小3国語科「つたわる言葉で表そう」全時間の板書&指導アイデア

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文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「つたわる言葉で表そう」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小三 国語科 教材名:つたわる言葉で表そう(光村図書・国語 三下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田元
執筆/東京都練馬区立大泉学園小学校・浅沼由香里

1. 単元で身に付けたい資質・能力

この単元では、伝えたいことを相手によりよく伝える力を身に付けることを目指し、状況や様子、気持ちなどを詳しく思い描いて表現することと、状況や様子、気持ちなどを表す様々な語句に触れることで、必要に応じて語彙を拡充し、適切に言葉を用いることを扱っていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

どの学級であっても、行事等の振り返りで、「すごかった。」「おもしろかった。」となどと表現する児童は多くいることが予想されます。そのため、教科書p105の冒頭の「何がどうすごかったのか、おもしろかったのかが相手につたわりません。」という言葉は、児童に驚きと納得感をもって受け止められることでしょう。

本単元では、まず、今ある力で冬休みの思い出を文章で表し、それを基に、相手により伝わりやすくするために、「だれが、いつ、どこで、だれ(何)と、どうして、どのように」といった5W1Hを使って詳しく思い出していきます。
また、自分の気持ちに合った表現を探す活動を通して、必要に応じて語彙を拡充することができるようにしていきます。それにより、自分の思いや考えをよりよく相手に伝えられることを実感し、今後も豊かに表現していきたいという思いをもてるようにしてきます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 自分の書いた文章から、課題を見つける

最初に、現在の自分の力で「冬休みの思い出」の文章を書きます。
その文を基に、うまく書けたところや、こうすればよかったと感じる部分について振り返り、読む人によりよく伝わる文にしていきたいという思いにつなげていきます。
自分の文章をよりよくしていくために、どんな方法があるのか、普段からどんな取り組みをしていけばよいのかという課題意識や見通しをもって学習を始めることで、主体的な学びにつなげます。

〈対話的な学び〉 グループで気持ちを表す言葉探しをする

最初に書いた文章の中で、気持ちを表すときに同じ言葉を選んだ子供たちでグループを作ります。
その言葉を画用紙などの中心に書き、別の言葉で表せないか考えを出し合ったり、調べたりして、図を拡充していきます。
一人で言葉を調べたり図を拡充したりしていくのは限界がありますが、複数の子供たちで取り組むことによって、言葉探しの楽しさを味わったり、友達と言葉の選び方が異なることに気付いたり、同じ言葉を使っていたけれど、実は少し違う気持ちを表していたことに気付いたりすることができます。
このような対話をいかして、学びを進めていきます。

〈深い学び〉 年間を通して語彙の拡充と活用を図っていく

本単元では、言葉を選ぶ活動のときに、同じ意味を表す言葉を二つ以上知っていると、より自分の気持ちに合った表現はどれかを選んで伝えられるため、よりよく伝えることができることを確認していきます。このことで、相手によりよく伝えるためにもっと知っている言葉を増やしていこう、素敵な表現があったら覚えておこうという気持ちを醸成していきます。
本単元が終了しても、帰りの会などで、「今日のすてきな言葉」として発表する取組などをすることで、短い3学期であっても、児童の表現が豊かに変化することが期待できます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

最初に書いた文章と学習後に書いた文章を比較できるように、タブレットに保存していきます。
一目で比べられるだけでなく、よくなったところに赤線を引いたり、さらに付け加えたいところに簡単に言葉を挿入したりすることができます。
また、交流した友達以外の作文もすぐに閲覧でき、よい表現があったら自分の「使ってみたい言葉ノート」に付け加えやすくなります。

グループでの言葉探しの際は、見つけた言葉や思いついた言葉を付箋のように貼って共有できる学習ソフト(本単元ではGoogle Jamboardを想定)を活用すると、似たような言葉をまとめたり、どこから見つけたのかを分類したりしやすくなります。

6. 単元の展開(5時間扱い)

 単元名: つたわる言葉で表そう

【主な学習活動】
・第1次(1時2時3時4時5時
第1時
① 冬休みの出来事について文章を書き、学習課題を設定し、学習の見通しをもつ。

第2時
② 相手によりよく伝えるために、様子や気持ちを詳しく書くことを知る。

第3時
③ よりよく伝えるために、友達と協力して言葉を探し、必要な語彙を増やす。

第4時
④ これまでの学習を踏まえて、第1時に書いた文章を見直し、冬休みの出来事について改めて文章を書く。

第5時
⑤ 書いた文章を友達と読み合い、相手によりよく伝える表現を確かめる。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

学習課題を設定し、学習の見通しをもつ時間です。
冬休みの思い出の文章を書き、その文章のよさや課題に目を向けさせ、学習課題を設定し、学習の見通しをもたせていきます。

「主体的な学び」のために

実際に書く際には、文章の量は問わず、出来事は一つだけ取り上げることを条件として示します。10分間程度で書き、その後に文章を読んで気付く時間を設定します。

書いた文章を読み合うときは、1枚のワークシートの文章を二人一緒に目で追って、気付いたときにすぐ質問ができるようにペアで行います。

ワークシート例 】

ワークシート例

ワークシートを使用して、右半分に文章を書き、左半分には、友達とのやり取りから、よく書けているところと、こうすればよかったと思うところを記入していきます。
こうすればよかったと思うところが、これからの学習で学んでいく課題であることを一目で確認することができます。自分のワークシートを振り返り、伝えたいことを、言葉でよりよく表すという学習課題を設定します。

冬休みに、どんな出来事がありましたか。3年生の学習のキーワードでもある、そのときの自分の「気持ち」と合わせて、友達と話しましょう。

スキーに行きました。たくさん滑って、楽しかったです。

私も行ったよ。どこのスキー場?

長野のスキー場だよ。

今話した冬休みの思い出を文章で書きましょう。「気持ち」も伝わるように書けるといいですね。時間は10分です。今話していたことの中から、スキーのことならスキーのこと一つに絞って書きましょう。

さっき聞かれたことは、入れて書こうかな。

(10分後)

書けた文章を友達と読み合いましょう。読んでよかったところを伝えたり、気になったところや詳しく知りたいところは質問したりしましょう。

長野のスキー場って入れたから、分かりやすくなったね。

なんで長い時間がかかったの? どれくらい?

車で行ったら、雪が降っててゆっくりしか進めなかったんだよ。5時間もかかって、おしりが痛くなっちゃったよ。

寒いって、どれくらい?

車から出た途端、ぶるぶる震えて歯がガタガタ言っちゃった。

スキーってどんなところが楽しいの? おみやげを買えたら、どうして「うれしい」と思ったの?

友達と一緒に読み合ったり、たくさん質問されたりしましたね。うまく書けたと思ったところや、もっとこんなふうに書けばよかったと思ったところがあったらワークシートに書きましょう。

どこに行ったか、ちゃんと書いたのはよかったけど、たくさん質問されたな。もっと詳しく書けばよかったかも。

この学習では、よりよく伝えるために、どんなことを書いたり、どんな言葉を使ったりしていけばいいかについて考えていきます。そして、最後に今日書いた文章をバージョンアップしていきましょう。

児童が書いたワークシート例

児童のワークシート例

【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

イラスト/横井智美

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