「アカウンタビリティ」とは?【知っておきたい教育用語】

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「説明責任」を意味する、アカウンタビリティ。公的な場面で、ますますアカウンタビリティが問われるようになってきています。

執筆/茨城大学大学院教育学研究科教授・加藤崇英

アカウンタビリティ」とは

アカウンタビリティとは、一般に「説明責任」と訳されています。意味としては、生じたこと及びその生じた理由について、満足のある説明がなされることが求められる状況や状態を指します。

ニュース等では、不祥事を起こした行政や企業が社会的責任や道義的責任を問われて、「説明責任を果たしていない」と批判されることがあります。学校や教育委員会が「説明責任」を問われ、謝罪会見するといった様子が報道されることもたびたび目にします。今日、とりわけ公的な組織は「説明責任」、つまりアカウンタビリティを問われることが多くなっていると言えます。

アカウンタビリティをめぐる関係性

アカウンタビリティは、本来はこれをめぐる関係性において、まず整理される必要があります。すなわち「誰が、誰に対して」という「主体」と「客体」の関係です。

いわゆる「5W1H」の観点から、
「いつアカウンタビリティを果たすのか(when)」
「どの程度のアカウンタビリティを負うのか(what level)」
「誰がアカウンタビリティを負うのか(who holds)」
「誰に対してアカウンタビリティを負うのか(to whom)」
「何に関してアカウンタビリティを負うのか(for what)」
「どのようにしてアカウンタビリティを果たすのか(how)」

が問われ、これはつまり「目的と手段の関係を明確化」する必要があるということです。

アカウンタビリティをめぐる法的責任と意味の広がり

また「説明責任」は、ただ“説明すればよい”ということに限りません。つまり、ただの説明では内容的には十分ではないともいえるのです。

アカウンタビリティの定義に関する検討では、先に指摘したような「主体」と「客体」の特定の「関係」を前提としたうえで、課題に対して「応答」(responsiveness)することについて、「法的責任」を負い(liable)、その課題の履行状況を合理的に「説明」できる(answerable)ことと指摘されています。

そして学校に対しては、「①納税者・地域住民の期待・要求に『応答』し、②その期間が設定した目標に従って、投下された公教育費に見合う教育効果を挙げる『責任』を負い、③実際の教育方法や効果について『説明』できること、が求められている」と指摘されます。

アカウンタビリティという言葉自体は、教育の費用―効果に厳しい米・英の影響もあって、教育に用いられる費用(特に公教育費)に見合った教育効果をあげられるだけの責任を負っているという意味で、わが国でも研究などでは1970年代頃から用いられてきました。

加えて「80年代頃からは、学校のもつ教育病理の拡大と相まって学校の役割、機能が学校論として問い直され始めた時点では、学校のもつ社会的、道徳的な意味での『責任性』に焦点がどちらかといえば移った中で使われてきた」と指摘され、さらに「選択によって学校を活性化させ、学校本来の『責任性』をとらせるという発想」も加わるなど、「概念は拡大してきた」と指摘されます。

アカウンタビリティの定義

以上の諸検討を踏まえれば、アカウンタビリティの定義については以下のようにまとめられます。

すなわち狭義には、もともとのアカウンタブル(accountable)の語源が「アカウント(account)=数える、合算する、計算する」にあり、ゆえに費用対効果を含めた内容に関する説明義務にあると言えますが、加えて、社会的・道義的責任という伝統的な関係性に関する責任を明確に説明する義務をも含んで広義に解釈されるようになってきたと言えます。

さらに言えば、ここに法的な義務がシステムや制度をも伴って整備されてきました。つまり、今日、学校のアカウンタビリティは、学校が果たすべきコンプライアンス(法令遵守)とセットになっていると捉えることができます。よって、「説明責任」は、ただ“説明すればよい”といった範囲にとどまらず、学校の教育課題を遂行し、かつその経営プロセスを説明するという一連の責任であると言えます。

アカウンタビリティ確保のための制度の整備

2000年代以降、学校のアカウンタビリティを強化するための制度が整えられてきました。その最たるものは、学校評価であり、2002年に努力義務として、また2007年に義務化されました。また、学校運営協議会(コミュニティ・スクール)についても、学校の説明責任を強化する機能があると指摘できます。

さらには、例えばいじめを例に挙げれば、いじめ防止対策推進法によって、学校や教育委員会は「いじめの防止等のための基本的な方針」や「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」等に従って、いじめ対策の体制を整えていることが義務化されていると言えます。つまり、そのような方針やガイドラインの履行は、今日、コンプライアンスを果たすうえで重要であり、同時にアカウンタビリティを確保・強化する関係になっています。

学校・教育委員会に求められるアカウンタビリティ確保の課題

学校教育全体として見れば、アカウンタビリティは、社会的責任として国全体がこれを受け止め、そして法制度化されるという意味で個々の学校に求められるようになってきました。このように国全体としてアカウンタビリティをめぐる法制度の整備が先行してきたと言えます。しかし、本来の在り方からすれば、個々の学校が直接の関係者とともにアカウンタビリティの内実を確認していく必要があるでしょう。

「開かれた学校づくり」を推進するために、コミュニティ・スクールの制度が進展し、この制度を導入する学校が増えています。つまり、そのようななかで、学校の自主性・自律性の観点からは、個々の学校が自ら主体的に学校の内外の関係者とともに対話を重ね、信頼関係を構築し、連携・協力していくことが、アカウンタビリティの中身を確認するとともに、これを確保し、強化していくことにつながるといえます。

▼参考資料
平田淳「教育におけるアカウンタビリティ 概念の構造と構成要素に関する一考察」弘前大学教育学部紀要100号 P89-98、2008年10月
沖清豪「教育におけるアカウンタビリティ : 学校教育と大学との比較(III-6部会 学校(2))」日本教育社会学会大会発表要旨集録(46) P173-174、1994年10月
沖清豪「イギリスの教育行政機関における公共性―非省庁型公共機関(NDPB)とそのアカウンタビリティ」教育学研究 第67巻4号、2000年
中留武昭「アカウンタビリティ」(安彦忠彦他編『新版 現代学校教育大事典』ぎょうせい)、2002年

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