小2特別活動 学級活動編「雨の日の遊びをきめよう」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。6月は、学級活動(1)「雨の日の遊びを決めよう」を紹介します。
梅雨の時期は天気が悪い日が続きがちですが、子供たちは毎日元気いっぱい。外で思いきり遊んだり走り回ったりしたい気持ちを我慢する日々が続きます。そんな時期は、子供たちが自分たちで時と場に合った遊びを考え、楽しい学級生活を子供たち自身がつくるよい機会です。
執筆/青森県公立小学校教諭・西村絵梨香
監修/文部科学省視学官・安部恭子
青森県八戸市総合教育センター所長・河村雅庸
目次
年間執筆計画
04月 クラスの合言葉をつくろう
05月 ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう
06月 雨の日の遊びを決めよう
07月 夏祭りをしよう
09月 夏休みの思い出発表会をしよう
10月 なわとび集会をひらこう
11月 なかよし学きゅうまつりをしよう
12月 1年生と遊ぼう会をひらこう
01月 思い出パーティーを開こう
02月 思い出いっぱいのクラス文集をつくろう
03月 「2年生のバトン」をわたす会をしよう
●ワンポイントアドバイス〈議題集めの工夫〉
学級会の議題については、1年間を通して、学級生活の様々な場面から議題案に気付き、提案できるような環境を整えておくことが大事です。
(例)
・学級会コーナーをつくり、次の学級会で話し合うことや学級会で話し合って決まったことを掲示する。
・いつでも提案できるように、子供たち手作りの議題ポスト・議題提案カードを学級会コーナーの近くに設置する。
・朝の会や帰りの会の時間に、グループなどで相談する時間を設ける。
・時には、何気ない子供たちのつぶやきから教師が提案を呼びかける。
※ICT端末を活用することも考えられます。
今回の議題については、教師から「雨が降ると休み時間、やることがなくて退屈そうにしている人がいるね。何か工夫して教室で遊ぶことができればいいですね」と声をかけたところ、議題ポストに提案されたものです。そして、計画委員会でポストに入っていた議題案の中から今回の議題を選定し、学級みんなで決定しました。
学級活動(1)議題「雨の日の遊びを決めよう」の実践
事前の活動
計画委員会の活動
①事前アンケートで、意見を集めます。
ア)意見の収集
事前に「教室で安全に楽しめる遊び」について全員から意見を集めました。たくさん思い付いた場合は、たくさん書いてもよいことにしました。
イ)意見の集約
学級全員から集めた意見を見たところ、意見の総数が30を超えていたため、計画委員会で意見を分類・整理し、学級会の「出し合う」段階で示す意見を絞りました。「何人くらいの人たちが希望しているか」「本当に教室でできそうな遊びか」という視点で意見を集約していきました。
計画委員会には教師も参加し、正当な理由なく意見が却下されることがないよう助言しました。
取り上げられなかった意見については、納得のいくように、その理由や取り上げ方などについて学級全体に説明しました。
(例)
けんけんぱ…外で遊ぶときにやりましょう
くじ引き…景品付きとあったので、これは、「お楽しみ係」に考えてもらいましょう。
②休み時間を使って、教師と一緒に役割分担をし、意見の短冊などを作成したり、学級会の流れを確認したりします。必要により、学級会の進行の仕方を練習します。
本時のねらい
みんなの思いや願いを出し合いながら、雨の日に学級みんなが教室内で楽しめる遊びを話し合って決めることができる。
本時の活動
学級会 議題「雨の日のあそびをきめよう」
<提案理由>
このごろ雨の日が多く、外で遊べない日が続いています。休み時間、外で遊べないのでつまらなそうにしていたり、廊下や教室を走って注意されたりしている人もいます。そこで、雨の日でも教室で楽しめる遊びをみんなで考えて、遊び道具を作って遊んだらどうかなと思いました。そうすれば、雨の日の休み時間がもっと楽しくなって、みんながもっと仲よしになるのではないかと思って提案しました。
<決まっていること>
・教室で安全にできる遊びにする。
・みんなが楽しめる遊びにする。
・遊ぶ道具は、みんなで作る。
話し合うこと① どんなあそびにするか
【出し合う】
【司会】みなさん、アンケートありがとうございました。たくさんの意見があったので、計画委員会と先生で話し合って、教室で安全に遊ぶのに合うものとして、次の遊びの中から話し合って決めることにしました
今回、取り上げられなかった意見についても、雨の日に室内で遊ぶという点では合わなかったので取り上げられなかったことを説明するとともに、意見を出してくれたことに対してのお礼を言うことで、「意見を出してよかった」という思いにつなげます。
今日は、次の6つの遊びについて話し合います。
黒板記録さん、お願いします
黒板記録の子供が一つ一つ発表しながら、黒板に短冊を貼っていきます。
出された意見に質問はありませんか
「すごろく」って、どんな遊びか分からないので教えてください
「すごろく」を提案した○○さん、説明をお願いします
はい、「すごろく」について説明します。サイコロを振って、出た目の数だけマス目を進み、早くゴールした人が勝ちというゲームです。「1回休み」や「ふりだしに戻る」などのマスがあって、どきどきして盛り上がります
よく分かりました。ありがとうございます
どんな遊びか分からないものがないかどうか、比べ合う前に確認します。時間短縮のためには、事前に短冊を掲示しておき、分からないことは帰りの会で質問し合うなど、本時の学級会の前に共通理解を図り、「くらべ合う」話合いを始めるようにするとよいでしょう。
また、言葉だけでは伝わらないときには、実物を見せたり実演したりして、共通理解を図りイメージを共有するとよいでしょう。
【くらべ合う】
司会:くらべ合いに入ります。意見がある人は発表してください。
子供1:ぼくは、まとあてに賛成です。楽しそうだからです。
子供2:まとあては楽しそうだけど、投げたり飛ばしたりするのは危ないんじゃないかな。
子供3:魚つりに賛成です。1年生のとき、2年生が作ってくれた魚つりゲームで遊んだことがとても楽しかったので、自分たちでも作って遊んでみたいからです。
子供4:いいね。みんなで自分の好きな魚の絵をかいて作ったら楽しそう。
子供5:すごろくも手作りしたら楽しいだろうけど、全員で一緒にはできなそう。グループごとになるのかな?
