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【11月荒れ】荒れの原因ともっとも有力な初期対応

2019/11/6

11月は1年で最も荒れやすいといわれています。その兆候はどんなものでしょうか? 荒れてしまってから立て直す方法はあるのでしょうか? ベテラン教師である赤坂先生から、11月荒れ(11月危機)の原因と初期対応についてお話を伺いました。

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

下校イメージ
撮影/髙野宏次

【1】「11月危機」は存在するのか

かつて学校は「楽園」と表現された時代がありました。学校の校舎、調度品が白が基調となっているように、学校は安全で安心できた場所でした。しかし、それが1980年代には、中学校を中心にした校内暴力、1990年代後半からの小学校を中心にした学級崩壊によって、学校の安全神話が崩れ去りました。それ以来、学校は、授業崩壊や学級崩壊という、教育が成立しない状況を想定しなければならない時代に入りました。私は1980年代後半から、2000年くらいを境に、それ以前を「プレ学級崩壊期」、それ以降を「ポスト学級崩壊期」と呼んでいます。

学級担任をしていると、クラスが不安定になる時期を感じると言われます。先輩方にお聞きすると、「プレ学級崩壊期」にもそうした状況はあったようですが、それは今ほど顕在化していなかったようです。「ポスト学級崩壊期」になると、年間に大体3回、そうした時期が指摘されるようになりました。それが、次の月です。

6月 11月 2月

私は、学級崩壊が全国的に拡散していった1990年代を小学校の若手教師として過ごしました。その頃のことを思い返すと、確かに学級が不安定になる時期には規則性があり、それの時期が上の時期あたりだったと言われればそうかもしれません。

全国のあちこちの学校の支援をするようになった今、その指摘が妥当かどうかと言われると実は、核心をもって「そうだ」と言えないところもあります。各時期に荒れるクラスはそのときにいきなり荒れるのではなく、もっと以前から荒れていると捉えているからです。

そこで、現場の何人かの小中学校の先生方に、「11月危機」とも呼ばれる現象が、本当にあるのか聞いてみました。そうすると次のようなことが指摘されました。みなさんは、どのように考えますか。

【2】11月危機に関する意見

①学校行事原因説

最初に紹介するのは、教師になったばかりの方です。教職に就いてからまだ11月を経験していないので、自分が子供の時のことを教えてくれました。

自分が中学二年生だった時のことですが、やはり、学校祭(合唱祭)の後にグッとまとまるクラスと崩れるクラスとに二分化された記憶があります。私のクラスは崩れました

次は、30代の小学校の先生と中学校の先生です。

町内に合同の音楽祭があり、うちの学校はそこに向けて全校体制で指導します。陸上指導と手分けをするので、該当学年以外の担任もかなりの時間を指導に割かれます。その裏で、休み時間のないことなどによるストレスからか、教師への反発などが11月から起こっていました。うちの学校では、どこかしらの学年で毎年みられる傾向です(小学校)

私の経験では夏休み明けすぐに体育祭があるのですが、その後に荒れ気味になりました。総合優勝したのですが、勘違いさせてしまったなと思います(中学校)

これらの先生方の発言からわかるのは、危機の時期を11月とは限定してはいませんが、二学期の荒れには行事が絡んでいることです。行事で先生方が忙しくなるからでしょうか。

また、学校行事をきっかけにまとまるクラスと荒れるクラスがあるようです。興味深いのは、体育祭のような勝負事の行事の結果がよくても荒れる場合があることです。普通、勝負に勝ったら雰囲気がよくなりクラスがまとまり、負けたらその逆の現象が起こりそうなものですが、どうやら勝負の結果とその後のクラスのまとまりが食い違う場合もあるようです。

一方で、危機はもっと早くから始まっていると見ている先生もいるようです。

②夏休みのトラブル拡大説

中学校の30代の先生からです。

夏休み中に交友関係が悪いほうに広がり、学級から逸脱する生徒がいます。そこからクラスがほころびます。その生徒に担任がどう接するか、どう介入するか、他の子供たちはじっと見ています。教師の人間性をじっと見ているのです。そこで信頼を失えば、危機的状況となります

続いて小学校の40代の先生。

夏休み中に、仲間外れなどの友達同士のトラブルがあり、それが解決しないまま夏休みが終わって学校が始まる場合があります。しかもそのことに担任が気づかない、知らない場合、二学期にクラスが不安定になりがちです

