保護者会での保護者とのつながり方とは?【グッとラクになる「学級づくり・授業づくり」第1回】

保護者会での保護者とのつながり方とは?【グッとラクになる「学級づくり・授業づくり」第1回】

教師という仕事は非常に多忙な仕事です。特に経験の少ない若い先生方にとっては、近く行われる保護者会などでどう保護者と関わるかとか、行事や授業などで地域の方とどう関わるかなど、年上の人と関わっていくことは、大きなストレスになることもあるでしょう。しかし、保護者や地域とうまく関わり、教育に巻き込んでいくと、仕事はラクになり、教育の質もグッと上がると言います。そこで、実際にそのような実践を行ってきている、千葉県野田市立柳沢小学校の横田美紗子先生に、保護者や地域と上手に関わるための具体的な方法について聞きました。

保護者と教師との良いつながりをつくるためには、年度はじめが重要

教師にはとてもまじめな人が多く、学校という世界の中で、いろいろなことを一人で抱え込んでしまいがちな傾向があると思います。しかし、保護者や地域の方々と上手につながることができれば、多様な場面で支援していただくことができ、私たち教師の仕事もずいぶん楽になるものです。しかも、ただ楽になるだけでなく、授業をはじめ多様な教育の質も向上し、仕事がより楽しくなっていきます。ですから、保護者や地域と上手に関わり、うまく巻き込みながら教育を「楽」にしていくことが大切です。

まず保護者について考えてみましょう。私たち教師は確かに子供たちの日々の学びの伴走者ですが、保護者は入学前からずっと、そして入学後もずっと子供の伴走者であり続けるわけです。だからこそ、子供を真ん中に置いて、子供と私たち、子供と保護者がつながるだけでなく、私たち教師と保護者も直接つながっていかないと、子供たちはうまく育っていかないと思います。

その保護者と私たち教師との良いつながりをつくっていくためには、年度はじめがとても重要です。保護者の方たちも、「どんな先生が担任なのかな」と不安をもっています。だからこそ、私たち教師の側から積極的に発信していくことが大事です。そのときにポイントとなるのは、子供たちの良い姿をどんどん保護者に発信していくということです。

今後の1年間では、子供たちが何らかの問題を起こすことがあるかもしれません。当然、それについて保護者に伝えていかなければならない場面も出てくるでしょう。もし、その悪い情報を伝えることが、その保護者との1年間の最初の直接のコミュニケーションだったら、その方はどんな気持ちになるでしょうか? 人間は関わりの最初に否定から入られると嫌なものですから、きっと、あまりいい気持ちにはなりませんよね。人によっては、「いきなりうちの子が悪いだなんて…」と非常に不快に思われるかもしれません。

逆に、もし日頃から子供たちの良い面をずっと伝えてくれている先生が、「今日、実はこんなことがあって…」と問題があることを連絡してきたら、どうでしょう? おそらく、「日頃からほめてくれる先生が言うのだから、何かうちの子に問題があったのかな?」と真摯に受け止めてくださる場合が多いのではないでしょうか。だからこそ、年度当初は特に子供たちの良い姿を徹底して見取りながら、それを保護者に発信していくことが大切なのです。

ちなみに、今年度の初日、私の学級でもとてもすてきなことがありました。集めた連絡帳を帰りの会で子供たちに返そうと思い、そのまま教卓の上に積んでおいたのですが、それに気付いた子供たちが全員に連絡帳を配っておいてくれたのです。その気付きと気遣いがとても嬉しかった私は、さっそくその子たちの連絡帳にもそのようなすてきな行動とともに、「自分としても、とても嬉しかったです」ということを書いて保護者に伝えていきました。そんなふうに小さなことでよいので、先生が気付いたことをどんどん保護者の方に発信していくのです。特に年度当初は意識して、こまめに発信していくとよいと思います。

保護者にひたすら子供たちの写真を見せて話す

保護者に伝えていく方法については、連絡帳の他にも多様な方法がありますが、それについては次号に詳細を説明するとして、若い先生にとって差し迫ったミッションだと思われる保護者会での保護者とのつながり方について、お話ししていくことにしましょう。

保護者会で保護者とつながっていくためにはいろいろな方法があると思いますが、私の場合は保護者にひたすら子供たちの写真を見せてお話をしています。私は日々、子供たちの良いところを写真に収めていますが、それを発信する最高の機会が保護者会だと思っているのです。ですから、そういった子供の良い姿を紹介しながら、学年や学級の取組についてお話をしていきます。そういった私の視点を保護者に伝えていくための良い機会だと考えているのです。

今年度も、ゴールデンウィーク前に行われる保護者会に向けて、私はいくつかの写真を準備しています。例えば、今年度初日の様子の写真です(写真1参照)。子供たち同士で全員の名簿を作っていくときに、子供たちは互いにどんどん質問をし合って、「名簿をしっかり埋めよう」とはりきっていました。その写真を見せながら、「互いを知るために、ひたすらみんなががんばっていた様子です」と伝えていくつもりです。

写真1

あるいは、2日目の子供たちの様子で、他の先生のお話を聞くときに、きちんと並んで良い姿勢で聞けていた写真も撮ってあります(写真2参照)。「こんなきちんとした姿勢で見ていますよね。こんな姿で学習に向かえるってすばらしいと思いませんか? この視線の先に先生がいるのです」と伝えていくつもりです。それによって、保護者の方々も「ああ、子供たちはこの先生と一緒にがんばっているな」と安心されることでしょう。

写真2

そうした保護者会にしていくために、私は日々、子供たちの良い姿を写真に撮っています。近く保護者会がある先生も、今日からでもできますからぜひやってみてください。そのように気を付けて、子供たちの良い姿を見取ろうとすることは、きっと先生自身の子供を見る目も育ててくれることだろうと思います。

ちなみに、このようなほめたいことを写真に撮って伝える方法は子供たちにも伝えやすい方法です。例えば、子供たちが帰った後の机がきちんと並んでいたとしたら、その写真を撮って、「先生、とても感動したんだ」と言って見せます。その時にすぐに説明するのではなく、「これ、何だと思う?」と投げかけてみるのです。すると、子供たちは考えて、「これ、机が揃っていてきれいじゃない?」と言いだします。そこで、「それだよ! そこに気付いたのはすばらしいね」「気付けるということが何事にも替えがたいんだよ」と言うと、次は何も言わなくても下駄箱がきれいに揃っていくのです。それは、自分たちで揃っているときれいだと気付いたことで、下駄箱に靴を入れるときにも気を遣うようになるわけですよね。そして、その次はロッカーにも気を配るようになっていきます。

「神は細部に宿る」「本質は細部に現われる」ではありませんが、そういった細かなことに気付いていけるようにほめていくことで、私は自然と子供たちがいろんなことを見る目、本質に気付く目をもってくれるように育てていきたいと思っています。

少し話がそれましたが、このように子供たちの細かな良い姿をほめて、ひたすらコミュニケーションを取り、保護者と顔見知りになって壁を一つ乗り越えた後は、直接の電話といった方法も取り入れ始めます。保護者と関わっていくための、そうした具体的な方法の詳細については、次回、お話をしていきたいと思います。

【グッとラクになる「学級づくり・授業づくり」】次回は、月11日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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