【相談募集中】復職に向けて今、準備しておくことが知りたい

特集
先生のための個別相談サービス【みん教相談室】相談&回答一覧

神奈川県公立学校 教頭

鈴木夏來

復職中の40代男性教諭から「みん教相談室」に相談が届きました。復職に向けてどんな準備をすればよいかとの相談内容です。これに回答したのは教育委員会勤務の経験があり、教職員の育成や学校支援に長く携わってこられた神奈川県公立学校教頭・鈴木夏來先生。復職に向けた心構えや、教育現場の現状をふまえた今後の選択肢などを挙げてアドバイスしました。その内容をシェアします。

写真AC

Q.復職に向けてどんな準備をしておけばいいでしょうか?

暴れる叫ぶ逃走するなど問題を起こす児童、責任をこちらに押し付ける保護者、この件で学年主任から謝罪しろと言われ寄り添ってもらえないなど、一方的な責任追及をされ、人手不足もあって疲弊して休職しています。復職に向けて市教委や都道府県教委から面談があるのですが、どんなことを聞かれるのか、模擬授業はあるのかなど、教えていただけたらと思います。

(登山家先生・40代男性・高学年担任)

A.心の健康のためにも、働き方には選択肢があるということを忘れずに

登山家先生、「みん教相談室」にご相談いただき、ありがとうございます。相談していただけたことに、まずは感謝申し上げます。

登山家先生は当時、高学年の担任をしていらっしゃったのでしょうか。暴れる児童を制止したり、叫ぶ児童を静かにさせたり、逃走する児童を追いかけたりすること。これらは誰が対応しても過酷な労働です。

問題行動は「初期消火」では間に合わず、勢いや速度がついた状態なのでしょう。こうなると、登山家先生がどれだけ実績豊富であっても、個人の力ではどうしようもないと思います。

  • 保護者の感情もたいへん高ぶっていますから、そう簡単に冷静にはなれない
  • 謝罪したからと言って、何かが劇的に変わることはない
  • 学年・学校の英知を結集しようが、どうにもできないことだってある

そして、そのことを誰よりも分かっているのは、40代で脂がのった登山家先生ではないでしょうか。

当たり前の話ですが、ご自身を責める必要はまったくありません。ああすればよかった、こうすればよかったと責任を感じる毎日かもしれませんが、今は心身をしっかり休めることに集中しましょう。

復職に向けた市教委などの面談について

一般論ですが、復職の面接については異動の際に行う流れと同じです。

・同じ学校に復職の場合…勤務先の校長との面接

・同じ自治体の学校に復職…市町村立教育委員会の当該課長の面接、配属先の校長との面接

・異なる自治体の学校に復職…所管する教育事務所(都道府県教委)の面接、異動先の市町村教育委員会の当該課長の面接、配属先の校長との面接

面接の具体部分については申し訳ないのですが立場上、お答えができません。また、私の知る限りでは復職で模擬授業を行うケースは聞いたことがありません。

学校現場は、どこも人手不足です。これはどの自治体であっても、また小学校・中学校・高等学校・特別支援学校どの業種であろうと、大きな変わりはありません。

復帰1年目こそ校務分掌削減・担任以外などで配慮してもらえそうです。しかし大丈夫そうだ(実際はそんなことないのですが…)と分かると、2年目以降はまた同じように、復帰前と同等の激務を任されることになるでしょう。しかも40代ということですから、業務と責任は増えていく一方かと思います。

では今後、登山家先生はどうすれば良いか。いくつか選択肢をお示しします。

選択肢1.中学校、高等学校、特別支援学校への校種異動を視野に入れる

もちろんラクな校種などなく、それぞれに異なる大変さがあります。しかし、職員数や勤務時間帯、持ち時間や年休の取りやすさが異なります。

これはあくまでも一般論ですが、小学校と異なり他の校種は、児童・生徒が荒れているからといって、学級担任が責められるような文化はあまりありません。その分、学年主任(学年リーダー)や生徒指導担当主任(生担)が学級担任をサポートしてくれるかと思います。

中・高・特は、学区が広く、職員数も多いのが特徴です。職員が多いと、同じ価値観や同じ悩みを持つ人が増えるので、相談にのったり話を聞いたりしてくれる人が増えるかもしれません。

他校種の免許がなくとも、他校種で働く様々な方法があります。たとえば小学校免許のみだったとしても、中学校で総合や道徳を教えることはできますし、臨時免許で教科を教えることもできます。特別支援学校の小学部で働くことができます。

教科等の免許が必要であれば、オンラインで取得する方法もあります。どの自治体・どの校種も喉から手が出るほど教員が足りていないのです。免許は取りやすくし、免許がなければないで働いてもらう方法を自治体は考えています。

ただし、市町村立から県立へ異動する場合、再度市町村立へ戻ることは制限される場合があります。不可逆性が強いといえます。事前に調べておくとよいでしょう。

選択肢2.小学校に戻ることを前提に、転職・退職を視野に入れる

通級指導教室の教員、相談室の相談員、スクールカウンセラー、学習塾や予備校の教師など、小学校教員のスキルを活かしてできる職種があります。職種を変えるのは、なかなか勇気が要ることですが、それもひとつの方法です。

転職後、やはり小学校に戻りたい場合は再雇用制度(自治体にもよるが、退職後3~5年以内であれば、採用試験免除で翌年度に採用される仕組みのこと)を利用するのはいかがでしょうか。

身分や収入の安定している教育公務員という職業は、いったん退職しても元に戻ることができます。やり直しが効くので、不可逆性は少ないといえます。

再雇用制度については、自治体に問い合わせたり、自分で調べたりしてみましょう。模擬授業や小論文は、自治体によって、設ける場合もあります。経験豊富な登山家先生ならば、そこはまったく問題ないでしょう。

選択肢3.目標を低く掲げる自分であろうとする

小学校教員として再び現場に立とうとする場合の選択肢です。学校の働き方改革は、道半ば。数年やそこらで学校現場の労働環境が劇的に変わるということは、おそらくないでしょう。環境が変わらず、小学校教員一択ならば、自分自身を変えるよりほかありません。

とはいえ自分自身を変えるなんて、そう簡単にできるものではないと思います。そこでおススメなのが、「目標を低く」掲げることです。

低い目標(例)

  • 「自分が給食を食べる時間を確保する」(食べる時間がないから食べない、はNG。)
  • 「自分がトイレに行く時間を確保する」(子供に我慢するなと言いつつ自分は我慢、はダメ)
  • 「休憩時間を1日10分でも確保する」(机に1分伏せるだけでも楽になります)
  • 「学級通信は出さない。出すなら最初と最後の年2回だけ」(周囲の発行数と争わない)

高い目標を設定すると、それができない自分を責めてしまいがちです。そうならないためのアイデアです。ご検討ください。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
先生のための個別相談サービス【みん教相談室】相談&回答一覧

教師の働き方の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました