夏休み前に指導したい「着衣泳」 子供自身が自分の命を守る!
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夏休みに入ると、毎年、水難事故のニュースが流れます。水難事故に遭ったときに子供自身が自分の命を守る知識があれば、もっと助かる命があるはずです。そのため、夏休み前に「着衣泳」を子供たちに指導しておいてはいかがでしょう。東京都公立小学校で行った「着衣泳」の授業実践を、写真と併せて紹介します。
授業者/東京都公立小学校指導教諭・岩田純一
目次
1 プールサイドに集合、バディ確認
●水泳の授業の通り、水着(水泳帽子はかぶる)の状態で、衣服を持ってプールサイドに集合。荷物を定位置に置きます。
●ペットボトルの記名、荷物忘れなど、事前確認を行います。
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●整列し、挨拶後、バディ確認。その後、準備運動をして、シャワーを浴び、体をふいてから、衣服を着ます。
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2 着衣泳の目的と安全指導を徹底する
●水の中に衣服を着たまま入ると、動きづらいこと、泳ぎが得意な人でも溺れてしまうことがあることを子供たちに伝えます。
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<子供たちに笛の合図を確認>
笛を2回吹く:プールから出る。
笛を3回吹く:教師が話をする。
3 プールに入水する(1回目)
●1回目、プールに入ります(子供たちを2回に分ける)。子供たちは、衣服のまま水の中に入る感覚や、動きづらさを体感します。
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衣服を着て水の中に入った感覚はどうだった?
重かった。
服が張り付いて気持ち悪かった。
泳ぎづらかった。
体力を使う。
●水の中の感覚が分かったところで、プールを横に往復して泳ぎます。子供たちは半分ずつ、2回に分けて行います。
泳ぎにくさを感じてみて。自分の得意な泳ぎで泳いでみましょう。
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4 水難事故に遭いそうなときどうするか
●夏休みなどに川や海に遊びに行き、不意に水の中に自分が入ってしまったとき、水の中に入ってしまった友達を発見したとき、溺れている人を助けるとき、様々なケースをT 1とT2で実演します。命を守るために避けたい行動を子供たちと考えたり、正しい知識を伝えたりします。
不意に水の中に自分が入ってしまったとき、泳ぐのはよい選択でしょうか? 衣服を着て泳ぐのは、水着だけのときより体力を奪います。キーワードは「浮いて待つ」。水の中で助かるためには、助けがくるまで、浮いて待ちます。命を守るには「浮く力」が大切です。
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泳いで助けに行くことは、なぜ正しくないと思いますか?
溺れている人はパニックになっているから、助けに行った人の動きを止めて、2人とも溺れてしまうかもしれないから。
では、どうしたらよいでしょうか。
助けを呼びに行く。
浮くものを渡す。
119番(救急車)
110番(警察)
118番(海上保安庁)
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5 プールに入水する(2回目)
●2回目、プールに入ります(子供たちを2回に分ける)。子供たちは、水の中で浮くような姿勢をとります。友達(バディ)にペットボトル(浮くグッズ)を投げ渡し、助ける予行演習をします。
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2分間、浮いて待つようにしましょう。用意、スタート! 体の力を抜いて、ペットボトルを抱えます。
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はい、終了。2分間浮くことができて、「私は2分間浮いていることができた」と自信がもてるよ。
6 浮くための道具を活用しよう
●ペットボトルのほか、浮くための身近な道具を使って、教師が浮く実演をします。
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7 プールに入水する(3回目)
●3回目は、全員、プールに入ります。ペットボトル、ビニール袋、お菓子の袋入りのリュックサック、自分の衣服などで浮く体験をします。
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浮いているところの動画はこちら↓
8 バディ確認、整理運動、シャワー、挨拶
●始まりと同じように、バディ確認、整理運動、シャワー、挨拶して授業が終わります。
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「着衣泳」の授業は、1単位時間を3回に分けて構成しています。1回目は普段の水泳との違いを感じることです。泳ぎに自信がある子は「泳げばよい」と思うでしょうが、衣服を着たまま水に入ると重くて、泳ぎにくいのです。それを子供が体感します。2回目は浮くことを中心にします。ペットボトルが浮く道具になることを知り、ペットボトルで浮く感覚を試します。そして3回目は、ペットボトル以外にも、ボールやお菓子を入れたリュックサックなど、身近なもので浮く道具があることを知り、それらで浮く感覚を試します。
「着衣泳」の授業の目的は、泳ぐことではなく、「浮くこと」です。水難事故に遭いそうになったときに命を守るにはどうするのがよいかという学習です。子供自身が不意に水の中に入ってしまったときには、「浮いて待つ」ことが重要だということを分かるようにします。また、友達が溺れそうになったときには、救助のために水の中に入らず、浮く道具になるものを投げて、浮いて待つことを伝え、助けを呼びに行くことが大切だということを学びます。
安全対策としては、いきなり泳がせないようにします。まず、水の中に入って、浸かったり、歩いたりして、衣服を着た感覚をなじませてから、泳ぐようにします。いつもの水泳の授業とは異なりますので、次にどのような目的でどのようなことをするのかということを明確に説明してから実践するのが大事です。本時の授業では、教師の実演を伴った説明をしてから子供たちの実践を入れました。また、教師はプールサイドに2人、プールの中に2人の4人の監視体制で行いました。安全対策を徹底して行うことが重要です。
本時は高学年の授業だったので、衣服のズボンを使って浮くところまで学習しましたが、中学年はペットボトルやリュックなどの道具を使って浮く学習になります。また、低学年では浮くことができない子供がいるため、着衣泳の授業では、衣服を着て、浅いプールで水の中に入る感覚を知ることの学習になります。
取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