理科の学習内容にあわせた、実験グループの効果的な編成方法【理科の壺】
理科の授業をする際、学習内容にもよりますが、3・4年生は主に教室、5・6年生は主に理科室で授業をする学校も多いのではないでしょうか。その際、グループ作りはどうされていますか? 教室であれば、机をくっつけてグループを作りますし、理科室でしたら座れる椅子の数で決めるなどあると思います。今回はそのようなグループづくりについてです。学習内容でグループ編成を考えていきたいですね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/滋賀県公立小学校教諭・堀 道雄
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.グループ編成は学習内容で変えてみよう!
理科の学習では、グループで観察実験などをし、問題解決する場面が多くあります。
ただ、グループ活動においては、「子どもによって活動への貢献度が偏ってしまう」「学習を自分事にできない」「全員が活躍できるようなメンバー編成に悩む」などといった声も、よく聞きます。
理科の学習でのグループは単元や場面に合わせてその都度、編成する必要があります。今回は、どの子も協働的に活動できるようにするためのグループ編成のコツを紹介します。
⑴ 大人数でのグループ編成はなるべく避ける
何人でグループを作るのが適切か、ということで悩まれる先生も多いと思います。
結論から言うと、これがベスト、という人数はありません。
単元によって最適な人数は違いますし、場面やクラスの環境、理科室の机配置、実験器具の数なども影響するので、その時々に合った人数を考えていく必要があります。
ただ、1グループあたりの人数が多すぎると、それぞれの役割が薄くなってしまいますし、観察実験の際に手持ち無沙汰の子どもも出てきてしまいます。原則は最大でも4人。さらに3人だとなお、活動の密度は濃くなるのではないでしょうか。1グループに5人以上いるような状態は避けたいところです。
⑵ 1人1実験をするときもグループの編成を有効に使う
単元によっては、一人一人が実験をする、いわゆる1人1実験ができる単元があります。その場合も、グループを編成することで協働的な学びを実現させることができます。 例えば、第3学年「電気の通り道」では、乾電池や豆電球、導線などは1人1セットずつ揃えることができます。
豆電球の明かりがつくかどうか、ということを個人で試すだけでは、協働的な学びは生まれません。
個人で実験をしつつも、グループで活動する(例えば、グループでの話合いの時間をもつ、理科室の同じ机で実験をするなど)ことで、周りの子どもの活動の様子を見て解決の糸口を見いだすことができるようになります。結果の共有や考察の話合いだけでなく、実験中についてもグループでの交流を促すことにより、解決に悩んでいる子どもや自信がもてない子どもも、より主体的に参加できるようになります。
2.協働的に実験するためのグループ編成方法
1人で実験をすることが難しい単元もあります。例えば、第5学年「振り子の運動」では、振り子が1往復する時間を変化する条件を調べる際に、振り子の長さや振れ幅、おもりの重さなどの条件を変えて実験を進めていきます。振り子の装置は少し大きめで、手順も多くあり、1人で実験を完結するには難易度が高い実験です。その場合は、グループの子どもたち(4人もしくは3人)で実験の役割分担をする必要があります。「振り子の運動」では下のような役割分担が考えられます。
【4人で班を編成した場合の役割分担例】
A児 実験の手順を確かめ、実験装置をセッティングする
B児 振り子の往復した回数を数える
C児 振り子を持って手放す
D児 ストップウォッチで時間を測る
ノートやタブレットに記録する
【3人で班を編成した場合の役割分担例】
A児 実験の手順を確かめ、実験装置をセッティングする
B児 振り子を持って手放す
振り子の往復した回数を数える
C児 ストップウォッチで時間を測る
ノートやタブレットに記録する
役割はずっと固定するのではなく、条件ごと(振り子の長さや振れ幅、おもりの重さ)に役割をローテーションするなどして、どの子も色々な役割を経験できるよう配慮することも大切です。
ただし、あまりにも頻繁に役割を替えてしまうと、やり方を間違えたり混乱したりすることが増えますので、注意が必要です。
この単元の場合、2人でも実験をすることは可能ではありますが、子どもが実験方法を間違ったまま進めてしまうことも考えられるので、2人で実験を進める場合は、より教師の丁寧な見届けが必要になります。
3.グループで学習を進める際の雰囲気づくりが大切!
ここまで、グループの編成方法について述べてきましたが、その大前提には一人一人が主体的にグループ学習に参加できるような雰囲気を醸成する、ということがあります。問題解決の学習過程を大切にし、見いだした問題をいかに自分事にするかということや、一人一人の意見がしっかり反映される受容的な雰囲気を他の授業や学級経営の中で進めていくことが大切です。そのうえで、より効果的なグループ編成の在り方を模索していくとよいでしょう。
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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<執筆者プロフィール>
堀 道雄●ほり・みちお 滋賀県公立小学校教諭 滋賀県小学校理科部会の研究推進委員として、県内の小学校理科の指導力向上に携わっている。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員などを経験し、教員をしながら博士号(学校教育学)を取得。共著『よくわかるSTEAM教育の基礎と実例』(講談社)などの書籍も執筆している。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。