学校異動の季節に…! 離任と赴任のスピーチと心得について
教員にとって、春は出会いと別れの季節。異動対象者となれば、親愛なる児童や気の置けない同僚などと会えなくなります。その寂しさもつかの間、新学期は気持ちも新たにリスタート。新たな赴任先では、今後じっくりお付き合いする児童や同僚との出会いがあります。不安とワクワクが止まらなくなってきますね。こんな時期にふさわしいスピーチとは? そしてその心得も合わせて考えてみたいです。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 離任式にて(児童向け)
すべての学校が離任式を設定しているわけではありませんが、離任式で自分が送られる場合には、メッセージを考えておく必要があります。担任した児童や授業で関わり合いのあった児童だけでなく、全校生に伝えたいことを考えておきたいですね。
●ポイント1 在籍した学校や児童への思いを伝えましょう
●ポイント2 心に残るエピソードを用意しましょう
●ポイント3 これからも人はどこかでつながっているということにふれましょう
<スピーチ例>
わたしは、この学校に○年間お勤めしました。たくさんの思い出があるけれど、一番は、この学校伝統の運動会に取り組めたことです。全校生一丸となって頑張れました。6年生のリーダーシップのもと、応援練習や団体競技の練習、立て看板づくり、応援グッズづくりと、精一杯全力で取り組んだ毎日を思い出します。勝っても負けても全力でやったということが、自信につながっていきました。
あの日みなさんは汗と涙で輝いていました。
これからみなさんとせんせい(わたし)がこの学校で会うことはなくなります。とても寂しいです。
でもね。わたしたちの人生ってね。出会いと別れの繰り返しなんですよ。悲しいこともあるけれども、すばらしいこともたくさんあります。みなさんと出会えたことはほんとうによかったと思います。
あるとき、車が故障して立ち往生し、救援を呼びました。
そしたら、やってきてくれた修理サービスの方から、「あれっ、せんせいじゃない?」と言われました。何と、昔の教え子のA君だったのです。A君は大雨の中でも一生懸命、全身をびっしょり濡らしながらも車を修理してくれました。
そしてまたあるとき、病気で入院することになったのですが、担当してくださることになった看護師さんに、「せんせい、覚えていますか?」と言われました。彼女も、もと教え子のB子さんだったのです。
「せんせいに注射を打つなんて、緊張するなあ」と言いながら、優しく痛み止めを打ってくれました。こんなふうに、別れた後でも、どこかで人はつながりあっていくのです。
みなさんともどこかでまたお会いするかもしれないです。そのときは、よろしくね。
みなさん、元気でね。さようなら。
2 送別会にて(職員向け)
近年、コロナの影響もあってか、酒宴を伴う送別会ではなく、昼食会などに変える学校がほとんどになってきました。花束を手にしながら、あるいは拍手を受けた後、どんなことを話したらいいでしょうか。
●ポイント1 勤務した学校の印象を明るく振り返りましょう
●ポイント2 お世話になった方とのエピソードを披露しましょう
●ポイント3 自分の教育ポリシーがどう生かされたかを振り返り感謝の意を示しましょう
<スピーチ例>
わたしは本校に初任の時からお世話になり6年間勤務しました。商店街の近くにあり、常に賑やかで心がうきうきする学校でした。帰りにお惣菜を買っていくのも楽しかったです。特に○○屋のコロッケを食べると学校での疲労も一気に吹き飛びました。
右も左もわからないわたしに校長せんせい、教頭せんせいはじめたくさんのせんせい方が、手取り足取り教えてくださったことは今でも強く心に残っています。
チョークの持ち方や黒板の消し方、画鋲を使った掲示物の貼り方など、学生の頃は全然知らなかったことを現場で教えてくださったことは、一生の財産になります。
それから体調を壊して何日かお休みをいただいたことがありました。すぐメールなどで励ましていただきました。本当に心強かったです。養護教諭の○○せんせいは、すぐ食べられるものを…ということで、たくさんの食べ物を、わざわざ自宅まで持ってきてくださいました。命がつながった感じがします。
このようにただの同僚というのではなく、みなさんは、わたしにとって、お父さん、お母さん、お兄さん、お姉さんのような存在でした。支えられているということを実感した6年間でした。来春から□□□小学校へ行きます。本校で教えていただいたことを基盤にしっかりと勤めていきたいと思います。本当にありがとうございました。
離任時の心得
