小4理科「ものの温度と体積」指導アイデア
執筆/福岡県公立小学校教諭・松本 祥吾
福岡県公立小学校教諭・江口 活
監修/文部科学省教科調査官・有本 淳
福岡県公立小学校校長・澤野 孝雄
福岡県公立小学校教頭・中村 英嗣
目次
単元の目標
体積の変化に着目して、それらと温度の変化とを関係付けて、金属、水及び空気の性質を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を養うことができるようにする。
学習指導要領では,次のことを理解するようにすることが示されています。
(ア)金属、水及び空気は、温めたり冷やしたりすると、それらの体積が変わるが、その程度には違いがあること。
(イ)金属は熱せられた部分から順に温まるが、水や空気は熱せられた部分が移動して全体が温まること。
(ウ)水は、温度によって水蒸気や氷に変わること。また、水が氷になると体積が増えること。
子供が問題解決の活動を通して,上の(ア)(イ)(ウ)を理解するように指導しましょう。また、その過程において、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を育成しましょう。
「粒子」の領域である単元は、主として質的・実体的な視点で捉えることが求められていますが、ここでは温度の変化に伴ってものの体積も変化するという「量的・関係的」な視点で捉えられるようにするとよいです。
閉じ込めた空気や水の体積と加えた力の関係について「量的・関係的」な視点で捉えたことなどと比較しながら、温度の変化とものの体積の変化の関係について考えを深められるようにしましょう。
単元展開
総時数 7時間
第1次 空気の温度と体積
1 空のペットボトルを湯や氷水の中に入れたときのペットボトルの様子について、気付いたことを話し合う。(授業の詳細①)
2・3 空気の温度の変化と体積の変化の関係を調べる。
4 空気の体積の変化を確かめ、深める。
第2次 水の温度と体積
5 水の温度の変化と体積の変化の関係を調べる。
第3次 金ぞくの温度と体積
6 金ぞくの温度の変化と体積の変化の関係を調べる。(授業の詳細②)
7 「たしかめよう」「学んだことを生かそう」を行う。
授業の詳細①
第1次 空気の温度と体積
1 空のペットボトルを湯や氷水の中に入れたときのペットボトルの様子について、気付いたことを話し合う。
空のペットボトルにふたをして、湯や氷水に入れたときの様子を見る。
空気と温度の関係を意識付けるために、空のペットボトルの中には何が入っているかを問いかけるなどして、空気の存在を確認しましょう。
また、事象を捉えやすくするために、柔らかいペットボトルを使用し、ふたをしっかり閉めておきましょう。
ペットボトルのふたを開け、実際に空気を入れる動作を加えると、中に空気が入っていることを、子供がイメージしながら実験を行うことができます。
空のペットボトルにふたをして、湯や氷水の中に入れてみましょう。
湯に入れても、ペットボトルは変わらないようだよ。
氷水に入れたら、ペットボトルがへこんだよ。
もう一度湯に入れるとどうなるのかな。
ペットボトルがふくらんだり、へこんだりする現象が、空気の出入りによることや手で押したことによるものではなく、温度の変化によるものであることを捉えさせるために、実験時間を十分取りましょう。
氷水に入れてへこんだペットボトルを湯に入れたときの様子を見る
①問題を見いだす【自然事象との出合い】
湯や氷水に入れたときのペットボトルの様子はどうでしたか。
湯に入れたときは、へこんでいたペットボトルがふくらんだよ。
火傷の危険を避けるため、湯の温度は40℃くらいで実験をしましょう。
逆に氷水に入れたら、ペットボトルがへこんだよ。
今までの経験では、どんな時にペットボトルがへこんだりふくらんだりしたことがあるかな。
ふたをはずして手で押したらへこむし、へこんだものに空気を入れたらふくらんだことがあるよ。
空気の出入りによってもペットボトルはへこんだりふくらんだりすることを想起させ、今回の実験の状況との違いを比較しましょう。そうすることで、体積の変化が温度の変化によるものであることを意識することができ、学習問題を自ら見いだすことができます。
空気が出ていったり、入ってきたりしたらペットボトルはへこんだりふくらんだりしますね。
では、今回の実験ではどうですか。
ふたは閉まっていたから、空気の出入りはなかったよ。
温めたり冷やしたりしたから、温度が関係ありそうだね。
空気の温度が変わると、空気の体積はどうなるのだろうか。
その他のポイント
空のペットボトルの他にも、ポテトチップスなどのお菓子の袋も、変化が大きく事象を捉えやすいです。
授業の詳細②
第3次 金ぞくの温度と体積
6 金ぞくの温度の変化と体積の変化の関係を調べる。
①問題を見いだす
金ぞくも空気や水と同じように、温度によって体積は変わるかな。
金ぞくは空気や水とは違って、かたいイメージがあるからどうだろう。
金ぞくの温度が変わると、金ぞくの体積は変化するのだろうか。
②予想する
前時までの学習を想起させ、根拠のある予想ができるように支援しましょう。
また、「金ぞくは空気や水と違って硬いけれど、どうかな。」などゆさぶる問いかけをし、質的な見方を働かせられるにしましょう。
空気や水を温めたり冷やしたりすると体積が変わったから、金ぞくも同じように体積が変わると思う。
金ぞくは硬いから変化しないと思う
温度が変わると体積も変わると思う。けれど、硬いから、空気や水よりも変化は少ないかもしれない。
③解決方法を考える
金ぞくは変化が小さいかもしれないから、少しの変化でも分かるものがあるといいね。
このような実験器具を使ってみましょう。
金ぞくの玉の大きさと、輪の内側の大きさは同じで、金ぞくの玉は輪を通ります。玉を熱するとどうなるでしょう。
④観察・実験をする
金ぞくの玉が「輪を通った」「輪を通らなかった」という結果は、温度による体積の変化によるものであるという、実験の意味を捉えさせたうえで実験に臨むようにしましょう。
金ぞくの玉は、熱する前は輪を通っていたのに、熱すると通らなくなったよ。
冷やすと、熱して輪を通らなくなった玉が、また通るようになった。
●熱した物や使った器具は熱くなっているので、冷めるまで触らないように指導しましょう。濡れぞうきんを準備して、その上に置くなどしましょう。
●熱した金属球を冷やすとき、水がはねる恐れがあるので、顔を近づけないように指導しましょう。
⑤結果の処理
⑥結果を基に考察する
玉が「輪を通った」「輪を通らなかった」という結果から玉の体積が変わったこと、また、その原因が金属の温度の変化によるものであることを、順を追って整理しましょう。言葉だけでは理解が難しい児童に対しては、イメージ図などを用いるとよいです。
冷やすと輪を通るようになったということは、玉の体積が小さくなったといえるよ。
でも、見た目ではわからなかった。
玉の体積、ではなく、水、空気と同じように、金属の体積、という言葉に置きかえて考えていきましょう。
玉が「輪を通った」「輪を通らなかった」という結果から、玉の体積が変わったことがわかっても、「玉」という「物」の名前から離れられない児童もいます。問題に正対できるよう、「玉」を「金属」という「素材」の名前に置きかえて、その原因が金属の温度の変化によるものであることを考えるように指導しましょう。
金属の体積も、空気や水と同じように変化する。金属の体積の変化はとても小さいといえそうだ。
金属も温度によって体積が変わることを生かしたものがあるか調べてみたいな。
イラスト/難波孝