小4特別活動 学級活動編 「学級活動(2)エ 健康によい食事のとり方」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。10月は、「健康によい食事のとり方」学級活動(2)エの実践例を紹介します。

自分たちが食べている物に関心をもち、健康のためにバランスよく食べることの大切さについて理解し、自分に合った具体的なめあてや方法を決めて実践できるようにする活動を紹介します。

執筆/沖縄県公立小学校教諭・金城由錦子
監修/文部科学省視学官・安部恭子
 沖縄大学教授・黒木義成

年間執筆計画

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4月 学級活動全体 学級活動ってどんな時間なの?
   学級活動(1) ア どうぞよろしくの会をしよう
5月 学級活動(1) ア 学級の合言葉をつくろう
6月 学級活動(1) イ 係を決めよう
7月 学級活動(3) イ ピカピカそうじ大作戦
9月 学級活動(1) ア 学級運動会をしよう
10月 学級活動(2) エ 健康によい食事のとり方
11月 学級活動(2) イ 友達と仲よく
12月 学級活動(1) ア 3年生との交流会をしよう
1月 学級活動(2) ウ SNSの安全な使い方
2月 学級活動(3) ア 5年生に向けて
3月 学級活動(1) ア 自分たちの成長を祝う会をしよう

学級活動(2)について

活動内容(2)「日常の生活や学習への適応及び健康安全」は、指導すべき事項が具体的に学習指導要領に示されており、教師が意図的、計画的に指導する内容です。学級活動(2)の話合いは、教師が中心となって行いますが、事前アンケートなどを活用して、課題の意識化につなげ、子供たちが自分事として捉えられるようにしたり、話し合う際のグループを意図的に編成して、多様な視点で考えられるようにしたりするなど、指導内容に応じて工夫が必要です。そして、みんなで実践することを決めるのではなく、学級みんなで話し合ったことを参考にして、子供一人一人が自己の問題の解決方法などについて意思決定します。

1.題材「健康によい食事のとり方」

学級活動(2)エ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

2.本題材のねらいについて

ねらい 自分たちが食べている物に関心をもち、健康のためにバランスよく食べることの大切さについて理解し、自分に合った具体的なめあてや方法を決めて実践できるようにする。

① 食に関する指導の充実

「食に関する指導」は、子供一人一人の家庭環境が大きく影響します。そこで、家庭とも連携を図りながら取り組んでいくことが望ましいと思われますが、本題材では学校給食を中心に健康によい食事の摂り方について考えさせていきます。毎日食べている給食を題材として活用することは、食べ物を身近に感じて話し合う材料として有効です。また意思決定した後も、給食時間の献立を確認するなどして、日々の実践にもつなげることができます。

② 栄養バランスが考えられた給食

子供たちの中には、給食の際に、自分が好むものだけを食べ、苦手なものをなかなか食べようとしない子供もいます。そこで、食品の種類や食品のもつ体内での働きを学習することで、栄養バランスについて理解し、組み合わせて食べることの大切さについて考えられるようにします。また、毎日食べている給食は栄養を考えてつくられていることや、子供の発達の段階に合わせて必要な栄養をバランスよく組み合わされていることを知り、その大切さに気付くことができるようにすることで、日々の実践につなげます。

3.授業の実際

事前の指導

①事前アンケートの活用
給食に関するアンケート調査を行い、子供たちの実態を把握するとともに、題材についての意識を高めます。

<アンケート例>

②動画や写真の活用
普段の給食の準備中や食事中、片づけなどの場面を動画や写真で撮影し、それぞれの場面で振り返るなど授業で活用し、課題に気付くことができるようにすることも考えられます。
※撮影する内容について事前に十分検討し、残食の様子など、動画や写真に映った子供が友達から批判されたり、揶揄されたりすることがないように十分留意しましょう。

