教科担任制【わかる!教育ニュース#23】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第23回のテーマは「教科担任制」です。
目次
小学校高学年における「教科担任制」の実践事例集がまとまる
1人の担任が1つの学級の授業を受けもつのが主流だった小学校で、教科担任制が本格的に導入されてほぼ1年が経ちました。長らく続いた教え方を転換するだけに、試行錯誤が続いていることでしょう。
そんな中、文部科学省が全国5都道県11校での高学年における実践事例集をまとめ、省のホームページに掲載しました(参照データ)。1学年が20〜40人ほどの小規模校、120人はいる大規模校、義務教育学校など、学校ごとに状況は異なるものの、それぞれの実情に沿った具体的な取組方や工夫などを、時間割も添えて報告しています。
例えば、同じ中学校区内で連携している北海道の2小学校では、中学校の理科や外国語の教員による指導と、国語や算数での担任間の授業交換、社会や音楽での専科教員の指導を組み合わせています。一方、小中の教員が乗り入れ、授業をしやすい環境にある義務教育学校では、担任と中学校教員で指導する授業も取り入れています。
文科省は教科担任制の利点に、授業の質の向上、中学校への円滑な進学、複数の教員による多面的な子供理解、教員の負担減の4つを唱えています。ただ、大事な視点は「子供のため」になっているか、です。事例集は「専門の先生なので中学校の学習や社会とのつながりがよく分かる」「中学校の練習になっている気がする」など、子供の好意的な感想がある反面、「勉強の質問をしたくてもクラスが違うのですぐにできない」といった意見もありました。
事例集では、課題の解決法も紹介
小学校での専科指導は一部の教科にとどまっていました。本格導入のきっかけは、2021年1月に中央教育審議会がまとめた、これからの学校教育のあり方を示した答申です。目指す方向性に「個別最適な学び」「協働的な学び」を掲げ、その実現に向けて取り組むことの1つが、小学校高学年での教科担任制導入でした。抽象的で難しくなる高学年の学習を深めるとともに、教員の受けもつ授業数を減らしたり、依然課題の「中1ギャップ」を解消したりする効果も見込まれました。
答申を踏まえ、文科省は義務教育9年間を見通して導入を考える、有識者の検討会を設置。議論の結果をもとに、本格導入を22年度と決め、教員の加配定数を拡充しながら4年ほどかけて段階的に進めることにしました。
とはいえ、「時間割が複雑化し、学校運営の把握が難しい」「教科によっては担当できる教員が足りない」「長期間、担当しなくなる教科があると不安」といった難点を訴える声も根強くあります。
事例集はそんな課題の解決法を紹介しつつ、うまく導入している学校には共通点があると指摘しています。それは「制度の目的や趣旨を校長や教育委員会が教員に分かりやすく伝え、管理職を中心にマネジメント上の工夫をしていること」。個々の教員の努力だけでは「子供のための教科担任制」は遠く、管理職や教委を含めて学校ぐるみで臨む姿勢が鍵のようです。
参照データ
▽文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20230310-mext_zaimu-000027939_1.pdf
【わかる! 教育ニュース】次回は、4月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子