音楽が苦手な先生のための音楽会の実践アイディア

特集
学習発表会・音楽会特集

北海道小学校合唱教育研究会事務局長

畠山美砂

音楽が専科でなくて苦手な先生や、ピアノが上手に弾けない先生も心配いりません。日常の授業を使ってできそうな音楽会のネタと練習のコツについて、畠山先生からアイディアをいただきました。

執筆/北海道公立小学校教諭・畠山美砂

札幌市、釧路市、帯広市などで教師経験歴20年以上。音楽専科の経験もあり、校内外で音楽研究をしている。北海道音楽教育連盟会員。北海道合唱教育研究会会員。北海道ムーブメント研究会会員。

音楽会イメージ
撮影/金川秀人

アイディアを入れて楽しい音楽会を

音楽会や学習発表会など、毎年この時期、学年学級等で発表する機会が、どこの学校でもあるのではないでしょうか。

音楽が苦手な先生は「ああ今年は何をしようかな・・・。思いつかない」「かっこよくピアノ伴奏でも弾けたらいいのだけれど、厳しいし・・・」と、悩んでいらっしゃる方も多いかと思います。

また、「練習ばかりに多くの授業時間がかかってしまう」「他教科の学習時間もしっかりと保障したいのだが」「短時間の練習時間で仕上げられて、なおかつ舞台映えのする発表があったらいいのに・・・」そんなことを、誰しも願っているのではないでしょうか。

そんな先生方の味方となり、「これなら自分でもできそう!」と、少しでも思っていただけたらと、いくつかアイディアを考えてみました。

成功術その① 無理はせず、日常の授業を生かしてつくろう

今回は、教科書に載っている『きらきら星』(フランス民謡)を生かした音楽会の例です。教科書にあるように鍵盤ハーモニカの演奏ができ、歌が歌えれば、もう下準備はバッチリです。

まず、簡単なストーリーをつくります。ナレーター役の子が読み上げるとよいと思います。

場面一
ナレーター1:「夕方になりました。一番星が光りはじめました。」
演奏1:ナレ―タ―の後に、トライアングルとすず、グロッケンで、簡単なプロローグを入れます。ト―ンチャイムも、一人1音を担当するだけなのでおすすめです(例参照)。

資料1 プロローグ例(この基本を応用して)
プロローグ例(この基本を応用して)

場面二 
ナレーター2:「あちらでも、こちらでも、お星様はだんだん増えてキラキラときらめいています。」
演奏2:鍵盤ハーモニカで旋律を演奏します。楽器ではなく、歌だけでもOK。鍵盤ハーモニカと歌とを一緒に演奏すれば、歌の音程もズレないですし、ダイナミックに聞こえます。その際には、鍵盤で「ファファミミレレド」から始めると子どもたちの演奏も入りやすいでしょうし、ピアノがなくても前奏代わりになります。

場面三
ナレーター3:「夜が明けてきました。もうすぐ朝です。お星様は、少しずつ眠りについていきました。」
演奏3:これも、場面一のように打楽器で演奏します。ポイントは、「夜が明けてくること」と「だんだんと消えていく様子」を、どのように表現に生かすかです。夜が明けるのですから、例えばグロッケンで低い音から、高い音まで自由に音を鳴らしていく、ウインドウチャイムの音をシャララと重ねて演奏するのも一つだと思います。

アレンジ編

●ストーリーを広げて

例えば、星男と星子という星役を設定し、配役を決めて二人の会話(セリフ)を入れます。そうすることで、よりストーリー性のある音楽劇にすることもできます。

途中には、悪者「黒雲団」が登場し(登場シーンはティンパニなどを使って)、雲で星たちを隠してしまうような場面を設定しても盛り上がるでしょう。しかし、黒雲団の弱点は「美しい歌声」。全員のすてきな歌声に退散していくストーリーは、いかがでしょうか。

●他の楽曲も取り入れて

場面一であれば、『一番星みつけた』(文部省唱歌)を歌うのもおすすめです。簡単な旋律なので、鍵盤ハーモニカ等で演奏したりすることもできます。

また歌曲であれば(ちょっとレベルが高いですが)、『星の世界』(コンヴァース作曲)があります。美しい歌声にチャレンジできそうです。伴奏は、コードネームのF(ファラド)B♭(シ♭レファ)C7(ドミソシ♭)の3つを当てはめるだけで簡単にできます。