④栄養教諭等とのティームティーチングによる授業計画
栄養教諭や学校栄養職員の専門性を生かして、ティームティーチングによる指導を行い、栄養のバランスを意識して食生活を送ることができるようにしていきます。また、解決方法などの話合いの際に、専門性を生かした助言を行ってもらったり、子供たちから出された解決方法を価値付けてもらったりして、よりよい意思決定につなげ、実践意欲を高めるようにします。ティームティーチングが計画できないときは、栄養教諭などによる、ねらいにせまる話の動画撮影も考えられます。動画を撮る際やゲストティーチャーを招く際は、話していただく内容などについて事前に打合せを行い、子供の実態や発達の段階に即して、内容の重点化を図るようにします。

本時の指導

学級活動(2)は、「つかむ(実態や現状の把握)」「さぐる(原因の追求・必要性の実感)」「見つける(解決方法等の話合い)」「決める(個人目標の意思決定)」などの一連の学習過程に沿って授業を進めることで、子供たちは見通しをもって学習することができます。1時間の学習の流れについて、それぞれの段階で考えることや話し合うことを、あらかじめ板書で明確にしておくとよいでしょう。最終的にどんなことを意思決定すればよいのかを、本時のめあてとして板書するなど、明確に示すことも大切です。

①つかむ(実態や現状の把握)
給食についての事前のアンケート結果を見て、気が付いたことを話し合う。苦手な物でも残さず食べている子供を取り上げ、「苦手でも栄養のために食べている」という子供の声から、栄養のバランスよく食べるためにはどうしたらよいのかという本時のめあてにつなげていきます。

《教師の声かけ例》 ※動画を活用した例

今日は、『健康によい食事のとり方』について、みんなが毎日食べている給食をもとに考えてみたいと思います。これから見せる動画は、みなさんの給食時間の様子を写したものです。あとで気付いたことについて話し合っていきましょう。

好きな物は、残さず食べている人が多いみたいだね。

このメニューは食缶にけっこう残っているね。わたしも、好き嫌いをしないで食べないといけないと分かっているけれど、苦手な物は残してしまうことがあるわ。

ぼくは、苦手な物でも一口は食べるようにしているよ。

★事前アンケートを行って、導入でアンケートの集計結果を示し、気が付いたことを話し合うのも効果的です。提示するだけでなく話し合うことにより、学級全体の課題に加え、自分の課題として捉えることができるようにします。

②さぐる(原因の追求)
「健康によい食事のとり方」とはどういうことなのか、栄養教諭の話を聞くことを通して、健康のためにはバランスよく食べることが大切であることについてさぐっていきます。体の中での働きによって「赤」「黄」「緑」の栄養に分けられることやそれぞれの働き、食べ物の種類について確認します。「赤」や「黄」「緑」それぞれの食べ物が不足したらどうなるのかを子供たちに尋ねながら、バランスよく食べることの大切さを子供たちが実感できるようにしていきます。

※栄養教諭は、発達の段階に合わせて 内容を重点化した資料を用意したり、自身の体験を話したりして、子供たちの興味・関心を高めるようにします。
※1年から3年までに、学級活動(2)エの食育に関わる題材で、すでに「赤」「黄」「緑」の3色の栄養について、子供たちが学んでいる場合は、時間をかけずに簡潔に振り返るようにし、栄養のバランスに重点を置くようにしましょう。

③見つける(解決方法の話合い)
今まで食べられなかった食材を食べられるようになった経験をもつ子供を意図的に指名するなど、いろいろな工夫が考えられるようにします。まず、ペアやグループでバランスよく食べるためにどうしたらよいのか、互いにアドバイスし合いながら話し合います。さらに、学級全体で話し合って、多様な方法や工夫となるようにし、よりよい意思決定へとつなげることができるようにします。また、健康のために4年生で食べたほうがよい一食の量を提示し、必要な量を食べることも望ましいことにも触れることが考えられます。
栄養教諭は、子供から出された方法や工夫について価値付けたり、子供から出なかった工夫を紹介したりします。

《教師の声かけ例》

栄養教諭の○○先生のお話から、バランスよく食べることの大切さが分かりましたね。また、給食には、4年生の一食で必要な量が入っていることも分かりましたね。バランスよく食べるためには、これからどうしたらよいと思いますか。まず、グループで話し合ってみましょう。

残さず食べるようにしたいな。でも苦手なものが出たらどうしよう。

苦手なものから先に食べるのはどう?