子供6:そうだね。それから、けん玉は1人ずつしかできないし、時間もたくさんかかりそう。できるだけたくさんの人が次々に遊べた方がいいと思うから、ボウリングの方がいいと思う。
司会:段ボール迷路について意見がありませんが、何かありませんか。
子供7:やってみたいと思うんだけど、場所もとるし、作る時間もかかりそうだなあ。
子供8:私も迷路は楽しそうでいいと思うんだけど、休み時間に準備をして遊ぶのは難しそう。
意見を言う場合は、提案理由や話合いのめあてに沿って、考えを話すことができるようにしたいものです。
また、反対意見の場合は、必ず自分はどの意見に賛成しているのかという立場をはっきり伝えたり、代案を出したりするようにします。意見を出した人に言うのではないので、「〇〇さんに反対です」という表現にならないように気を付けましょう。
【まとめる】
みなさんの意見をまとめると、ボウリングと魚つりに賛成の人が多いようです。別のおもちゃに賛成していた人たちはどうですか
ぼくは、まとあてがいいと思っていたけれど、○○さんの意見を聞いて、確かにまとあては、教室でするには危ないなと思いました
ボウリングと魚つりなら、たくさんの人たちが仲よく安全に遊べそうだから、いいと思います
では、ボウリングと魚つりに決めてもいいですか
はい
もし「決めてもいいですか」に対して、「いいえ」の声があった場合は、その子が納得いくように話し合います。何か心配事がある場合は、どうして心配なのかをよく聞き、解決策をみんなで考えるようにして、全員が納得した状態で次の段階に進むようにしましょう。
話し合うこと② あそぶときのやくそくをきめよう
司会:話し合うこと②に入ります。遊ぶときは、どんなことに気を付けたらいいですか。
子供1:「大切に使う」がいいと思います。魚つりみたいに手作りする遊びの場合は、せっかく作ったのに壊れてしまったら、悲しい気持ちになるからです。
子供たち:賛成です。
司会:他に何かありませんか。
子供2:「順番を守る」がいいと思います。みんながきちんと順番を守れば、けんかなどせず楽しく仲よく遊べると思います。
子供3:「時間を守る」も入れたらどうですか。夢中になって遊びすぎて、授業に遅れないように気を付けた方がいいと思います。
司会:「大事に使う」「順番を守る」「時間を守る」という3つの意見が出ました。これらに気を付けたら楽しく遊べそうだと思うのですが、みなさんどうですか。
子供たち:いいと思います。
話合いが続き、意見がまとまっていきました。
遊ぶときの約束は、「大事に使う」「順番を守る」「時間を守る」の3つです
このあと、役割分担として、ボウリングと魚つりのどちらを作る担当になるかを決めて、最後にノート記録から話合いで決まったことの発表となります。
【ノート記録】雨の日の遊びはボウリングと魚つりに決まりました。グループに分かれて作ります。遊ぶときの約束は、「大事に使う」「順番を守る」「時間を守る」の3つです
話合いが終わり、教師の終末の助言を行います。
「楽しく」「仲よく」「安全に」ということを意識して、友達の意見をよく聞きながら話し合うことができましたね。決めた遊びの道具をグループで協力して作って、みんなで遊びましょう。雨の日が楽しみですね!
終末の教師の話では、互いの意見を大切にして、学級としてよりよく合意形成を図ることができたことを称賛し、実践への意欲を高めるようにしましょう。
◆板書例
事後の活動
・ボウリングと魚つりのグループに分かれて、協力して準備をする。
・遊ぶときの約束の紙を書いて、学級活動コーナーに貼る。
〈今回決まった手作りの遊びの紹介〉
●ペットボトルボウリング
500mLペットボトルを持ち寄り、ペンで好きな色に塗ったり模様を描いたりしました。教室内で使えるボールを用意して、教室内の空いているスペースや廊下を使って遊べるようにしました。6本で1セットとし、3セットほど作りました。
ペットボトルに色水を入れたり、ペットボトルの場所によって得点を変えたりするなどの工夫をしても楽しく遊べます。
●魚つり
紙に自由に魚の絵を描き、一つ一つの魚にセロハンテープでクリップを付けます。割り箸に毛糸を巻き付け、先端に磁石を結び付けて竿を作りました。教室内の空いているスペースに魚を並べて、何人でも取り囲んで遊べるようにしました。
今回の実践では、「どうしたらもっと楽しく安全に休み時間を過ごせるか」ということはもちろん、「学級のみんなが楽しめるようにするには」という思いを忘れずに話合いを進めることができました。安全に配慮した発言や、「嫌な思いをする人がいないように」ということを考えた発言を称賛し、次回からの学級会にも生かせるようにしました。
日頃から、「決まった意見が優れていて決まらなかった意見が劣っているというわけではない」ということを伝えています。そして、学級会は違う意見をもつ人と戦う場ではなく、みんなで学級のみんなにとって最もよいゴールを見つける場であるという意識をもたせるように心がけています。
●〈手づくり学級会グッズ〉
〇役割プレート:計画委員会が着用します。
〇手作り短冊:白いコピー用紙にラミネートをかけたものを大量に作って使っています。
イラスト/イラストAC