小1特別活動 学級活動編「ワクワク運動会~運動会に向けてがんばることを決めよう~」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小1特別活動の指導アイデアです。9月は、学級活動(3)ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成「ワクワク運動会~運動会に向けてがんばることを決めよう~」を紹介します。
執筆/熊本県公立小学校教諭・江野協子
監修/文部科学省視学官・安部恭子
尚絅大学生活科学部教授・平野修
目次
年間執筆計画
04月 あかるく、げんきなあいさつ
05月 学級会オリエンテーション 〜はじめよう!がっきゅうかい〜
06月 じょうずなはのみがきかた ~養護教諭とのTT~
07月 めあてを⽴てて楽しい夏休み
09月 ワクワク運動会~運動会に向けてがんばることを決めよう~
10月 初めての係活動~当番活動から係活動へステップアップ!~
11月 あったか⾔葉でニコニコ⼤作戦
12月 かぜに負けない元気な体 〜上⼿な⼿洗いをしよう~
01月 好き嫌いをなくして楽しい給⾷
02月 もうすぐ2年生
03月 新1年生に「〇〇小学校の楽しいことを伝える会」を開こう
初めての運動会に向けて
1年生にとって小学校生活初めての運動会。子供たちの中には、就学前に運動会を経験している子供もいれば、初めて経験する子供もいると思われます。子供たちにとって、運動会は、みんなで力を合わせることの楽しさや学級での一体感を感じることのできる学校行事です。なかには運動を苦手としている子供もいますから、当日に向けて、一人一人の子供が自分に合っためあてを立てて、運動会の練習に取り組むことができるようにします。
※本題材は、小学校生活で初めての運動会になる1年生ならではの題材になります。学級活動の時間数は限られていますから、毎学年、運動会に向けてめあてを立てることを(3)アの題材として設定することのないよう、年間指導計画を立てる際には十分留意しましょう。
本時の内容
本時の題材である「ワクワク運動会」は、小学校で迎える初めての運動会を楽しく充実したものにすることをねらいとしています。これまでの運動会の様子を見たり、おうちの人が楽しみにしていることを知ったりすることで、運動会で自分が頑張ることを目標に立て、練習に取り組んでいくという学級活動(3)の指導内容になります。
学級活動(3)では、「一人一人のキャリア形成と自己実現」に関わる題材を取り上げ、一人一人が「なりたい姿」に向けた目標を決め、その実現に向けて取り組む活動です。本題材は、(3)のア「現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」に関わる題材です。小学校生活初めての運動会をワクワクした気持ちで迎えるために、運動会でめざす自分の姿に近づくための目標をもつことで、より当日を楽しみにし、練習に主体的に取り組むようにしたいものです。
この記事では、国立教育政策研究所が作成した小学校「特別活動指導資料」を参考に、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の流れで行う指導について紹介していきます。
よりよい意思決定に向けた本時の学習過程
【つかむ】…課題の把握
子供たちへのアンケート結果と昨年度の運動会の写真を見ながら、小学校の運動会のイメージを共有化する。
運動が苦手な子供もいると考えられるため、心配なことや不安なことなどを学級みんなで共有し、解決方法を考えて、前向きに練習に取り組むことができるようにする。
【さぐる】…可能性への気付き
おうちの人や先生へのアンケートから、運動会当日どんな姿でいることが大切なのかに気づき、「できるようになりたいこと」や「なりたい姿」などを整理する。
【見つける】…解決方法などの話合い
6年生へのインタビューから、運動会を楽しく、充実したものにするために話し合い、なりたい姿に近づくための様々な方法を見つける。
【決める】…個人目標の意思決定
みんなで出し合った方法の中から、自分のめあてとすることを決め、計画を立てる。具体的に「いつ」「何を」「どのように」取り組むのかを「うんどうかい ワクワク さくせん」カード(後出)に記入する。
事前の指導
○事前アンケートを取る
運動会について、アンケート調査を行い、まとめておきます。ICT端末でのアンケート機能を使用すると、集計が簡単です。
○おうちの人や先生にアンケートを取る
おうちの人や先生に、運動会で子供たちの「見たい姿」「楽しみにしていること」について、アンケート調査を行い、まとめておきます。運動会本番に向けて、子供たちの意欲を継続する上で活用します。
○昨年度の運動会の写真をスライドショーなどにまとめておく
1年生が取り組む種目だけでなく、開閉会式や応援する姿、全校のために仕事をしている上学年の姿、児童会で立てたテーマの写真も準備します。子供たちが運動会に向けて期待をもてるものを選ぶようにしましょう。