場面二の応用編では、『きらきら星』鍵盤ハーモニカの二重奏バージョンはいかがでしょうか。あとは、『きらきら星変奏曲』(モーツァルト作曲)をBGMとして取り入れたり、ディズニーのピノキオより『星に願いを』に簡単な振り付けを考えて星たちのダンスとして、しっとり歌い踊る場面を入れたりしてもすてきです。

きらきら星の楽譜
参考文献:教育同人社「楽しいリコーダー」より

音楽の授業で取り組むのであれば、冒頭の打楽器による音楽は「音楽づくり」として授業で扱い、子どもがチームでつくった音楽を全体の場で発表するのもよいと思います。

成功術その② 遊び歌を発表に変身させよう

わらべ歌、手遊び歌など、昔から親しまれてきた歌と身体表現を上手に組み合わせることで、ステージ向けの発表にアレンジすることができます。きっと参観の保護者の皆さんも、昔を懐かしんでくれるのではないでしょうか。

●伴奏に困ったら「わらべ歌メドレー」

例えば教科書にも載っている『ひらいたひらいた』は、わらべ歌です。わらべ歌は、遊び歌。伴奏は特に必要ありません。アカペラで歌っても様になるのがわらべ歌。輪唱も合います。

必要であれば、「ラソミレ ミレミソ ラララ―」と右手で弾き、左手はずっと「ラ」を繰り返すことで、前奏も間奏も後奏もできます。ピアノを習っている子に頼んでもよいですね。

ステージ前方には4人くらいのグループで円になり、歌いながら歌詞に合わせて表現する子が数名いると雰囲気が出ます。

この伴奏は、『なべなべそこぬけ』、『いもむしごろごろ』や、スキップのリズムにすると『おちゃらか』にも使えます。どれも、遊びと歌とを組み合わせることで、楽しいステージになりますし、練習にも子どもは喜んで取り組みます。

アレンジ編

●ピアノなしでも、子どもの声も伴奏に

他にも、長なわとびを使った『大波小波』や『おじょうさん』、『ゆうびんやさん』もあります。この曲も輪唱になりますし、パートナーソングにもなります。ステージで実際に歌のリズムに合わせて長なわ遊びをしてもよいですね。成功すると会場全体が盛り上がります。

また、『ゆうびんやさん』では、「声伴奏」をすることもできます。

歌♪「ゆうびんやさん ごくろうさん 葉書が十枚落ちました 拾ってあげましょ 1枚2枚・・・」と歌うパートと重ねて「ゆうびんやさん ゆうびんやさん」と小さな声で繰り返して重ねます。前奏として歌いはじめに、このフレーズの繰り返しから入ってもよいですね。最後はみんなで元気に「ありがとさん!」と言って、終わります。

他のなわとび歌もあると思いますし、ゴムとびの遊び歌やまりつき歌も使えそうですね。調べてみるとたくさんあると思います。上手に構成してみましょう。

なわとびイメージ

●楽器を重ねて発表会をバージョンアップ

わらべ歌のよいところは構成音が少ないところです。重ねる音も「ミ・ソ・ラ」の3音さえあれば、バッチリです。鍵盤ハーモニカや、バス木琴等で鳴らしても合います。

ウッドブロックやクラべスで一定のリズム(楽譜例参照)を打ちます。そこに、わらべ歌と木琴を重ねます。

資料2 鍵八orバス木琴の旋律例
楽譜例

初めて木琴を扱う子どももいると思いますので、音列の音板が簡単に取り外せる「オルフ木琴」も便利です。必要のない音の音板を外すことができるため、演奏しやすいものです。また、マレットの種類によっても音が変わりますし、正しい持ち方や音板のどこを鳴らすか等をしっかりと教えてあげることで、演奏の質も大きく変わりますよ。

成功術その③ 手作り楽器のアンサンブル

手作り楽器の王道と言えば、マラカス。ペットボトルに、ゴマやビーズ、クリップ、マカロニやストローを短く切ったもの等を入れて振ります。他には、さまざまな空き缶をマレットで叩いたり、飲み口に息を吹き込み鳴らしたり。

