科学クラブで、子どもの自然事象への興味・関心を高めよう 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#32

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
進め! 理科道(ロード)
〜よい理科指導のために〜

みなさんの学校に科学クラブはありますか? 科学クラブは、子どもたちに自然事象の面白さを伝えるよい機会になります。理科の授業では、教えなければならない内容が決まっていますが、科学クラブでは何でもできます。科学クラブは、本気で準備してみると子どもたちも喜びますし、やっている側も面白くなります。今回は、理科の授業との位置づけの違い、科学クラブをする上でのポイントについて述べていきたいと思います。

執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.科学クラブと理科授業の位置づけの違い

学校教育ではクラブの時間が位置づけられており、学校によっては科学クラブを置いているところがあります。科学クラブは、通常の理科の授業と違って、理科の学習指導要領の範囲を気にすることなく、子どもたちの探究心や興味・関心を高める内容を取り扱うことが多いです。

例えば、科学クラブではスライムを作りがよく行われています。これは、理科の学習指導要領とはほぼ関係ありませんが、あの液体と固体の中間のような、ドロドロとした不思議な物体を自分で作ることができるところに魅力があるわけです。作ったことがないので、どうやったらできるのか? 作り方はどうするのか? など、様々な興味が湧きますし、子どもたちの心を惹きつけるエンターテイメント性も非常に高いと思います。

時折、理科の授業への導入のときに、科学クラブで扱われるような科学手品やおもしろ実験を行っている、という事例を見聞きすることがあります。学級のみんなに、自然事象への関心を高めてほしいと思われてのことでしょう。しかし理科の授業は、学習指導要領に従って進めるべきものですから、あまり授業内容と関係ないものに多く時間を割くことは好ましくありません。まずは、学習内容をしっかりと学べるように時間を割くことが大切だと思います。

そしてぜひ、理科クラブで扱うような内容については、学級活動の時間などを活用してください。

2.科学クラブで子どもの興味・関心を高める

科学クラブで子どもの興味・関心を高めるには、いくつかの工夫が必要だと思います。以下、私の経験も含めていくつかのポイントをご紹介します。

⑴ 予算を確保して充実した内容を行う

私の場合は、学校長の許可を得て、保護者に対し1年間の材料費として1人500円を徴収しました。クラブ活動で使う材料は学校にないことがほとんどですし、受益者負担が原則です。
何より、自分たちのやりたいことを、気兼ねなくできるというメリットがあります。
もちろん、保護者に対して、事前に材料費徴収の説明をするお手紙を出し、クラブ活動の最終回には会計報告も出しました(使い切ると返金がないので楽です)。

年間のスケジュールから、
◯個人で必要な材料を買う回(タレビン【後述。浮沈子で使用】や磁石など、人数分で材料を揃える必要がある実験)
◯全体でまとめて材料を買う回(重曹や粘土など、一定量の材料を小分けにして使う実験)
を考えましょう。
後者の方が安くつきますので、組み合わせをうまく考えると、一人あたり年額500円の徴収であっても、お釣りが来るくらいの運用ができます。

⑵ 会員カードで所属感、特別感を演出

クラブの1回目は、今後やりたい内容を話し合うことだけでなく、一人ずつ顔写真を撮って、顔写真付きの会員カードを作ります。載せる内容は、写真、名前、クラスくらいでいいと思いますが、結構しっかりとした見た目のカードを作ります。
私の場合は、カードにラミネート加工も行い、「クラブのときは、カードを見せないと理科室に入れないんだよ!」くらいのことを言いながら、特別な仲間意識を持たせ、カードを大切にして、クラブの時間が楽しみになるような演出をしました。

⑶ 鉄板の内容は先生から、一部の内容を子どもたちに選んでもらう

内容は、費用面のこともありますから丁寧に考えます。特に、何回やってもウケる「鉄板の」内容も盛り込むことが大切です。私の体験上、6割を先生から出す鉄板の内容。残りの4割を子どもに「選択」させる内容にするのがバランスが良いです。

実験の内容決めは、クラブ活動の1回目に効率よく決めましょう。2回目以降からは早速実験に着手していきたいからです。そのため、あらかじめ先生が費用面や内容面を考えて子どもたちに提示することになります。
私が鉄板と思っている実験を、以下に一部ご紹介します。

スライム(スーパーボール)
洗濯のりとホウ砂があれば作れるシンプルさ。作成時間も短く、遊ぶ時間も充分確保できます。持ち帰りOKにする場合は、ビニール袋などの入れ物や、扱い方の注意をする必要があります。(汚れては困るところで出して遊ばない、小さい子の誤食に注意する、クラブ後の教室や帰り道で遊ばない、など)

浮沈子(ふちんし)
丈夫なペットボトル(炭酸飲料用など硬いもの)の中に水を満たし、口のところに重りとして小さなナットをつけたタレビン(弁当用の魚の形をした醤油入れ)を入れます。ペットボトルのフタを閉め、両手でペットボトルの左右を押すと、ボトル内の水圧が高まってタレビンが沈み、手を放せば水圧が低くなってタレビンが浮きます。タレビンの浮き沈みを自由にコントロールできる楽しいおもちゃです。
柔らかいペットボトルは不向きなので、事前に家庭からペットボトルを持参させ、材質を確認しておきましょう。

ドライアイスでジュースづくり・ドライアイスロケット
ドライアイスが購入できる学校は限られますが、購入できるならば2~3キロ購入します。ドライアイスジュースは、厚手のビニール袋にコップ半分くらいの水を入れ、そこにストロベリーなどの香料を2~3滴、適量のグラニュー糖とクエン酸、そしてドライアイスのかけらを入れます。ドライアイスの二酸化炭素が水に溶け、炭酸ジュースができます。
ドライアイスロケットは、フィルムカメラ用のフィルムケース(現在は小物入れなどとして販売されています)にドライアイスのかけらと少しの水を入れてふたを閉め、フィルムケースを飛ばします。

安全面配慮のお願い
★ドライアイスの温度は、およそ-80℃と非常に低温です。素手で触ると低温やけどを起こすので、取り扱いに注意しましょう。またドライアイスは水に入れることで、一度に大量の二酸化炭素を発生させます。密閉した袋が破れたり破裂したりして、思わぬ事故やケガにつながることがあります。子どもたちと実験する前に、まず先生の方で予備実験を行うなどして、安全面に充分ご配慮ください。

スーパー土団子
身近な場所を掘って粘土質の土を採り、丸めて球を作る一般的な土団子と異なり、市販の信楽粘土を購入して作るのがスーパー土団子です。異物が入っておらず、また粘土のキメが非常に細かいため、まさに陶器のような綺麗な泥団子を作ることが出来ます。ブロック状で販売されている信楽粘土を団子の大きさに分けて配り、ラップや缶のフタなど、汚れても問題ない平滑なものの上で、丸めて磨きます。磨いた光り具合で、先生が等級をつけてあげたりしましょう。

イラスト/難波孝

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<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

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