○6年生にインタビュー
みんなで気持ちを合わせて取り組むことの楽しさや練習にがんばって取り組んで、うまくできた時のうれしい気もちなどを話してもらうようにしましょう。
本時のねらい
小学校生活初めての運動会を楽しく充実したものにするために、これまでの運動会の様子をビデオや写真で見たり、おうちの人が楽しみにしていることを知ったりする中で、自分ができるようになりたいこと、そのために何をしたらいいのか考え、目標を立てます。そして、目標の達成を目指しながら運動会の練習に主体的に取り組もうという気持ちを高めることをねらいとします。
本時の指導
【つかむ】 …小学校の運動会についてイメージし、運動会で楽しみにしていることを出し合う。
子供たちのアンケート結果を見たり、昨年度の運動会の様子の写真や動画を見たりしながら、楽しみなことを出し合います。
小学校の運動会は、何をするのかな。写真を見てみようね
ダンスがそろっていてすごいな
みんな一生懸命走っているよ
写真を見て、楽しみだなと思うことはありませんか
かけっこが楽しみです
玉入れでいっぱい玉を入れたい
ワクワクする運動会にしていきたいですね
【さぐる】…すでに運動会の練習をしている場合は、これまでの運動会の練習を振り返り、もっとよくしたいところやがんばりたいことを話し合う。また、おうちの人へのアンケート結果から、どんな姿を見せたいかを話し合う。
おうちの人が運動会で楽しみにしている姿や見たい姿などを知ることから、運動会当日どのような姿を見せたいのか、できるようになりたいかを考えていきます。
おうちの人は運動会の日、何を楽しみにしていると思いますか?
がんばっているところ
笑顔
楽しくやっているところ
運動会のときに自分ががんばることを考えましょう
ここで、めあてを提示します。
うんどうかいで がんばる ことを きめよう
【見つける】…6年生へのインタビューを聞いて、運動会までに取り組んだことや、できるようになるためにどんなことに気を付けたのかを話し合う。当日、なりたい自分の姿をイメージし、そのためにどんなことをどのように取り組むか、具体的な方法を見つけることができるようにする。
6年生はどんなことをしたらいいと言っていましたか?
運動会に向けて練習もあきらめずにがんばったと言っていました
何回も練習をして、みんなでがんばったから上手になったと言っていました
みんなで声をかけ合っていたんだって
休み時間にたくさん遊ぶと、足が速くなるんだって
ここでの気づきが、個々の子供のめあてにつなげられるように板書をしていきましょう。1年生の子供たちはめあてを立てることに慣れていないので、子供の言葉をそのまま板書するのではなく、そのためにはどんなことをどのようにがんばるのかなど、問い返しながら、具体的な内容を書くようにします。
当日見せたい姿、できるようになりたいこととのつながりが分かるようにすると、スムーズにめあてを決めることができます。技能面だけにならないように留意しましょう。
【決める】…運動会に向けてがんばることを決める。
「うんどうかい わくわく さくせん」カードに、自分が運動会でがんばりたいことを書きます。板書に書かれている、みんなで考えためあてから選ぶなど、具体的なめあてとなるようにします。運動会までのスケジュール表(練習日、準備の日など)を示すのも、意欲を高めたり、見通しをもって取り組んだりするために効果的です。
◆板書例
事後の指導
○めあてカードの記録
毎日帰りの会などで時間を設けて、めあてに向けた自分の取組状況を確認するようにします。がんばって取り組んでいることをしっかりほめて、意欲の継続を図りましょう。めあてに向けてなかなかがんばれない子供には、声をかけたり、一緒にやってみたりするのも一つの方法です。
めあてカードを掲示することで、互いのめあてを意識したり、よさやがんばりを認め合ったりすることにつながります。全校で廊下などに掲示することで、上学年のめあてを意識したり、今後の参考にしたりすることも考えられます。
○おうちの人へのメッセージ
当日のプログラム(徒競走の順番や、ダンスの場所、応援席の場所など)に加えて、自分の運動会のめあてや、演技・競技で見てほしいことなどについて、おうちの人へメッセージを送ることは、子供の運動会へのやる気を高めることにつながります。
また、「キャリア・パスポート」を活用して、おうちの人から子供たちのがんばりを認めるメッセージを書いてもらったりすることも考えられます。子供たちの意欲や達成感の向上につながりますが、家庭環境に十分留意し、おうちの人ではなく「先生から」「大人の人から」とすることも考えられます。
イラスト/高橋正輝
【引用・参考文献】
・『みんなで、よりよい学級、学校生活をつくる特別活動(小学校編)』国立教育政策研究所(文溪堂)
・『小学校学習指導要領解説(特別活動編)』文部科学省(東洋館出版社)