小5特別活動 学級活動編「学級活動⑵ウ 大切な目─養護教諭とのTT」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
関連タグ

帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小5特別活動の指導アイデアです。10月は、<「大切な目 ─養護教諭とのTT」学級活動⑵ウ>を扱います。

今回は、子供たち一人一人が自らの学習や生活をよりよくするために、個人で具体的なめあてや行動目標を決めて実践する学級活動⑵の指導です。「目」をテーマにした、養護教諭とのTTを紹介します。

執筆/愛媛県公立小学校教諭・髙橋徳人
監修/文部科学省視学官・安部恭子
  愛媛県公立小学校校長・小笠原陽二

年間執筆計画

年間執筆計画はこちらをクリック

4月 学級活動⑴ 学級会オリエンテーション、5年〇組スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の合言葉をつくろう
6月 学級活動⑴ キャンプファイヤーの出し物を決めよう
7月 学級活動⑶ イ よりよい学校生活をつくる委員会活動
9月 学級活動⑴ 運動会を盛り上げる工夫を考えよう
10月 学級活動⑵ 大切な目 ─養護教諭とのTT
11月 学級活動⑴ ペア学年との交流集会をしよう
12月 学級活動⑴ 〇年〇組オリンピックをしよう
1月 学級活動⑶ 最高学年に向けて
2月 学級活動⑴ 6年生を送る会の企画を考えよう
3月 学級活動⑴ 5年生がんばったね会をしよう

1 学級活動⑵ はどんな時間?

学級活動⑴は、自分たちの学級や学校の生活をよりよくするために、課題を見いだし、解決するために話し合い、集団として合意形成し、学級全員で役割を分担して協力して実践する時間です。それに対して、学級活動⑵は、子供たち一人一人が自らの学習や生活をよりよくするために、個人で具体的なめあてや行動目標を学級での話合いを生かして意思決定して決めて実践する時間です。

2 どんな内容を教えたらいいの?

各学校の年間指導計画に基づいて指導しますが、取り上げる内容は学級の子供たちに共通する問題を取り上げましょう。そして、取り上げた問題への自覚や理解を深める話合いをすることを大切に、一人一人が目標を決めて実践していくことができるようにしましょう。

3 授業はどうやってつくっていけばよいのだろう?(⑵ウ「心身ともに健康で安全な生活態度の形成」の指導例)

◇授業で取り上げる内容を普段から気にしておこう!
年間指導計画を把握しておき、普段から子供たちの課題意識を高める材料を探しておくことが大切です。新聞やインターネットの記事、テレビや教育雑誌などにも効果的な資料となるものがあります。また、校内でも学校だよりや給食だより、スポーツテスト等の結果なども、子供たちの身近な資料となります。
また、養護教諭、司書教諭、栄養教諭などの専門的な知識をもっている先生方と普段からいろいろな話題を共有しておくと、経年の変化や自分が受け持っている学年、学級の生活上の課題などを知ることもできます。
今回は、「大切な目」を題材にした実践を紹介します。

保健だよりに掲載された全校児童の視力検査の結果

事前の指導

⑴ 事前の準備・養護教諭との連携
今回の題材は、「目」をテーマにしていることから、専門的な知識を有する養護教諭と連携して指導計画を作成し、TTの形で授業を行います。
まず、効果的な資料を準備します。養護教諭は子供の健康に関する知識やデータをもっているので、その中から、子供たちの課題意識が高まるものを用意します。さらに、養護教諭を通じて学校医と連携を図ることで、より専門的な立場からの情報を得て、授業に生かすこともできます。
学級担任が「何を問題として捉えるか」「子供たちにどうなってほしいか」など、授業のねらいを明確にしておくことで、よりよい連携や授業実践に結び付きます。事前アンケート(児童や保護者など)についても、養護教諭と連携を図って作成しましょう。

⑵ 授業の構成を考えよう!
いよいよ授業の構成を考えていきます。子供たちが楽しく学びを深めるための工夫を随所にちりばめることが大切ですが、基本的な学習の過程は次のように考えましょう。

授業の導入では、事前アンケート結果など資料の内容や提示の仕方を工夫し、子供たちが自分のこととして課題を捉え、解決しようという意欲を高めるようにします。取り上げた内容について、子供たちの実態や発達の段階に即し、原因や改善の必要性、解決方法などを話し合い、よりよい意思決定につながるようにします。事前に、養護教諭と授業の展開や役割分担について、しっかり話し合っておくことで、スムーズで効果的な授業展開となります。また、資料をどの場面で提示するのか、それはグラフなのか、インタビューなのか、動画なのかなど、思考の流れを想定しながら組み立てていきましょう。