植木鉢や釘を棒にぶら下げて叩いて鳴らしたり、牛乳パック等に輪ゴムを付け、爪弾いたりするものなど、「叩く・こする・弾く・振る・吹く」ことで演奏できるものを作ります。

手作り楽器のイラスト

次に、どのような音の組み合わせがよいか考えたり、重ね方を考えたりします。構成として分かりやすいのは「はじめ・中(曲の山)・おわり」の3部構成です。

●工夫ポイント

【手作り楽器のパート分担例】
・ベースになるリズムパート
 音の低い太鼓のような叩く楽器
・主旋律パート
 ギターや笛などいろいろな音の出る楽器
・合いの手パート
 マラカスなど合いの手を入れやすい楽器

【曲の構成】
・始まり方や終わり方を工夫(だんだん音が増えていったり、だんだん減らしたり)
・強弱や速度を変えて変化を(弱くからだんだん強く盛り上げたり、ゆっくりから少しずつ速くしたり)
・「反復」や「問いと答え」を使って(Aチームが鳴らしたら、それに応えるように、Bチームが同じリズムをマネたり、別のリズムで応えたり)
・拍のあるところとないところ(拍に合わせて鳴らすところと、自由に思うがまま鳴らすところ、あるいは、みんなで休符にして無音になるところをつくったり)

アレンジ編

●別の曲とコラボする

例えば「ハンガリー舞曲第5番」(ブラームス作曲)のような速さや強弱の変化が激しい曲や「マンボNo.5」のように、ノリノリの楽曲に合わせて演奏してみるのはどうでしょう。「マンボ」なら、リズムに合わせて身体を動かしたり、途中で、「ウーマンボ!」とみんなで叫んだりすると盛り上がります。鍵盤ハーモニカで、主旋律を演奏して、途中に入れて重ねるとより本格的な演奏になります(楽譜例参照)。

資料3 マンボの旋律
楽譜例

●リズムにラップをプラスして

手作りマラカスのシャカシャカに合わせて「みんなの 大スキ オ・シ・エ・ルヨ! イェイ!」と全員で元気にコール。そして一人ひとりのソロコーナーにします。「ぼくは、お菓子が大好きさ、イェイ! チョコにキャンディー、ヤメラレナイ」等、ノリノリのラップ口調で言います。

ソロとソロのつなぎは、全員でラップ。「大好き・ダイスキ・ミンナ、大スキ」リズムで「チャチャチャチャチャッイェイ!」と入れてつなげていきます。

歌詞を「みんなの夢をオシエルヨ」と変えてもよいでしょう。一人ひとりのオリジナルラップが完成します。

ラップなので、ピアノ伴奏も必要ありませんし、美しい歌声でなくても大丈夫。とにかく、タテノリ、ノリノリで楽しく表現することが大事です。

また、手作り楽器でなくても、音楽室のリズム楽器や手拍子だけでも盛り上がります。ラップのつなぎは、手や足を使ったボディーパーカッションを入れるのも、楽しいと思います。

成功術その④ 練習は計画的に。とにかくほめて!

楽しく演奏する子どもたち

発表の日程が決まったら、まず当日までの計画を立てましょう。いつまでに、何を歌えるようにし、演奏できるようにするか、全体で合わせるのはいつがよいか等をイメージします。

また、伴奏や合奏など、楽器を入れる際には、音のバランスも大事です。録音や録画してみんなで確認してみることもよいと思います。特に鍵盤ハーモニカは、音が大きいので、歌う子どもたちが怒鳴って歌わないよう、楽器の人数配分を考えましょう。

一年生は初めての音楽会です。全員で歌ったり、演奏することが「楽しい!」と、思えることが何より大事。大勢の人の前で緊張もするでしょう。練習からちょっとしたことでも「歌う姿勢がバッチリだね」「さすが! もう覚えたのですね」「キラキラしたすてきな音ですね」と、具体的な事例を挙げながらたくさんほめてあげることで、自信をつけ、その気にさせて、本番に臨ませましょう。

すてきな音楽会になりますように!

イラスト/横井智美

『小一教育技術』2015年10月号より

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