不登校 【わかる!教育ニュース#30】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第30回のテーマは「不登校」です。
目次
不登校の子への支援について、学校側の支援と子供や保護者の考えがかみ合わず
「支援」とはむずかしいものです。相手の望みと微妙にずれたことをしてしまうことも、あるでしょう。総務省が行った不登校の子への支援を巡る調査でも、学校側の支援と子供や保護者の考えが、かみ合っていない実態が窺えました。
調査は各省庁が行う事業の効果や必要性などをチェックし、改善に生かす政策評価の一環(参照データ)。小中学校28校などへの聞き取り、不登校を経験した子供70人や保護者88人へのアンケートを行うと、様々なギャップが浮き彫りになりました。
まず、89.3%の学校が「教育支援センター」など公的機関の支援について情報提供しているものの、民間の不登校特例校やフリースクールの情報を伝えているのは、25.0%。一方、保護者は9割弱が公的機関の情報の必要性を認めているものの、民間の情報も欲しいという答えも73.9%に上り、ニーズに沿った情報提供がされていない面もあると分かりました。
多くの学校が相談体制を整えていますが、子供の51.4%、保護者の35.2%が「相談しづらい」と答えました。理由を尋ねると、子供からは「話しても信じてもらえない」「否定され、ちゃんと聞いてくれない」、保護者には「具体的な支援が聞けず、傷付けられる発言があった」「学校に来させようとするばかりで、期待する回答を得られない」と、不信感のにじむ訴えも出ました。
不登校支援が政策評価の対象になったのは、不登校が過去最多に上ったため
2016年、不登校の子などに多様な学びの場を提供するとうたった「教育機会確保法」が成立。政府は翌17年、同法を踏まえた基本指針を定め、「登校という結果のみを目標にせず、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的自立を目指す」と唱えました。
今回、不登校支援が政策評価の対象になったのは、21年度に小中学生の不登校が過去最多に上ったのが要因。指針に沿った支援が届いているのかを、確かめるためです。
けれど、「登校のみを目標にしない」という指針にさえ、学校と保護者の認識は違っていました。学校の78.6%が指針について保護者に伝えたというものの、「知らない」という保護者は55.7%に上ったのです。
数々のギャップに、総務省は相手側の要望をていねいに把握する必要性を、文部科学省に伝えました。永岡桂子文科相も7月28日の会見で「学校外の施設について、分かりやすい情報提供をするよう教委に周知する」と表明しています。
ただ、学校への聞き取りでは、民間支援の情報提供に対し、特定の施設を紹介するのは公平性から問題がある、学校が支援を放棄したと思われるなど、ためらいも見られます。多面的な情報は必要ですが、伝えればよいというものでもないでしょう。教員だけに全てを背負い込ませず、スクールカウンセラーなど様々な専門人材の目線も絡めながら、その子にとって最良の支援を届ける態勢が求められます。
【わかる! 教育ニュース】次回は、8月30日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子