【相談募集中】子どもに会いたくない、職員室で悪口を言われている気がする、でも、休むのは怖い

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臨床心理士・公認心理師

大多和二郎

学級が崩壊気味で、子どもたちを叱ることが多くなり、学校に行くことが辛くなってきたという先生から「みん教相談室」にSOSが届きました。病院では休職を勧められていますが、なかなか決心できないとのこと。この相談に、教員向け法定研修でメンタルヘルス研修の講師をされている臨床心理士・公認心理師の大多和二郎先生からアドバイスが届きました。こちらでシェアします。

写真AC

Q. 学級が崩壊気味。子どもに会いたくないし、職員室で悪口を言われている気がします

学校に行くことが、毎日辛くて辛くてたまりません。初任者です。かなり恵まれた環境だとは思います。不安に思っていた保護者からのクレームも全くなく、同僚の先生方は優しいです。

でも、力不足もあり学級が崩壊気味です。「おしゃべりやめて」「先生が今話したの聞こえたかな?静かにしていれば聞こえるよ」「全員起立! 静かになった人から座ります」「喋っていた人がいたよ、やり直し」。いろいろ試しても、一瞬静かになった次の瞬間にはざわつき始めます。「教科書を開いて、いいと思ったところに線を引きましょう」。そんな指示をして、机間巡視をしている最中、「先生、今は何をするんですか?」「先生、国語の準備し忘れてたので取ってきていいですか?」なんで、どうしてできないの? 課題もきちんと書いたし、口頭でも説明したのに、なんで?

毎時間のように喧嘩が起きます。本当につまらないことで、ずーっと言い争いをします。いじめ一歩手前のものもあります。「そういうことを言うと傷つくよね?」とお話しした直後に、同じ子が人を傷つけることを平気で言います。叱っても、「俺じゃなくてあいつが悪い、他にもやっていた人がいた」。そんなことばかりです。当然叱ることが多くなって、どんどんクラスがギスギスしていきます。楽しい時間もどんどん減っていくし、せっかく考えてきた授業もおじゃんです。足りなくなった時間で、駆け足で詰め込むほかありません。

そんな日々が続く中、学校に行くのが辛くなってきました。子どもたちに会いたくない。他の先生が、ヒソヒソとうちのクラスの悪口を言ってるような気がして、(本当はそんなことはないと思うのですが)職員室で怖くて誰の顔も見られません。誰かが廊下を通りかかるだけでビクッとしてしまいます。子どもにも、教員にも、期待はずれ、出来損ないと思われてる気がして。

病院では休職を勧められましたが、休んでしまえばもっと遅れが出て、二度と復帰できなくなると思うと、頷けません。今は精神安定剤をもらって生活していますが、それでも辛いです。助けてください。(おふとぅん先生・女性・20代)

A. 「先輩、力を貸してください」と言ってみましょう

初任者の先生ですね。「不安に思っていた保護者からのクレームもなく、同僚の先生方は優しい」ということで、その点についてはよかったけれども、「学級が崩壊気味」とのことですね。具体的な学級の様子が書かれているのでその様子がよく分かりました。おしゃべりがやまず、ざわつきやすいことや毎時間のように喧嘩が起こるなどのことで楽しい時間もどんどん減っていって、せっかく考えてきた授業もおじゃんになるということですね。大変ですね。

そうすると、「他の先生がヒソヒソとうちのクラスの悪口を言っているような気がして、職員室で怖くて誰の顔も見られません」というように、他の先生からどう思われているかも気になりだしてきてしまったようですね。自信がなくなってくると、他の人からの評価が気になりますね。病院では休職を勧められたとありますので、ストレス反応も起こっていて、精神安定剤を飲みながらの勤務になっているのが現状ということですから、この状況をなんとかしたいですね。

大変な状況でも、解決の方向や、努力の方向が分かっていれば、あとはそのためのやるべきことをやっていくことで解決に至ると思えますから、精神的なキツさは、やっていくごとに少なくなっていくでしょう。しかし、解決の方向や努力の方向が分からないと、出口が見付からないので焦りや不安がだんだん強まっていくことになりがちです。

たとえば、今回のご相談の文章にある、「教室のざわつき」への対策についてもそうだと思います。同僚の先生方はそれぞれに授業に集中させるための工夫やざわついたときにどうするかという対応法を持っている人が多いと思います。自分のクラスの授業がうまく行っていないことを話すのはつらいかもしれませんが、「ざわついたときの対処法について工夫していることを教えていただけますか」と先輩の知恵や経験を話してもらうというのはどうでしょう。喧嘩が始まったときの介入の仕方についても同じです。

つらい気持ちになると、自分の至らなさを知られることやできていないことを見せるのは怖いし、不安かもしれませんが、そういう時に、「先輩、力を貸してください」と頼ることは先輩の方としては悪い気はしないと思います。頼るということは、その人の経験と実力を認めているということになるのですから。特に初任の先生なのですから、分からないことが多いのが普通ですから大丈夫です。

私が教育実習に行ったときの小学校の先生がこんなことをやっていました。2年生の教室でした。「皆さん授業を始めますよ〜」と先生が言っても児童はざわざわしています。そうすると、教室の前の方の児童に向かって「1.2.3…、1.2.3…」と小さな声でリズミカルに先生が話し始めます。子どもたちはにこにこしながら「1.2.3…、1.2.3…」と先生を見つめながら一緒にリズムをとって言い始めます。その声がだんだん教室全体に広がっていきます。教室全体がそのリズムに包まれたタイミングで、先生は指揮者のようにジェスチャーを交えて笑顔で「1.2.3!」と大きな声で力強く言ったあと、人差し指を口の前にもってきて、「シー・・・・・」と言って、目をつぶって黙ります。すると教室中がシーンと静まります。先生はゆっくりと目を開けて、「さあ、始めますよ」と静かに語って授業が始まりました。

先生方はそれぞれいろいろな工夫をしているものです。ぜひ、勇気を出して、周りの先生に助けを求めてみてください。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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