短なわ跳びの授業で、協働的な学びを実現するにはどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #42】
短なわ跳びは、短なわさえあれば省スペースで行える上に、がんばりが成果となって表れやすい運動です。そんな短なわ跳びの授業が、なわ跳びカードを配って、児童一人一人が自分のやりたい技を繰り返し行うだけになっていませんか。授業の中に子ども同士が学び合う協働的な学びの場面を意図的に設定し、個人の技能はもちろん、集団全体の力を伸ばしていきましょう。
そんな学び方にピッタリなのが、「わたしの先生」です。この方法は、1年生から6年生まで幅広く行うことができます。ぜひ、実践してみてください。
執筆/東京都公立小学校教諭・箕浦秀一
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
1.「わたしの先生」とは
「わたしの先生」は、子どもたちの中にある技能差を生かしながら、集団全体で運動のポイントの理解を深めたり、技能を伸ばしたりすることができる魅力的な学び方です。子どもがミニ先生になって他の子どもに教えることで、協働的な学びを実現することができます。
それでは、行い方を詳しく説明していきます。
2.技を決めよう
まず、子どもたちがどれくらい短なわ跳びをできるのか、実態調査を行います。その上で、クラス全体で課題とする技を1つ決めます。活動の初回に、クラスの4分の1から3分の1程度の人数が跳ぶことができる技と回数を設定します。例えば、交差跳び5回、連続二重回し10回などです。これを教師の前でクリアできた子が、はじめのミニ先生になります。成功できた子の赤白帽の色を変えさせて、ミニ先生であることの目印にします。
3.学び合いスタート!
ミニ先生が決まったら、いよいよ学び合いのスタートです。まず、以下の手順を子どもたちに伝えます。
①課題とした技・回数ができるように、ミニ先生に教えてもらいながら練習する。
②できるようになったら、ミニ先生と一緒に教師のチェックを受ける。
③教師のOKが出たら、新たにミニ先生になる。
説明が終わったら、ミニ先生を散らばらせ、まだできない子どもたちをそれぞれのミニ先生のところに教わりに行かせて学び合いを始めます。このとき、学び合いに入りづらそうな子どもがいたときは、教師が手を引いて参加できるよう働きかけます。
「わたしの先生」で重要になるのが②で、新しくできるようになった子と併せて、その子に教えたミニ先生に対して、友達のために頑張ったことを大いに称賛します。こうすることで、自分ができるようになるだけでなく、友達ができるようになるために行動しようという雰囲気がクラスの中に芽生え、高まっていきます。
4.学び合いを深めよう
ミニ先生が増えてきた時間の中盤や最後に、全体を集めて運動観察の場面を作ることで、より学び合いが深まります。その日にミニ先生になった子に全体の前で跳んでもらい、「ミニ先生のどんなアドバイスが役に立ちましたか?」と問いかけます。うまく答えられなかった時は、ミニ先生に、「どんなことをアドバイスしたら跳べるようになりましたか?」と問いかけます。その子たちの答えをもとにして、もう一度その点に注目させながら運動観察をさせます。このように、子どもの言葉を使って、運動のポイントを全体に広げていきます。
子どもの言葉で授業を進めていくのは理想ではありますが、それだけではうまくいかないこともあります。そんな時は教師が主導して、運動のポイントを子どもたちに落とし込んでいきましょう。モデルとなる子どもに跳んでもらい、どこを観察すればいいのかを示し、運動のポイントを全体で確認します。そして、ミニ先生に対して、ここで確認したポイントを中心にアドバイスするように促し、学び合いを活性化させます。
ミニ先生にとって、今、目の前にいるできない子は、昨日のできなかった自分と重なり、一生懸命どうにかしようとします。そして、自分が教えた子ができるようになったときに、自分のときと同等かそれ以上の笑顔を見せるようになります。これが体育の協働的な学びで大切にしたい子どもの姿ではないでしょうか。「わたしの先生」で、お互いに高め合う集団をつくっていきましょう!
イラスト/佐藤道子
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執筆
箕浦 秀一
東京都公立小学校 教諭
1984年岐阜県関市生まれ。子どもたちとともに、体育で何をどのように学ぶのかを追究しながら実践を積み重ねている。大切にしているのは、体の動きと心の動き。体が動けば、心も動く。
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。