小1国語「ずうっと、ずっと、大すきだよ」京女式板書の技術
今回の教材は、物語文の「ずうっと、ずっと、大すきだよ」です。「読んで感じたことを話そう」という学習活動の単元の最終の時間を紹介します。最終の時間は、自分だったらどうするかという話し合いの学習です。話し合いをわかりやすくするためのYチャートを活用した板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子
教材名 「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(光村図書)
目次
単元の計画(全8時間)
1 お話を読んで、お話の大体をつかむ。
2 お話を読んで、「いいな」「すきだな」「どうしてかな」と思ったところを発表し合い、学習計画を立てる。
3・4 「いいな」「すきだな」を基に、お話を読む。
5 「どうしてかな」を基に、お話を読む。
6 ぼくが、エルフのことが大好きだとわかるところを見つける。
7 ぼくは、なぜ、となりの子にバスケットをあげたのかを考える。
8 自分だったら、バスケットをあげるかどうかを考える。
板書の基本
〇学習活動として「よんで かんじた ことを はなそう」と示しています。教材からは、「ぼく」がエルフを大好きだということが伝わってきます。さらに、絵を文とつなぐと、より深く、エルフに対する「ぼく」の気持ちが広がっていくように仕組まれています。
「エルフ」に対する「ぼく」の態度や気持ちを繰り返すとともに、「エルフ」に対する「にいさん」や「いもうと」の関係や態度の対比によって、「ぼく」の気持ちが強調されています。
〇学習の手引きである「がくしゅう」においては、「おはなしを よんで、おもった ことを はなしましょう。」「エルフは、どんな ふうに かわって いきましたか。たしかめましょう。」など、話す内容の手がかりを示しています。
手引きを参考にして学習する力はまだ育っていないので、「すきなところ」「思ったところ」を発表させ、授業を進めました。その中に、となりの子が子犬をくれるといったことに対しての「かわりに、ぼくが、エルフの バスケットを あげた。」という文について、「じぶんだったらどうするか」とつぶやいた子がいました、そのつぶやきを耳にした子が、自分の感想を口にしました。そこで、「じぶんだったらどうするか」ということを、「かんじたことを はなそう」の話題にしました。そのときの記録が、次に示す板書です。
板書のコツ(8/8時前半)
板書のコツ①
「めあて」に「じぶんだったらどうするかをかんがえて、おともだちとはなそう。」と板書をしました。このめあての意図は、「ぼくより、その 子の ほうが、バスケット いるもんね。」という叙述を基に、エルフの気持ちを深く考えてほしかったからです。
叙述から離れる話し合いになっても、1年生として、感じたことやわかったことを「共有」する学習へと高めようとした「めあて」です。
板書のコツ②
文章を音読した後、「めあて」の言葉である「じぶんだったらどうする」ということを発表させました。教材では、「バスケットをあげた」と書いています。しかし、子供たちの発言は、「あげる」「あげない」に分かれました。反対の考えが出ると、子供たちは、元気になりました。自由に話をさせるだけでなく、自分の考えはどこにあるのかということをわかりやすくするために、「あげる」「あげない」「わからない」の3つのスペースを設けた板書にしました。
板書のコツ③
3つのスペースをYチャートにしました。それは、学習指導要領「知識及び技能」の内容である「情報と情報との関係」を見据えたからです。右から左へ順番に書くことにより、自分の発言の位置に気付かせるようにしました。
板書のコツ(8/8時後半)
板書のコツ①
発言を自由にさせるのでなく、「あげる」「あげない」「どちらでもない」という結論を言ってから、理由を発言するように指導をした後、自由に意見を発表させました。
最初は「あげる」という考えが次々と出ました。
「となりの子のほうがひつよう」という意見が多く出ました。「バスケットがいるもんね」という叙述を基にした考えであることが理解できるように黄色のチョークで線を引きました。
板書のコツ②
次に、「あげない」の意見を発表させました。「思い出をのこしたい」「思い出のバスケットがまだいる」という考えが出ました。教材には出てこない言葉でした。しかし、少年のエルフに対する愛情を「思い出」という言葉に表した子供の思いを大事にして、「思い出」を赤チョークで囲みました。
板書のコツ③
Yチャートの効果は、発表の順序について子供が理解できたことでした。1年生は、意見を発表するとき、「あげる」「あげない」を自由に発表させると、混乱するからです。今は、何を発表しているのかということがわかったということで、Yチャートは、効果がありました。また、「わからない」のところが空白になったことで、「あげる」「あげない」の2つの意見があったことを理解できる板書になりました。
構成/浅原孝子