小3国語「ちいちゃんのかげおくり」京女式板書の技術

今回の教材は、物語文の「ちいちゃんのかげおくり」です。この単元の学習活動は、「作品から感じたことを文章にまとめ、友達と読み合い、自分の感じ方と似ているところや違うところを伝え合う」ということです。3時間目は、2つの場面を比べながら読むという学習活動です。比べる学習の板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子
教材名 「ちいちゃんのかげおくり」(光村図書)
目次
単元の計画(全10時間)
1・2 学習の見通しをもち、学習計画を立てる。
3 第一場面と第四場面の「かげおくり」の様子を比べる。
4・5 2つの「かげおくり」の間の出来事や「ちいちゃん」の状況や気持ちについて考える。
6 第四場面の「かげおくり」について考える。
7 第五場面があるのとないのとではどう違うか、考える。
8 「ちいちゃんのかげおくり」を読んで、感じたことを理由とともに文章にまとめる。
9 友達と読み合い、自分の感じ方と似ているところや違うところを伝え合う。
10 学習の振り返りをする。
板書の基本
〇教材「ちいちゃんのかげおくり」(あまん きみこ)は次の場面から始まります。
「かげおくり」って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。
出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれて、先祖のはかまいりに行きました。その帰り道、青い空を見上げたお父さんが、 つぶやきました。
「かげおくりのよくできそうな空だなあ。」
「えっ、かげおくり。」
と、お兄ちゃんがきき返しました。
「かげおくりって、なあに。」
と、ちいちゃんもたずねました。
(教科書の文)
この後、「夏のはじめのある夜」 お母さんやお兄ちゃんとはぐれたちいちゃんが、1人ぼっちになり、防空壕で過ごします。そして、第四場面の終わりは、次のようになります。
ちいちゃんが空を見上げると、青い空に、くっきりと白いかげが四つ。(中略)
「きっと、ここ、空の上よ。」
と、ちいちゃんは思いました。
「ああ、あたし、おなかがすいて軽くなったから、ういたのね。」
そのとき、向こうから、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、わらいながら歩いてくるのが見えました。
「なあんだ。みんな、こんな所にいたから、来なかったのね。」
ちいちゃんは、きらきらわらいだしました。わらいながら、花ばたけの中を走りだしました。
夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子の命が、空にきえました。
(教科書の文)
「場面を比べながら読む」という学習活動として、上の2つの場面を選んだのは、正しく読む、豊かに読むという力を育てる要因が多いという理由からです。
①登場人物は同じです。しかし、場所や様子に違いがあり、比べるという学習活動を促すうえで、視点がはっきりしていて分かりやすいこと。
②2つ場面を象徴する「かげおくり」の様子を表現した叙述や「青い空」の象徴的な語句の意味を考える学習内容が適切であること。
③物語の「はじめ」と「山場」という場面を設定することにより、全体を見通すことができるとともに、 中心人物の変化を理解するうえで、学習活動に広がりが期待できること。
④物語を学習する過程で、想像力を育てる豊かな語彙に出合わせることができること。
例 ・お父さんが、 つぶやきました。
・お兄ちゃんがきき返しました。
・と、ちいちゃんもたずねました。
・きらきらわらいながら、花ばたけの中を走りだしました。
・小さな女の子の命が、空にきえました。
〇板書で工夫したことは、「比べる」ことを理解するために、第一場面と第四場面を分かりやすくしたことです。具体的には、黒板を左右に2分し、枠で囲みました。
また、2つの場面で、共通していることと違うことを叙述から読み取り、場面の様子を想像し、考える手がかりを板書したことです。
さらに、「つぶやきました」「きき返しました」「たずねました」のように、語句を手がかりにして語彙への関心を板書で広げようと意図したことです。