バランスよく食べるためには、三角食べをしたらいいって、お兄さんが言っていたよね。

野菜などを作ってくれている農家の方や調理してくれている調理員さんに感謝の気持ちをもって食べると、苦手なものも食べられそうな気がする。

※グループで話し合ったことを発表し合い、バランスよく食べるための方法や工夫を板書します。「鼻をつまんで牛乳で飲み込む」など、あまり望ましくないと思われる方法が出された場合は、「そういう考えもあるね」と認めるだけにとどめるとよいでしょう。
※今まで苦手だったものが食べられるようになった経験のある子供を意図的に指名するなど、いろいろな工夫が出るようにします。

④決める(個人目標の意思決定)
「見つける」の段階で、学級での話合いで出された考えを生かして、一人一人が自分の課題に合った実現可能な目標や内容を意思決定します。「どんなことをどの程度」「どのように」という視点を与えるなど、バランスよく食べるために具体的な目標や方法を決めることができるようにします。
栄養教諭と学級担任で机間指導を行い、意思決定できずに困っている子供がいた場合は、教師が例を示すなど助言するようにします。また、内容によっては具体的な数字を入れて意思決定をすると、事後の実践を振り返りやすくなったり、目標の修正をしやすくなったりします。
何人かの子供に意思決定したことを発表してもらい、自分のめあての修正の参考にしたり、これからの実践への意識を高めたりします。

《教師の声かけ例》

バランスよく食べるために、これから自分が取り組むことを発表してください。

給食で苦手な野菜は、いつも残していたけど、栄養を考えてまずは一口だけでも食べるようにします。

私は今日、栄養教諭の〇〇先生のお話を聞いて今まで赤の食べ物を残してしまうことが多いことが分かったから、これからは健康のために、赤の食べ物を毎日意識して食べたいと思います。

ピーマンのにおいが苦手でついつい減らしてしまっていたけれど、作ってくれた農家の人や調理員さんがぼくたちの健康のことを考えてくれているから、減らさずに食べるようにします。

私は三角食べや好きなものといっしょに食べてみようと思います。

明日から1週間、自分が決めたことに取り組みましょう。

《本時のワークシート例》

ダウンロードはこちら>>

《本時の板書例》

事後の指導

自分が意思決定したことを 継続的に実践できるように、 1 週間程度振り返ることのできるワークシートを活用して取り組みます。実践を終えた事後の活動のまとめとして、振り返ったことを学級全体で確認し、「ふり返りシート」 にまとめて学級活動コーナーに掲示します。給食を食べた後の写真を撮り、ICT端末で提出することで 意識を高めて実践することができるようにするのもよいでしょう。学校での給食ではもちろん、学校以外での家庭での食事も意識できるよう、家庭との連携を図って継続した実践につなげることを目指します。
子供が意思決定したことを自主的、継続的に実践できるように、教師は子供の実践を励ましたり努力を価値付けたりしながら、1週間後などに振り返りを行います。振り返りを生かして目標や実践方法を修正することも考えられます。実践の状況を学級全体で確認したり、学級活動コーナーや各自の掲示スペースに掲示したりします。目標に向かってがんばっている友達の様子を知ることで、実践意欲の維持・向上を図り、互いのよさやがんばりに気付く機会となるようにします。

<振り返り例:ICT端末を使って>

苦手なメニューの時もあったけれど、一口ずつ食べていたら、だんだん苦手じゃなくなりました。毎日、残さず食べられるようになって、自分でもえらいと思いました。

※特別活動指導資料P78~81に掲載されている「バランスのよい食事」の指導案例も参照にしてください(国立教育政策研究所HP参照)

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
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