小4国語「初雪のふる日」板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、「初雪のふる日」です。この物語文を読んで感じたことをまとめ、伝え合うという学習活動です。そのなかの不思議な世界への入り口と出口を考える、女の子の気持ちや気持ちの変化を読み取る場面です。子供たちが読み取る手がかりとなる、心情の曲線を使った板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立小学校教諭・小澤綾華(せせらぎの会)

 

単元名 読んで感じたことをまとめ、伝え合おう
教材名 「初雪のふる日」(光村図書 4年)

単元の計画(全8時間)

第一次 単元のめあてを確認し、学習の見通しをもつ。(2時間)
1 本文を読み、初発の感想を書く。
2 感想を交流し、学習計画を立てる。

第二次 叙述を基に物語を読み、自分なりの解釈をもつ。(4時間)
3 話の大体を捉える(不思議な世界への入り口と出口を考える)。
4 物語の展開に沿って、女の子の気持ちを考える。
5 女の子の気持ちの変化を読み取る。
6 叙述を基に物語に対する印象を200字程度で書く。

第三次 物語の感想を交流し、学習をまとめる。(2時間)
7 考えをまとめた文章を読み合い、交流する。
8 別の物語を読み、同じ物語を読んだ子供同士で交流する。学習を振り返る。

板書の基本

〇「時間の経過」と「出来事」をわかりやすく示す板書

「初雪のふる日」は、絵巻物のように話が展開され、テンポよく場面が移り変わっていきます。文章が長いため、キーワードを中心に整理して板書します。

「時間の経過」をわかりやすく示すために、3/8~5/8時間目の板書では、黒板の上部に長い横線を引きます。その線の下に、不思議な世界の入り口だと考えられる叙述や、女の子の気持ちが表れている叙述などを見つけて、本文から抜き出し、板書します。

また、着目させたい叙述には色チョークで波線を引いたり、話のまとまりごとに短冊を貼ったりすることで、話の展開や女の子の心情などを整理しながら読み取ることができるようにします。

〇一人一人の感じ方の違いがわかる板書

本作品は、着目する表現によって多様な感想や解釈が生まれてくる物語であるため、子供たちの「感じ方の違い」が表せるような板書づくりを心がけます。

3/8時間目の「不思議な世界」への入り口を見つける学習では、子供の考えを複数板書することで、いろいろな考え方があってよいことに気付かせます。

また、4・5/8時間目の学習では、女の子の気持ちの変化を読み取るために、言動に着目して話し合う場を設けます。子供の発言は、一人一人の感じ方の違いが表れるよう、整理して板書します。

読み取った気持ちの変化を心情の曲線(矢印)で表してみると、矢印の向きは一定とは限らないことから、同じ物語を読んでも、話の捉え方や感じ方は様々であることに気付かせます。

板書を活用した授業の進め方(3/8時前半)

小4国語「初雪のふる日」板書の技術 板書
3/8時前半の板書

1 既習の学習を振り返り、本時の学習のめあてを確かめる

これまでに学習したファンタジー教材から、「現実の世界」→「不思議な世界」→「現実の世界」の構成を確認します。本時のめあて、「不思議な世界の入り口と出口を考えよう。」を板書し、めあてに沿って話し合いながら物語の大体を捉えることを伝えます。

2 「不思議な世界」の入り口を考える

「不思議な世界」の入り口について、次のような手順で話し合います。

①黒板の上部に長く横線を引き、時間の経過を表すことを伝えます。現実の世界のカード(緑)を貼り、その下に、時と場所がわかる叙述を板書します(時…「秋の終わりの寒い日」、場所…「村の一本道」)。

②「不思議な世界」の入り口だと思う表現を見つけて、教科書に線を引かせます。入り口だと思う叙述と、その理由を発表させ、整理しながら板書します。

③話し合った結果、入り口だと思う理由の根拠となる叙述に赤チョークで波線を引きます。そして入り口として捉えた4つの箇所を黄色チョークで区切り、「考え①」~「考え④」と示します。入り口についての解釈は、複数あってよいことと、それぞれに理由があることを押さえます。

④真っ白いうさぎが現れて追いかけてくる場面は、間違いなく「不思議な世界」に入っているので、板書「真っ白いうさぎ」の上に不思議な世界のカード(オレンジ)を貼ります。

〈「不思議な世界の入り口」だと考える表現とその理由〉
考え①・石けりの輪に飛びこんでみました。
 →「ぴょん」と自分から飛びこんでしまったことから、不思議な世界に入ってしまったと思う。

考え②・「おや、元気がいいねえ。」と店番のおばあさんが言いました。
 →おばあさんは白うさぎの味方(女の子の敵)なのではないかと考えたから。
 ・おかし屋の前では、大きな犬が歯をむき出してほえました。
 →犬は警告をしてくれているのではないか(女の子の味方か)。以前にも女の子と同じ境遇になった子がいたのではないかと思ったから。

