

三角パスゲーム イラスト

 

タスクタイムでは、以下のゲームを行いました。

・タスクゲーム(ドリブルなし)…チームごとに攻め4人・守り3人の4対3を行う。ボールを持っている子供は、誰にボールを渡すか考え、空いているところに移動した子供にパスをする。ボールを持っていない子供は、パスをもらえる位置に移動する。ドリブルをしないため、余裕をもって行うことができる。

本授業を通して、子供たちは、「シュートをして、得点を獲得する」という楽しさや喜びを味わうことができました。バスケットゴールへのシュートは5点なので、単元後半は、バスケットゴールへのシュートも増えていきました。また、ポートマンへのシュートができない子供は、1人もいませんでした。「ポートマンのシュートは、バスケットボールで身に付けたい技能とは、異なるのではないか」と思う人もいると思います。しかし、ボール運動「ゴール型」で身に付けたい知識・技能は、以下のように細分化されます。

①得点しやすい場所に移動すること。
②得点しやすい場所でパスを受け、ゴールに体を向けること。
③ゴールにシュートすること。

これは、ポートマンへのシュートでも必要な技能です。今回の「ダブルゴールバスケットボール」では、「シュートチャンスが生まれやすい」「シュートが決まりやすい」ことから、子供がボール運動で味わってほしい「集団対集団の攻防によって仲間と力を合わせて競い合う楽しさや喜び」を味わうことができるものだと考えます。また、ポートボール台を使用することは、他の先生方でも行いやすい汎用性のあるものと考えました。今回の実践が、全国の先生方の授業のヒントになれば幸いです。

ボール運動の写真

 


〈参考資料〉
『小学校体育・全学年対応 ゴール型ゲーム〈バスケットボール〉の授業プラン』 日本バスケットボール協会 (大修館書店)

 

執筆
河田 侃也(かわた なおや)
東京都公立小学校教諭
令和四年度東京教師道場部員
令和六年度第14期NPO健康・体育活性化センター小学校体育研究員

イラスト/佐藤雅枝

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