当然のことながら夏季休業中にも子供たちの現実的な生活は継続していて、よいことも起これば、そうでないことも起こっているわけです。夏季休業中は、個人間や小さなグループ内で起きていたことが、学校が始まると周囲の人間関係を巻き込んで拡大することがあるようです。

しかも、担任の知らないところでそれが起こり、知らず知らずにそれが進行していく。そして、担任が気づくのが、10月や11月になるのかもしれません。

③ストレス説

次の話は、地域性も関係するとは思いますが、みなさんの地域ではいかがでしょうか。小学校の先生からです。

季節柄、外で遊べなくなり、中で過ごすことが増え、休み時間等の過ごし方が変化します。そのためトラブルが生まれ、細かな対処が行き届かないと荒れへ向かうこともあるのかなと思います

私の地元新潟では、10月くらいから天候が悪くなり、外で遊ぶことができなくなります。すると休み時間に室内で過ごす子供たちのトラブルが増えてくるという見方です。しかし、西日本の地域では、冬でもグラウンドで元気に遊ぶ子供たちの姿が見られますから、当てはまらないかもしれません。

ストレスに関しては次のような指摘もあります。猛暑だった今年の夏には話題になったことですね。

夏休みが明けてすぐはとにかく暑い。夏休み中はクーラーのきいたところにいた子が、急にあの蒸し暑い教室や体育館に長時間拘束されるのは、精神的にも肉体的にもかなり負担が大きいと感じます。暑いわりに水泳授業はないですし、学習にもなかなか集中できないですよね。そこを教師が上から叱ったらなおさらきついなあ、と。でも教師側からすると、できるだけ早く授業を進めたい。次から次へと迫る仕事の締め切りや行事などで、なかなか子供たちとの関係をもつ時間が取れないこともあるのではないでしょうか? これは努力や工夫次第でできることだと思いますが私は上手にできていません。

夏季休業明けは、教師も子供もストレスフルのようです。エアコンが完備されている学校の方には想像ができないかもしれませんが、9月の教室、特に3階などは、35度くらいになります。授業ができる環境だとは思えません。

こうした状況下での指導のあり方によって、教師と子供たちの関係がギクシャクしてしまっても不思議はありません。

ここまで挙げた3つの説はいかがでしたか。どれも妥当だとは思いますが、私は次の説に隠された問題をしっかり見据えたほうがいいと考えています。

④潜在的問題の顕在化説

40代の先生です。行事が荒れの理由であるという意見に補足したものです。

実は、行事前からほころびがあるのだけれども(それは大概一学期から始まっているのですが)、行事までは先生にも生徒にもそのほころびが見えていなくて(行事に目が行っているから)行事が終わって、その学級のもっている力がもろに試されるようになると(行事は、学校全体とか学年全体とかいう集団の力が働くので、力のない学級も、何となく引っぱられていくというところがあるように思います)、先生にも生徒にも今までそこにあった問題が目につくようになるというのかなあ・・・ 。

目の前の問題に対処している間は隠されていた懸案事項が、問題解決後に露呈することはよくあることです。

【3】11月危機の正体

先生方が寄せてくれた意見には、共通していることが見られます。荒れは、二学期から始まっているのではなく、一学期からの「矛盾の積み重ね」に起因することです。これがクラスの危機の構造だと考えています。それが顕在化するのが、およそ6月、持ちこたえて11月、そして、とうとうごまかしきれなくなるのが2月なのではないでしょうか。

クラスが荒れる前段に、先生方が忙しくなる時期があります。先生方、ご自身の4月、5月、そして、9月、10月を思い出してみてください。とても多忙な時期ではありませんか?

