春休みにこそせんせいがやっておくべきこと
いよいよ春休み! 年度をまたぐ休みですね。マネジメント部門スタッフは、休みなしで年度じまいとスタートアップで大忙しですが、担任としては残務整理や事務処理が終われば、ちょっとひと息つけるという期間です。有給休暇が取りやすいタイミングなので、リフレッシュに使われる方も多いでしょうが、新たな準備を行う、素晴らしい機会でもあります。ここでどんなことをしておくべきでしょうか。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 「春休み」は特殊な環境
春休みは、一年間の長期にわたる大きな仕事を終え、若干の安堵感に包まれるとともに、次年度の仕事をひかえつつも自分の担当は何も決まっていない、という特別な環境にあります。有給休暇をとって、心身共にリフレッシュを図るせんせいも多いですね。
また、転任が決まった場合は、今までの学校のあと処理をしたり、私物を持ち帰ったりと忙しい時期になります。そして、遠隔地への勤務が決まった方は、新天地での環境を整え住居などを探す必要があり、慌ただしい時を過ごすことになります。
いずれにしても、教員にとって、学年末は1年を振り返り、未来を見据える大切な時期ととらえられます。計画的に過ごさないとあっという間に終わってしまいます。この期を次年度への助走期間として位置づけたいです。
2 やっておくべき 振り返り
学校への提出物で、学級経営案の振り返りや報告事項などがあります。それはきちんと形式に基づいて整理し、しっかり振り返りましょう。管理職に見てもらい、指導を仰ぐということも自分の成長のためにはいいことです。
それとは別に、次のように、より深い振り返りもしてみませんか? 紙などに書き出してみるといいですね。
① 自分の姿(せんせい像)
●学級の児童にとって自分は価値あるせんせいだったか
●児童の将来に役立つ人生の指針となるせんせいだったか
●最適な学習を模索し一人一人の児童に学力をつけるせんせいであったか
② 研修歴
●いい授業をするためにどんな研修をしたか
●どこで何を学んだか
●どんな講師と出会いどんな影響をうけたか
③ 学習歴
●どんな本を購入して読んだか
●どんな講座に出たか
●どれだけ身銭を切って学んだか
④ 授業歴
●参観者がいる授業を何本公開したか
●公開授業後にどんなコメントやご指導があったか
●公開授業前と後ではどんなことが変わったか
⑤ 人との出会い
●学校関係者で新しく出会った人はだれか
●地域コミュニティ(保護者も含む)で新しく出会った人はだれか
●研究会や研修先(web上でも可)で新しく出会った人はだれか
⑥ 人に伝えられるもの
●自分が開発研究したもので人に伝えていけるものは何かあったか
●次年度の学年、あるいは次年度の担任に伝えるべきものは何か
●未来の自分に伝えたいデータやプリント類は何か
できなかったことを含めてこれらを整理するのにも春休みは絶好の期間です。きちんと課題や今後の方向性をとらえておきましょう。
3 やっておくべき 実務あれこれ
次の仕事がいつ決定されるか。春休み前、春休みの3月中、あるいは4月に入ってからなど…。それは地域や学校によって違いますが、状況によって、やっておきたいことは次のようなパターンになるのではないかと思います。内示などである程度次年度のことが分かったら、ぜひ考えてみてください。
① 初めて受け持つ学年、あるいはかなり久しぶりの学年を担任することになった場合
ア 該当学年の徹底研究!
該当学年の教科書、指導書などを読み、学習内容を俯瞰しておきます。重点にすべき単元や難しそうな内容について、頭に入れておきましょう。そして、だいたい何月ごろにどんな学習を設計すればいいか、流れをイメージします。また国語で出てくる文学的教材の作家の本、算数を進める上でのグッズ、社会科や理科で示してみたい資料なども合わせて考え準備するようにしたいです。
イ 学年の特徴や児童の個性などの情報把握!
新たな担当となる学年が歩んできた経歴や児童一人一人の個性などは、春休みまでに整理された前年度の資料が役に立ちます。
●学級経営案 ●学習の週案 ●学級通信綴り ●児童の記録
など、学級や児童に関する資料に目を通し、頭に入れておきましょう。
ウ 年間スケジュールの作成!
学校行事、学年行事、危機管理の訓練、生活科や総合的な学習で呼ぶべきゲスト、各教科の配置、PTA活動や学級懇談会などを年間計画に配置していき、年間のスケジュール感を把握します。
② 現在担任している学年を、再び担任することになった場合
ア 作った資料をバージョンアップ!
同じ学年を受け持つということは、ある意味ラッキーなことです。学習内容や学級づくりの方法の見通しが立ちやすいですし、ブラッシュアップすべき所も見付かりやすいですね。今年作成した資料(学級経営案・年間指導計画など)をもう一度読み返し、どんな点を改良しようか作戦を立てていきます。その際、これまでに発行してきた学級通信などはかなり役に立ちます。赤ペンを入れたり付箋紙を貼ったりしながら、加筆修正してより良いものを作っていきましょう。
イ 指導のツボを押さえる!
前年度の経験から、この教科はここに重点をおくべき、ここに時間をかけるべき、というツボのようなものが見えたのではないかと思います。一つずつ書き出してみて、重点をおく単元やポイントを明確化していくことが必要です。
ウ 事務仕事の効率化!
同じ学年をもつことで、事務作業の見通しが立ちやすく、効率よく進められます。昨年作ったデータを流用しながら、どんどん時短をしていきましょう。早めに事務処理や計画立案を終了し、あとは教室づくりや授業開き、学級通信発行計画、児童理解などの仕事にあたっていきましょう。
③ 現在担任している学級の児童をそのまま持ち上がりで受け持つことになった場合
ア 個々人の課題をより深く追求!