本時の指導

⑴ 授業にチャレンジ!
「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つのステップに分けて授業を紹介していきます。

STEP1  つかむ(課題の把握) 
養護教諭が提供した学校全体の視力の検査のデータと、実施した分の学年の結果とを比較して学校全体で気が付いたことを話し合います。
また、「目は大切だと思いますか?」「目を大切にしていますか?」という事前アンケート結果を提示します。「大切だと思っているけれど大切にしていなかった」というギャップに気付き、課題を自分ごととして捉えることができるようにし、自分の課題に気付くようにします。

STEP2  さぐる(原因の追求)
日頃の生活を振り返り、どのような行動が目を大切にしていないのかを子供たちが自覚することが大切です。その上で、どうして大切にできないのか、原因について話し合うようにします。しかし、なんとなく振り返っても原因となる行動はすぐに子供たちから出てこない場合も多いと思われます。そうした場合は、原因となる行動の例を養護教諭が示すなど、工夫するとよいでしょう。
今回は、学校医から子供たち宛てにお手紙をいただき、視力が低下した際の問題点や低下を防ぐ必要性について、子供たちの意識を高めるようにしました。さらに、「どんな行動が目を大切にしていないと思いますか? 振り返ったり、調べたりしてみてね。」と、子供たちに呼びかけるメッセージをいただくことで、課題解決への意識を高めました。その後、解決方法について1人1台端末を活用して調べる時間を設け、発表し合いました。

STEP3  見つける(解決方法等の話合い)(個人⇒小集団⇒全体)
次に、調べた視力低下の原因となる行動をもとに、どのようにすればよいかを話し合います。今回は「目を大切にする行動」について、最初に個人で考え、次に生活グループで話し合ったあと、学級全体で話し合いました。

(学級担任)
それでは、自分たちのどのような行動が目を大切にすることになるか考えましょう。

意識してなかったけど、ノートを書く時の姿勢をよくしたらいいんじゃないかな。

家で学習するときの明るさに気を付けたほうがいいね。

(養護教諭)
生活アンケートから明らかになった課題も、解決する際の参考にできますね。

ゲームをする時間がつい長くなるから、きちんと時間を決めることが大切じゃないかな。

(養護教諭)
(データを紹介して)このデータからも解決方法の工夫が見つけられそうですね。

海外の小学生のデータを調べてみました。屋外活動を1日2時間している小学生は近視になっている人がとても少なく、逆に屋外活動が1日25分程度の国の人は3分の1近くの人が近視になっている、というデータがあり、先生もびっくりしました。

そうなんだ。外でしっかり遊んだり運動したりすることも大切なんだな。

学級での話合いを通して、自分の課題を解決したいという子供たちの意欲を高めるとともに、専門的な立場から正しい知識を伝えたり助言したりして多様な解決方法となるようにし、子供たち一人一人のよりよい意思決定につなげることが重要です。今回の授業では、養護教諭や学校医から、目の大切さや行動の改善の必要性についての資料等を提示し、学級での話合いに生かしました。

STEP4  決める(個人目標の意思決定)

最後に、学級で話し合ったことを参考にして、実践に向けて、一人一人が自分の課題に合った具体的な目標を立てます。
ワークシートを1人1台端末で配付し、すぐに回収したり、教師が確認したりできるようにすることも考えられます。また、子供たちが継続して実践できるように、振り返りの欄を設けておくことも大切です。
意思決定する際は、子供たちは話し合ったことをすべて実践しようとしたり、高すぎる目標を立てたりすることがあるため、養護教諭との机間指導を通して、子供たち一人一人が自分の課題に合った、実践可能で具体的なめあてや方法を意思決定することができているかを確認し、必要に応じて適切に指導や助言を行います。
学習後に、自分が決めためあてや方法を実践し、課題の解決や改善に生かすことができるようにすることが大切です。

(本時の板書)

事後の指導

子供たちが実践をした後は、自分自身の取組を振り返ることができるようにします。1週間程度実践して、自ら努力する過程を大切にしたか、また、できたことやできなかったことを振り返り、次の課題解決や実践の継続につなげます。
そして、がんばりカードに学級担任がコメントしたり、養護教諭や保護者からもコメントしてもらったりすることで、児童が主体的に生活を改善しようという意欲や継続して実践しようという意欲を高めるようにします。メッセージについては、子供の置かれている状況により、保護者ではなく学級担任や養護教諭からとします。また、授業参観で公開したり、保健だよりや学年だよりなどで保護者への啓発を行ったりすることも効果的です。

構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!

楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
関連タグ

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました