ミニミニ劇の力!~楽しく学び、達成感を味わう~

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神奈川県公立小学校教諭

長沼久美子

1年生は、表現することが大好きです。音読したり、歌を歌ったりすると、自然と笑顔があふれだします。表現活動には、子どもたちを夢中にさせる魅力がつまっているのでしょう。ミニミニ劇は、そんな子どもたちの年頃にピッタリの学習です。歌って、踊って、役者になりきって、表現活動に取り組んでみましょう。

ミニミニ劇は、歌に合わせて言葉(せりふ)を言ったり、体を動かしたり、五感を通して物語の世界を体感できます。そのため、物語の世界を深く味わうことができます。また、その創作プロセスでは、仲間との協力を学ぶこともできます。何より、学習が楽しい! そこで、今回は、国語科で学ぶ「おおきなかぶ」を題材にした、ミニミニ劇を紹介します。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子

撮影/浅原孝子

TPO(時間・場所・状況)を考えよう

劇の発表時間を考えてみましょう。役の出入りを含めて10分程度で設計できると、何かと便利なサイズです。1年生でも全体の流れを見通すことができ、休み時間に子どもたちが自主的に練習をすることもできます。

場所にも目を向けてみましょう。教室ですか、多目的スペースですか、体育館のステージ? 同時に、授業参観なのか、学年集会なのか、または、休み時間に全校に向けて発表するのかなどのシチュエーションも、考えてみてください。

・授業参観のはじめ10分、保護者の方に見てもらう。
・昼休みに体育館のステージで発表する。
・教室で、他クラスや他学年の子どもたちに見てもらう。

などが考えられます。

場面・グループを設定しましょう

クラス全員が参加できる劇のレイアウトを考えてみましょう。例えば、おじいさん役を3人、おばあさん役を3人など、配役の人数を増やして、全員に役を振り分けける方法があります。

このほか、グループごとに役割を分担する方法もあります。「おおきなかぶ」を次のように5つの場面に分けて、場面ごとにグループを振り分けるのです。

① おおきなかぶが大きく育って、おじいさんがひっぱっても抜けない場面
② おばあさんが手伝っても、まごが手伝ってもぬけない場面
③ 犬が手伝っても、抜けない場面
④ ねこが手伝っても、抜けない場面
⑤ ねずみが手伝って、かぶが抜けて、大喜びをする場面

30人クラスだったら、6人グループが5つ。6人で一つの場面を担当することになります。このそれぞれのグループで、台本を作ったり、練習に取り組んだりしながら、ミニミニ劇を創作します。

台本を作る

教科書を使って、台本を作ってみましょう。拡大コピーした教科書を、場面ごとにグループに配付します。まず、挿絵のおじいさんやおばあさんに、吹き出しを書いて、話していることや考えていることを想像させます。次に、地の文、会話文、そして、吹き出しに書いた言葉に番号をつけていきます。この番号が、せりふの順番になります。最後に、役割を割り振ったら終わりです。

人数に応じて、おじいさんの役を複数にしたり、地の文を読むナレーターを増やしたりしながら、番号を調整してみてください。吹き出しを使わずに、本文をそのまま台本にした劇も十分楽しいものになりますが、吹き出しを使うことにより、オリジナルの台本ができあがります。これはまた、とても盛り上がります。

子どもらしい発想で、楽しいせりふが生まれてくると、しめたものです。ぜひ、やってみてください。音楽の教材にある「おおきなかぶ」の歌をミニミニ劇の途中で歌ってみる方法もポピュラーで楽しいです。

練習をする

内容は、教科で学習済み。せりふは自分たちで分担まで決めている。そのため、ある程度まで、子どもたち自身で練習を進めることができます。教師の仕事は、登場の仕方や退場の仕方、立ち位置、声の大きさなどをサポートしていけば十分です。

1つのグループが2分程度で終わる内容なので、休み時間などに、教師が見て、順番に指導することも可能です。今日の中休みは1グループ、昼休みは2グループ、明日の中休みは3グループ、昼休みは4グループ、5グループなどです。2~3日あれば、目が行き届きます。授業参観に間に合わせたい場合でも、安心です。

発表当日の教師の仕事は?

場の設定や観客の誘導は、担任の役割に位置づけてみましょう。舞台と客席を区別できるように、椅子を置いたり、床に座る場合でも、ビニルテープを貼ったりして、スペースを仕切って、ステージを作ります。一年生は、つい友達を見ながら演技をしてしまうので、ステージを真ん中にして、360度囲むように客席を準備するのも一つのアイディアです。

発表当日の様子

5分のミニミニ劇でも、当日の子どもたちは緊張しています。お客さんを誘導したり、「どうぞ」と気づかったりする余裕は、1年生に難しいところがあります。担任は、子どもたちがのびのび自己表現できるように、発表当日の学習環境に目を向けてみてください。

【第1場面(6人)】
ナレーター 2人:①③
おじいさん 4人:②④⑤⑥

おおきなかぶの第1場面
クリックすると別ウィンドウで開きます

「おおきいかぶができました」←かぶを用意する

など、動作についての説明を書き加えてカスタマイズしてみましょう。

【第3場面(6人)】
ナレーター 2人
おじいさん 1人
おばあさん 1人
まご    1人
いぬ    1人

おおきなかぶの第3場面
クリックすると別ウィンドウで開きます。

台本を用意するかどうかについては、子どもの実態に合わせて考えてください。上記のように、教科書を台本にしてしまう方法もありますが、パソコンで清書したものを配っても、劇の内容は、まったく変わりません。実態に合わせて選んでください。もし、吹き出しの言葉を考えることが厳しいようならば、本文に番号を割り振って台本を作っても、十分に見ごたえのあるミニミニ劇になります。

練習時間の確保は、なかなかできない場合もあります。でも、5分あれば、せりふの確認ができます。20分休みを利用すれば、立ち位置や小道具の準備などにも取り組むことができます。

1年生は、まだまだ自分たちで考えて、時間を自由に使えません。先生が積極的に声をかけて、練習する場を設けてみてください。そして、練習する1年生の姿をたくさんほめてあげてください。

イラスト/川野郁代

『小一教育技術』2016年10月号より

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