指導困難校で奮闘するエリート教師!フランス映画『12か月の未来図』は先生に絶対オススメ

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フランスが直面する貧困層の教育問題を、ドキュメンタリーさながらのリアルさでユーモアたっぷりに描いた映画『12か月の未来図』が、4月6日(土)より岩波ホール(東京都千代田区)ほかで公開されます。あたたかな余韻を残しながら、“学ぶこと” “教えること”の意味を真摯に問いかけてくるような作品の紹介です。

美しくておしゃれな映像を通して、学校間格差の問題が浮き彫りに

主人公は、フランスの名門高校のベテラン国語教師、フランソワ・フーコー先生(ドゥニ・ポダリデス)。著名作家を父にもち、恵まれた環境の中で、教師生活を送ってきたフランソワ先生。

あるとき、父の新刊発売記念パーティで、教育の地域格差に関して持論を披露したところ、たまたまそれを聴いていたのが国民教育省の専門家。フランソワのアイディアは、想定外にも国民教育省のプロジェクトとして受け入れられ、フランソワ本人がパリ郊外の貧困区域の中学校に送り込まれることになります。そこでは、これまでエリート校で行っていた指導法が全く通用しないことを悟ります。

ブルジョワ家庭に育ち世間知らずと言ってもいいような主人公が、やんちゃな生徒たちにイジられてしまう様子は笑いを誘います。頭でっかちそうに見えるのに、無駄なプライドに邪魔されず奮闘する主人公を、誰もが応援したくなるはずです!

アクティブ・ラーニングは世界共通!

最初は教師の権威を取り戻そうと支配的な態度をとって失敗したフランソワでしたが、生徒たちが自ら興味を持って学習に取り組めるような方法を考え、実践していきます。「レ・ミゼラブル」を題材にした自主学習によって、意欲を失くしてしまっていた生徒たちが学びへの興味を持ちはじめる様子には、ワクワクさせられます。

主体的な学びを目指し、教師はファシリテーターの役割に徹する様子は、まさに、今の日本が目指す教育の在り方と近いものが見られます。アクティブ・ラーニングが子どものやる気を引き出すのは、世界共通なのですね。

多様なケースに応じた教育方法を模索し続けることの不安と期待こそが、この作品で強調したかったテーマだと、オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル監督は言っています。

トラブル発生! そのとき学年団は? 主人公教師は?

物語の中心となるのが、明るい性格だけれど反抗的な態度で教師たちを困らせる男子生徒・セドゥ。スクリーン上では無邪気でかわいらしくも見えるセドゥですが、複雑な家庭環境で育ったことから、学校生活のルールを守ることができません。

学年団の教師たちは、セドゥのことを退学候補者の一人として見ています。貧困地区の学校の教師たちの間にあきらめが広がっていく場面に、映画を観ている私たちは、現実の教育現場の暗い一面を突きつけられます。

その中でもフランソワ先生は一人、不安定なセドゥを温かく見守り、学びの楽しさを指導していきます。ところが、ある校外行事で小事件が発生。それがきっかけで学校では大問題になり……。

主人公と教え子たちの間に育ちつつある絆はどうなるのか……。主人公の教師人生ははたして……。続きは映画を観てお確かめください!

監督は、取材のため2年間中学へ登校

この映画について、ぜひともお伝えしたいポイントが2点。

一つは、監督は、取材のため2年間にわたって中学校に“登校”し、生徒や教師と共に学校生活を送り、知り合った子どもたちの本音を拾い上げて物語をつくったということ。もう一つは、本作では、プロの俳優は大人のみということ。

生徒役を演じているのは、本当の生徒たち自身ということに驚きを隠せません。演技っぽくないリアルな教室の雰囲気は、そこから生まれていたのですね。

さらに付け加えさせていただくと、フランス映画らしい美しい映像表現で、ちょっとしたロマンスが盛り込まれているところも一興です(記者の個人的感想として二人の関係の続きがちょっと気になります!)。

学ぶこと・教えることの喜びが描かれたフランス映画『12か月の未来図』。静かな感動とともに、自分の教師としての在り方を新鮮な気持ちで捉え直すこともできそうです。

『12か月の未来図』
 4月6日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
  監督・脚本:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル
  出演:ドゥニ・ポダリデス ほか
  配給:アルバトロス・フィルム
http://12months-miraizu.com
文部科学省特別選定(青年・成人向き)
厚生労働省社会保障審議会推薦(高校生、保護者・指導者、一般)

お知らせ
3月31日(日)13時30分より 教育会館(東京都千代田区神保町)にて映画上映会、教育の未来を考えるシンポジウム(登壇者・岡田昭人〔東京外国語大学総合国際研究院教授〕ほか)が開催されます。
内容の詳細、お申込方法は映画の公式ホームページをご覧ください。

©ATELIER DE PRODUCTION – SOMBRERO FILMS -FRANCE 3 CINEMA – 2017

取材・文/設楽由紀子

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