考え③・バスのていりゅう所の辺りまで来たとき、ほろほろと雪がふり始めました。
 →雪がふり、よくないことが起こりそうな予感がするから。
 ・空はどんよりと暗くなり、風も冷たくなりました。
 →白うさぎは雪とともに現れたと思ったから。女の子の周りの様子がだいぶ変わってきたから。

考え④・そうつぶやいたときです。「かた足、両足、とんとんとん。」
 →急に場面が変わることを意味していると思ったから。

 「不思議な世界」の出口を考える

出口はわかりやすいので、根拠となる叙述を発表させ、板書します。「現実の世界」に戻ってきたことがわかる表現「気がついたとき」「知らない町の知らない道」と、「不思議な世界」からの出口だとわかる表現「よもぎ、よもぎ、春のよもぎ。」を板書し、2つの叙述の間に黄色チョークで縦線を引きます。

現実の世界のカード(緑)を貼り、キーワードには赤チョークで波線を引きます。

4 振り返りをする

授業を通して感じたことを話し合い、一人一人の感じ方に違いがあることを伝えます。 

板書を活用した授業の進め方(4/8時中盤)

小4国語「初雪のふる日」板書の技術 板書
4/8時中盤の板書

1 本時のめあてを確かめる

本時のめあて「女の子の気持ちの変化を読みとろう。」と板書します。気持ちの変化は「言葉や動作から考える」ことを確認し、赤チョークで補足します。

2 女の子の気持ちを読み取る

時間の経過を示す横線を引き、現実の世界(緑)と不思議な世界(オレンジ)のカードを貼ります。

女の子の気持ちを読み取る指導の手順は、次の通りです。

①女の子の気持ちが大きく変わったところを中心に5つの柱を立て、ピンクの短冊を貼ります。

②女の子の気持ちがわかる言動を見つけ、教科書に線を引かせます。そのときの気持ちを想像させ、吹き出しを作って書き込みをさせます。(1人学び)

③書き込んだことを発表させます。発言を受けて、女の子の気持ちがわかる叙述を白チョークで、想像した気持ちを叙述の右横に黄色チョークで板書します。

小4国語「初雪のふる日」板書の技術 板書

板書を活用した授業の進め方(5/8時後半)

小4国語「初雪のふる日」板書の技術 板書
5/8時後半の板書

※本時は4/8時と連続した板書となります(4/8時の板書を残しておきます)。

1 本時のめあてを確かめる

めあてを確かめます。前時の学びを受け、女の子の気持ちの変化をさらに深く考えていくことを伝えます。

2 女の子の気持ちの変化を考える

女の子の気持ちの変化を心情曲線(矢印)で表すことを伝えます。黒板の上部が「うれしい・楽しい」という気持ち、下部が「こわい・いやだ」という気持ちを表すことを知らせ、ピンクと青のカードを貼ります。

板書を基に、女の子の心情の上がり下がりを考えさせ、理由とともに発表させます。心情の変化は、赤チョークの矢印で表し、子供たちの意見が分かれるところは、2方向の矢印にします。

〈読み取りの例〉
①白うさぎを見た
〇「ゆめを見ているような気」を根拠に女の子の気持ちの変化を考えさせます。
…「気持ちの変化はない」という意見を受けて、横ばいの矢印(←)を引きます。
…「不思議だなと思ったので、少し不安があると思う」という意見を受けて、下降した矢印(↙)を引きます。
※以下同じように心情の上がり・下がりを矢印で表していきます。

②おばあさんの話を思い出した
〇「どきっと」
…「おそろしい話と同じく、自分も雪のかたまりになってしまうのではないかと思う」という理由から、大きく下降する(↙)
〇「わたしも(おまじないを)やってみよう」
…もとに戻れるという希望が出てくるから少し気持ちが上昇する(↖)
…まだ不安に思っているから、横ばい(←)

③おまじないが唱えられない
〇「どうしても~唱えることができない」
…より下降する(↙)
〇「ほほは青ざめ~」
…気持ちは絶望に向かっているから、さらに下降する(↙)

④よもぎの葉を見つけた
〇「だれかにはげまされているような気」
…徐々に希望が見えてきたから、上昇していく(↖)
〇「だんだん温かくなり~」
…気持ちが楽になり、安心して、さらに上昇する(↖)

⑤町の人に取りかこまれる
〇「ああ、助かった。」
…現実の世界に戻ってこられたことがわかり、安心して気持ちが上昇する(↖)

子供たちの発表に合わせて、黒板に矢印を書いていきます。また、女の子の挿絵カードも心情の上がり・下がりに合わせて移動します。

 

構成/浅原孝子

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