国語の説明文をポスターや動画で楽しくまとめる – 森村学園初等部・不破花純先生のICT活用実践
2022年9月に掲載した森村学園初等部の不破花純先生の「タブレット端末の強みを活かした国語の授業」。「共有」と「表現」をキーワードにデザインされたさまざまな取り組みは、現場の先生たちがすぐに活用できるアイディアが満載でした。
今回再び不破先生にご登場いただき、CanvaやiMovie/Adobe Premiere Rushなどを使った「作品づくり」を通じて国語の説明文のまとめを行なう実践について詳しく伺います。
不破花純 (ふわ・かすみ) 森村学園初等部 教諭
2018年度より森村学園初等部に着任。ICT機器を活用しながら、子どもも大人も楽しい授業をモットーに実践を行なっている。パナソニックが主催するKWN Japanコンテスト2018では担任したクラスが最優秀作品賞を受賞した。Apple Distinguished Educator class of 2023。
目次
感想文をやめて物語を宣伝する作品作りに挑戦
私の国語の授業では、初発の感想から、まとめの読後感想文まで、子供たちは、たくさんの「書く」活動に取り組みます。ところがある時、物語の単元で、最後にまとめの感想を書こう、と子供たちに声をかけたら、「え〜また〜?!」という反応が返ってきました。
子供たちにしてみれば、単元の途中でたくさん書いてきたのに、まだ書くの? という気持ちだったと思います。私のモットーは、「子供も大人も楽しい授業」です。でも、子供たちが「やらされている」感を持ってしまっては、楽しく学ぶことができません。ではどうしたら楽しくまとめの感想が書けるのか。そこで思いついたのが、「読んだことがない人に、その物語の良さを宣伝する」ことでした。
その実践が、前回ご紹介した4年生の「白いぼうし」を宣伝する作品づくりです。見た人が「白いぼうし」を読みたくなる内容であることだけを条件に、子供たちは紙媒体やiPadを使ったポスター、新聞、動画など、自分が好きな方法で自由に作品を作り、お互いにコメントし合う活動を行ないました。
国語のまとめを感想文でなく「作品」としたことで、子供たちは自分たちが感じ取った物語の良さを楽しみながら表現できました。作文が苦手だけれど絵を描くことが大好きな子供が、見事に物語の美しさや温かさを表現した作品を作り、実はよく読み込めていることに私自身が気づくという経験もしました。
この活動後には、通常通りペーパーテストを行い、読解力を評価しました。ただ、「宣伝活動」はこれまで学習した「文章全体の構成、内容、作者の工夫」などを理解していないと行えないと思いますし、その学びの成果は作品にも現れているので、ルーブリック評価を行うことも十分可能だったと感じています。
学んだことの「活用」と「共有」でまとめの活動
この「白いぼうし」の実践の後、私は説明文でも今までとちがう「まとめ」をやってみたいと考えました。説明文のまとめというと「テスト」というイメージがあったのですが、それをやめて、「教材をきっかけにして学んだことを活用し」、それを「子供同士で共有する」というまとめの活動を行うことにしました。
説明文の「世界にほこる和紙」の単元では、以下の手順で、要約と自分が選んだ伝統工芸品を紹介するポスターづくりを行いました。
- 本文を要約する
- 紹介する伝統工芸品を図書室で調べる
- ポスター1枚にまとめる。
- お互いの作品を見て感想を伝える
まず、教科書の「思いやりのデザイン」を使って要約の仕方を全員で練習した後に、「世界にほこる和紙」の要約に取り組みました。ロイロノートの「ウェビング」と「くま手チャート」の2つの思考ツールを使用して、必要な文を5つに絞り、200文字以内で紙に書く活動をしました。
次に行ったのは、自分が好きな伝統工芸品を選んで、それを紹介するポスターを作る活動です。まず、図書室やインターネットを使って資料を集めます。誰が何の伝統工芸品について書くかという情報は、ロイロノートを使用してみんなで共有し、資料が少ない時など困った際にはお互いに助け合えるようにしておきました。
ポスターには、「工芸品についての説明」「工芸品の良さ」「引用」の3点は必ず入れるようにします。子供たちは「世界にほこる和紙」で学んだ要約の書き方を活用して、説明文を書くことができました。
ポスターはCanvaで作成しましたが、子供たちがCanvaを使うのはこの時が初めてだったので、私がテンプレートを用意しました。ただ、そのテンプレートをアレンジすることは許可していたため、子供たちは自分なりに色を変えたり、見やすくなるように工夫したりしていました。