「Aさんは、九九の暗記があやしい」「Bさんは、くり下がりのひきざんの理解が不十分」「Cさんは、そうじをまじめにやらない」「DさんはLD傾向があって、文字を書くのが苦手」など、個々人の課題を整理しておきましょう。十分ケアができていない場合、ときには学習段階を戻したり、またときには重点的な指導をするなど、各児童に丁寧に向き合っていく準備をしましょう。
イ 学級で残してしまった課題の解決法を立案!
どうしても計画したものが未達成のまま残ってしまうことがあります。4月に「必達目標」として「全員○○○達成する」と目標を掲げたものの、様々な事情で達成できなかったということです。本来はあってはならないのですが、もし生じてしまったら、どこかでリカバリーをしなければならないです。計算の単元で、授業のはじめに計算ドリルで復習する時間を5分とるとか、できなかった運動をクリアするために、準備体操の時間に補助運動を入れるとか、様々な工夫を考えましょう。
ウ メッセージ入りのはがきを児童に送付!
継続担任に限ったことではないですが、春休みに定型のあいさつ文とその児童のいいところを記したメッセージはがきを送ることもいいことです。思いがけないはがきの到着に喜びます。次年度の最初の時期、児童はせんせいからもらったメッセージはがきを思い出しながらいいスタートをきることができそうです。こういったしかけをしておくこともいいことですね。
④ 担任の発表がなされていない場合
3月中に担任の発表がなされない場合、開き直って、個人の技量のブラッシュアップにあてましょう。
ア 個人研究のテーマ、あるいは個人的重点実践領域を設定!
できるせんせいと話すと、その年の自分のテーマをもっている人が多いです。教科指導でも領域指導でも、学校教育のどこからアプローチしてもいいです。アプローチのしかたを考え、テーマに基づき実践し、まとめていきたいです。
<テーマ例>
●日本中の漢字習得指導を集め、自分の教室に適したいちばんの指導法を探る
●児童が伸びる「言葉がけ」の事例を自分の教室の実践からまとめる
●保護者会で一人でも多くの保護者が集まるような工夫を考える
●社会科で「ひと」を中心とした授業づくりを1年間続けてみる
●教室便利グッズを創作する
●音楽鑑賞の指導法はどんなものがあるか情報収集する
●運動会で披露するダンスの自作振り付けを考える
●対時間効果が優れている計算力向上の方法を探る
<実践のすすめ方例>
●テーマに関する書籍を読む
●テーマに関する情報を集める
●指導計画をつくる
●指導計画をもとに、授業や指導をしてみる
●指導したことを振り返って成果と課題を整理する
●整理したことをまとめる(レポート化、冊子化、データ化)
●まとめたものを世に問う(まとめたものを配り指導助言批正を受ける)
こういった地道な歩みの1年間にしたいです。
イ ひたすら理論武装!本を読む!
よりよい実践を目指すなら、先人が残した知恵に学び、理論武装して臨みましょう。ネットだと、大抵の教育書であれば、思い立ったときにすぐ買え、すぐ入手できます。自分が興味のある領域の本をどんどん購入して、マーキングしたり、ノートにメモしたり、付箋紙を貼ったりしながら読んでいってほしいです。まさに教室実践に生かしていく武器を手に入れる読書をしていきたいです。
ウ ネット環境・人脈の構築!
教育実践家や教育研究者のブログなども参考になるものがたくさんあります。SNSでも研究グループを募集しています。ぜひこういった情報入手ができるものにアクセスし参加できるように、ブックマークをしたり、アクセスしやすいようにしたりしておくことが大切です。また、同じ勤務校にはいなくても、志を同じくするせんせいとSNSなどで繋がり、知見や思いを共有していきましょう。
4 もっと余裕があるなら…
ア 断捨離
1年間でたまった資料や文書をざっと見返し、情報価値が低いものや、もう使わなさそうなものは、思い切って捨てましょう。まず困ることはないですよ。迷った時は、画像などに撮ったり、スキャンしてPDF化したりして電子情報として保存しておくといいでしょう。そのデータは細かく分類しないで、ひとつのフォルダに放り込んでおけば楽です。
イ 小さな旅
日が長くなってきたので、春休みにはワンデートリップがオススメです。早起きしてちょっと遠くまで出かけ、自由な時間を楽んで、夕食をとって帰宅する。冬と違って、一日でも十分活動できますね。
この機会に行ってみたいところ、気になっていたところに出かけてみましょう。旅での体験は、これから始まる新年度の担任トークや授業のつかみなどに、かなり生かせます。
ウ 友と交流
採用年度が一緒の同期、学生時代の友人などと再会するのもこの時期オススメです。同じ教員ならば、お互いの学校の情報交換や苦労話への共感などもできますね。職種が違えば、話していく中で、違う景色もみえてくるはず。友と交流して人生を広げてくれるヒントをもらいましょう。友との交流は意義のあるものです。
◆
春休みをどう使うかで新年度のスタートダッシュに差が出ます。4月に入ると息つく間もないくらい忙しい時期になりますが、それに備えて春休みにじっくり充電して意義のあるものにしたいですね。新学期から始まるハードワークに耐えるため、ICT機器の整備や文房具などの整理、4月の儀式や初めての参観日に着る服などの準備もしっかりしておきたいです。
【参考図書】
『小二教育技術 2010年3月号』(小学館)野口芳宏論文・横田経一郎論文
イラスト/したらみ
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。