教師と生徒と課題の関係性

子供たちは行事やストレスそのもので荒れているのではありません。行事やストレスで荒れるのには理由があるのです。布石と言ってもいいと思います。上の右図をご覧ください。これが子供たちが意欲的に何らかの課題に向き合っている状態です。このときは、教師の関心が子供たちに向いています。しかし、教師が忙しくなってきて、やるべきことやらせたいことを優先し始めると、子供たちへの関心が薄れてきます(左図)。そこで教師が強い指導をしようものなら、教師との信頼関係の薄い子から、教師に対する不信感を抱いてしまうことでしょう。恐らく行事で荒れてしまうクラスの先生は、行事を終わらせることやその結果に関心が向いていて、行事の意味やプロセスを子供たちの成長に位置づけていないのかもしれません。

これは、行事に限ったことではありません。研究授業の後に荒れるクラスがあります。本来、研究授業は子供たちを育てるための時間であるはずなのに、先生の関心が、研究授業を終わらせることや参観者に認められることに向いてしまって、子供たちへの関心が薄れ、子供たちの意欲が低下してしまうようなことがあります。

また、責任ある立場に立った実力ある教師が、クラスを荒らすことがあります。それは、諸々の事務仕事が増えて、関心が教室から逸れてしまう場合です。ある先生は、地域の教育研究会の幹部になりました。そのため事務仕事が増え、休憩時間に文書を作ることが多くなったそうです。子供たちとのふれあいの時間は減り、子供たちを叱ることが多くなり、ストレスのたまった子供たちはクラスメイトへのいじめを始めました。

先生は、最初そのいじめが信じられなかったそうです。それまでは先生の言うことをよく聞いていたからです。ご自身は、自分の仕事をただただ一生懸命やっていたわけです。教員組織のために自分の勤務時間のほとんどを使っていたのです。しかし、もっとも大事な子供たちとの時間を犠牲にしていたのです。「○月危機」と呼ばれる状態は、そのときに始まっているのではなく、密かに進行していた矛盾や問題が顕在化することによって引き起こされると考えられます。

生徒もストレスがたまっている
イラスト/奥まほみ

【4】荒れの初期対応策

これまで述べたように、クラスの荒れの重要な要因の一つに、先生方の関心が子供たちから逸れることによって、基本的な信頼関係がゆらぐことが挙げられます。したがって、初期対応策としてもっとも有力なのは、

一人一人への関心の回復を図ることです。

具体的には、一人一人とのコミュニケーション量を確保することです。挨拶をすること、名前を呼ぶこと、視線を合わせること、おしゃべりをすること、こうした日常を前提とした上での、私の拙い取り組みを紹介させていただきます。

私は図工の時間を大切にしていました。いや、これは図工でなくてもいいのです。教師が、子供たち一人一人に向き合い、ほめたり、認めたりすることができる時間であればいいのです。私には図工の時間が最も適していたということです。

ちょうど、10月や11月に文化祭があります。図工の時間は、個別作業の時間です。作品製作を通して、個の子供とたっぷり関わることができます。個別作業中心の学習は、教師を一斉指導から、そして、黒板の前から解放してくれます。関係性が微妙になってしまった子とのいきなりの日常会話は、少しぎこちないものになりがちです。しかし、作品に対する助言という形ならば自然なコミュニケーションができます。

また、個別作業の時間は、子供たちを友人関係から解放してくれます。他の子の目が気になって、教師に素直になれない場合もあります。「個別に話すとよい子なんだけど」という印象の子はいませんか。そうした子供たちと繋がるには、個別作業の時間はもってこの時間と言えます。

ここでは、子供たちの願いを聞きます。「全体をどんな絵にしたいの?」「ここに何を描いたら、○○さんの描きたい世界になるの?」「ここ、どんな色にしたい?」などと尋ね、指導する、教えるというよりも、その子の願いを聞き出し、それを実現するためには何をしたらいいか、一緒に考えます。そして、その子が言ったことに対して、感心したり、感動しながら作品を形にしていくのです。

「そこに、それ描くんだ! おもしろいねえ」
「この線は本気で描いたね、丁寧に描いたことがよくわかるよ」
「ああ、その色いいね、どうやって創ったの?」

こうしたあたたかく短い話を積み重ねます。子供たちには、「一時間に一度は見せにおいで」と言っておきます。もちろん、集中していたために来られない子もいることでしょう。そうしたときは、最後に提出しにきたときに「集中していたね。どれどれ」と見せてもらい、その子の作品のよさを短くコメントします。

どんなに忙しくても、教師は子供たちとの信頼関係を最優先に考えなくてはならないのです。11月危機を心配するくらいなら、明日は子供たちといっぱい笑い、気になる子にはあたたかな一言をかけたらいいと思います。

『小五教育技術』2018年11月号より

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