「白いぼうし」と同じように、この時も鑑賞会を行っています。Canvaで作った作品と、「その工芸品を選んだ理由」「文章を書く時、分かりやすくするために気をつけたこと」「ポスターを見やすくするために気をつけたこと」について書いたノートを展示し、コメント欄を設けて、みんなで感想を書き合いました。
こんなふうに、子供たちは要約する時に工夫したことなどを振り返り、それに対して友達から、「要約が活用できている」「わかりやすい」といったポジティブなコメントをもらっていました。
グループ活動での気づきを生かしてニュース番組を制作
もう少し長い説明文の「ウナギのなぞを追って」の単元では、要約とニュース番組づくりに挑戦しました。手順は以下の通りです。
- 本文の一番重要な部分がどこかを考える
- ニュース原稿をまとめる
- ニュース番組を制作する
- お互いの作品を見て感想を伝える
本文の重要な部分を考える活動では、ウナギの一生に関する調査の流れを年表化したり、調査を説明するために必要なワードは何かを考えたりしました。その年表を使って、4人1組のグループで話し合い、プロット図を完成させました。
グループで話し合うことで、要約が苦手な子供もどこが一番重要か気づくことができ、その後個人で行なったニュース番組制作に生かせたと思います。男女2人ずつの4人グループだと、2人よりも意見が出やすく、活発な話し合いができていました。
ニュース番組の原稿の基本構成については、子供たちに最初に説明しました。まず、1)一番大きな出来事、2)必要な具体的な情報、3)今後の話、の順番にまとめていくこと、そして、ニュースでは事実のみを伝えることです。特に「一番大きな出来事」を把握できていないと、番組制作にスムーズに取り掛かれないので、グループで「一番重要な部分がどこか」を考える活動はとても大切でした。
ニュース動画は一人一人がiMovieもしくはAdobe Premiere Rushで作成しました。授業では3時間使いましたが、家に端末を持ち帰って土日を挟んで実質5日で作ってきた子供たちもいます。実写化したり、イラストを活用したり、ユニークな動画ができあがりました。
作品のいくつかはこちらでご覧いただけます。
ニュース番組はどれも1分から2分と長いので、鑑賞会は行わず、ロイロノートで共有して、お互いに感想を書いたカードを送り合う活動を行いました。
作品の共有で生まれる「他者意識」や「当事者意識」
まとめの感想文を書く代わりに、作品づくりをして、それを共有したことで、いろいろな発見がありました。まず、感想を文章にまとめたり要約したりするのが苦手な子供でも、得意なやり方で自分が理解したことを自由に表現することができます。もちろん、それまでにいろんなツールの利用を経験しておくことが前提ですが、表現方法を選択制にすることで、どの子供も、自分が本来持っている表現力を十分発揮できたのではと感じています。
さらに、みんなで作品を共有するという目的を設定することで、子供たちには、何をどう見せたらよりよく伝わるのかを考える「他者意識」が生まれました。そして、自分の表現の工夫を伝えたいという「当事者意識」も持つようになり、よりこだわって、意欲的に作品づくりに取り組むことができたと思います。
クラスの友達からコメントをもらうとき、子供たちは本当に嬉しそうです。「相手がもらって嬉しいコメントを書こう」という声がけは常にしています。また、少しずつコメントすることに慣れてきたら、「どこが良かったのかより具体的に書こう」ということも伝えます。
ただ、やはりすごい作品、面白い作品ほどコメントが集まりやすいので、「この授業が終わった後に全員が嬉しくなるように考えてコメントしよう」と声がけをしたこともあります。そのときは、子供たちも全体を見渡して、まだあまり皆から見てもらっていない作品を見つけてコメントしたりしていました。
私は、自分自身が「こんな授業を受けたい!」と思えるような授業をしようと日々心がけています。時にはその思いが先走り、失敗する時もあります。しかし、教師のワクワク感がきっと子供たちに伝染していくと信じています。もし今回ご紹介した私の実践を「面白そう!」と思ったら、ぜひ取り組んでみていただけたら嬉しいです。
取材・執筆/石田早苗
教育現場でICT活用を実践している先生や学生たちが、その実践事例やノウハウをプレゼンテーション形式で紹介するYouTubeチャンネル「iTeachers TV 〜教育ICTの実践者たち〜」はこちら → https://www.youtube.com/iteacherstv