学校を去るときには、まわりの方々から気持ちよく送り出してもらいたいですね。「立つ鳥跡を濁さず」とよく言います。
後に残る人にとって、見苦しくないように。また、働きやすいように。環境をきれいに整えていくという意味合いが一つです。そしてもう一つは、気持ちのわだかまりを残さず潔く身を引く、という意味合いが込められています。
Ⅰ.公費で購入したものはすべて学校に置いていきましょう
児童のために購入した画用紙や色紙など、個々人が使う消費物は、基本的にはその年度で児童に分けて持ち帰らせます。でも、きちんと人数分で割り切れない場合は、次年度に持ち越して流用するのが妥当です。その場合は、保護者さんにきちんと伝えたいです。
共有して使うような道具や、研修図書なども、きちんと次の担任に引き継ぎし、おいていくようにしましょう。
Ⅱ.貸与されたものはすべて返却しましょう
学校から貸与されたもの、例えばホイッスル、文房具、ファイルなどは所定の場所に返却します。学校を去ることが決まったら、取りこぼしを防ぐためにも、こういったことは早く取り組みましょう。
Ⅲ.教室や職員室の事務机については、できるだけピカピカにしましょう
新しい学校に赴任してみると、前任者が残していった机がめちゃくちゃな時があり、がっかりします。
事務机は水拭きしましょう。引き出しを机から抜き取って、隅々まで綺麗にするのが理想です。後任者に不快な思いをさせないようにしましょう。
3 赴任式(新任式)にて
新しい学校に行った時は、第一印象が決め手です。丁寧な挨拶の言葉は、あまり必要ないと思います。なぜなら、これから新たに、語るべき思い出を共に作っていく相手だからです。
例えば、明るくさわやかなイメージを持ってほしい…など、良い印象付けを目指したいですね。児童の前で紹介される赴任式(新任式)であれば、全校児童からの注目を一身に浴びることになります。ここは絶対に外したくないですよね。
●ポイント1 名前を覚えてもらう工夫をする
まず、短くてインパクトある方法で、名前を覚えてもらいましょう。
例えばアクロスティックを使って…。
『わたしは「田中」と言います。「たくましくて」「なんでも食べて」「かっこいい」から、田中です!』 …と言った具合です。
かなり覚えてもらえますよ。あとで、「せんせい、でも全然かっこよくない」なんて言われますが…。
●ポイント2 「アイテム」を用意する
得意なスポーツの道具、演奏できる楽器などがある人は、ぜひ持ち込まれてはどうでしょう? わたしは自分が卒業した母校に赴任したとき、リコーダーで母校の校歌を演奏しました。これが、結構な注目を集め、大成功でした。
簡単な手品を披露するせんせいも見たことがあります。これも相当に受けていました。しかし、折りに触れ「せんせい手品やって」とせがまれることになりますが…。
●ポイント3 この学校に来た喜びを伝える
最後は、赴任した喜びを伝えたいですね。「前々からこの学校に来たかった」「みなさんと会えてうれしい」「この学校は○○が有名だからとても興味がある」などということですね。ぐっと親近感がわきますよ。
赴任時の心得
新たに赴任する学校では、やはり、周囲に早く打ち解けることを第一に考えたいですね。借りてきた猫のような、微妙な距離感の状況が続くと、自分も周りも疲れてしまうものですよね。
Ⅰ.すぐ仕事ができるよう、最低限のグッズを用意しておく
支給されるパソコンやタブレットのほか、印鑑や文具、使い慣れたアイテムなどを揃えておきましょう。赴任したその日から、フルスロットルでの仕事ができるように!
Ⅱ.前年度のうちに赴任先の学校の資料を読み込んでおきましょう
学校の教育計画書や前年度の学校経営概要書、校内研究会の資料は、完璧でないにせよ、読み込んでおきたいです。幹部職員として迎えられる人の場合は、赴任前に会議に入ってほしいと要請されることもありますよ。
Ⅲ.学区にある有名な商業施設やお店、観光スポットなど、雑談用のネタ準備する
学校の現業スタッフや事務スタッフとは、意図的にこちらから接する態度をもたないと、なかなか話すことがないです。こういった話題を準備しておき、ちょっとした合間に雑談できるようなきっかけを作りましょう。気易く頼みごとができるような空気感を、早めに作っておけると楽ですよ。
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学校の教員としての別れと出会いの演出をきちんとしたいです。ちょっとした心得をもっていると、すべてうまくいきますよ。しっかり準備し、しっかり実行して、さあ、新しい出会いに向かいましょう!
イラスト/したらみ
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。