【相談募集中】精神を病みかけたトラウマから抜け出せない
精神を壊しかけたほどのつらい記憶が常に心の中にあり、張り切って仕事をしているはずなのに、暗い未来ばかり想像してしまうという先生からの相談が、 「みん教相談室」に寄せられました。ここでは、教員向け法定研修でメンタルヘルス研修の講師をされている臨床心理士・公認心理師の大多和二郎先生からのアドバイスをシェアします。
目次
Q. 精神を病みかけたトラウマから抜け出せません
かつて精神を壊しかけたトラウマが常にあります。2年前、(採用3年目)に受け持った学年や教材研究等様々な理由で精神を病みかけてしまいました。その時の怖さが常にあります。年度はじめの時期にいろいろ張り切って仕事をしていると(2年前も最初はこのくらい張り切ってたんだよなぁ…でも結局…)子供と接していても、同様のことが頭に流れてきて暗い未来ばかり想像してしまいます。なにか考え方はありませんでしょうか?(もこ先生・20代・男性)
A. 目の前の「今」にそのまま目を向けてみましょう
「2年前、様々な理由で精神を病みかけたことでの怖さが常にある」とのことですね。人の脳は危険・危機を回避しようとして辛かったこと、怖かったことをしっかり記憶しようとします。同じような目に合わないようにしっかり覚えておこうとするのです。しかし、結果としてその時の怖さや不安を何度もリピートすることになりがちで、むしろ、「またあんな事が起こったらどうしよう」という不安な心になってしまうこともあります。本来は自分を守ろうとする脳の仕組みが自分を苦しめることになってしまうというのはとても皮肉なことです。
対処方法・回避方法がわからないままに、辛い記憶が何度も思い返されると、心は怯える一方です。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の場合、フラッシュバックといって、突然当時の場面がリアルに蘇ってきてしまうことがあります。思い出すというよりは目の前で今起こっているかのようなリアルな感じなので、とても苦しい思いをします。今回のご相談は「その時の怖さが常にある」とのことですので、突然襲ってくるフラッシュバックとは違って、年度初めの時期に仕事をしていると、「暗い未来ばかりを想像してしまう」というように、暗い気分の雰囲気に飲み込まれてしまっている感じですね。
もともと、「同じ目に合わないように」という脳の仕組みから来ている心のパターンなので、「今度は注意しなさいよ」から一歩前にすすめて、いやな過去や不安な未来に引っ張られずに、目の前の「今」をそのまま見られることが大切かと思います。いくつか対処法がありますので、試してみてください。
1.人に語る
2.違う空気を入れる
3.今をみつめる
この3点がポイントです。
「1.人に語る」というのは「ただ聞いてもらう」ということです。アドバイスの必要はありません。頭の中でグルグル回わっている不安イメージを自分の外に出すというのが目的です。穏やかに聞いてもらうと、心の不安を相手に担ってもらったように感じてホッとします。ノートに書いたり、ボイスメモに録音してみるのもよいかもしれません。
「2.違う空気を入れる」というのは、深呼吸が基本です。不安だと呼吸が浅くなります。浅い呼吸で考え続けるとより苦しくなります。少し上を向いて胸を開いて、外からの新鮮な空気を身体に取り込んでみましょう。息詰まる感じが変わります。ミントキャンディーやマウススプレーなどがお好きでしたらそれを併用するのもよいでしょう。
「3.今を見つめる」というのは、タイムラインを過去や未来から今に戻すことです。不安は過去や未来にあります。「あんな大変なこと(過去)が、また起こったら(未来)どうしよう」という考えが頭の中をグルグルまわっています。ポンポンと手、ヒザ、頬などを軽くたたいたりしたりして、「今に戻っておいで」と自分に呼びかけます。そして「自分の呼吸」「見えている風景」「服の肌触り」など、自分の五感で感じていることに気持ちを向けてみましょう。1分くらい静かに五感の「今」を感じていると、タイムラインが「今」にリセットされるのを感じることができると思います。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。