すぐに終わりがちな自学を、楽しく長続きさせるアイデア【自学をやってみよう! #2】

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大阪府公立小学校教諭

松下隼司

この記事では、苦手意識をもっている子も自学をやってみたくなるようなアイデアを紹介しました。でも、一度取り組んではみたもののすぐに自己学習への興味を失ってしまったとしたら、大変もったいないことですよね。そこで今回は、自学を一過性のブームで終わらせないための楽しいアイデアをお伝えします!

劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。

指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司

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自学のハードルを下げて子どものやる気を引き出す【自学をやってみよう! #1】

ポイントを貯めたら、その日は宿題なし

今まで、自学を定着させるためにいろいろな工夫をしてきました。

  • 口頭でほめたり、コメントを書いてほめたりする。
  • (本人の許可をもらって)クラスの子どもたちに紹介する。
  • 教室や廊下で掲示する。
  • 自学ノートの表紙にごほうびシールを貼る。
  • 連絡帳に書いてほめる(子どもが自学を頑張っていることを保護者に伝える)。

どれもそれなりに効果があったのですが、勉強嫌いの子ども、自学がなかなか長続きしない子どもに一番、効果があった工夫が、自学のポイントカードです。

「ポイントカード」という響きが、子どもにヒットしたのだと思います。

大人だってそうですよね。ラーメン屋さんやうどん屋さんのポイントカード、服屋さんのポイントカード……私もいっぱい持っています。「ポイントが貯まったら500円オフ」などの特典が目当てで、ついつい通ってしまいます。

もちろん、特典として、子どもにお金や物をあげるわけにはいきません。

いろいろと試行錯誤してヒットした特典が、「ポイントを貯めたらその日は宿題なし」でした。

私は、宿題なしになる日を「ポイントが貯まったその日」として限定しましたが、子どもが自由に選べるようにするのも楽しいかと思います。

「放課後の習い事があるから、特典を使います」
「今日の宿題は嫌だから特典を使います」
「誕生日だから特典を使います」

と、自学の取り組みに躍動感が生まれて楽しくなるはずです♪

⇩画像をクリックして、未使用のカードをダウンロードできます!⇩

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2回、3回と特典を貯めて連続で使ってくるような、やんちゃな子も出てくると思います。それに負けじと、こちらも特典の有効期限を設けたりするのよいでしょう。そうした駆け引きを楽しむことも、自学の意欲へと繋がっていけばよいなと思います。

ポイント加算のタイミング

ポイント加算は、自学ノートの提出1回で1ポイントを基本としています。

ページ数換算で、1ページにつき1ポイント加算にしたこともあったのですが、1ページにつき1分くらいしかかけていないような、ものすごーーく適当なノートを10ページ作って、「やった! 10ポイントゲット!」と申告してくる子どもも出てきました。

そういった子どもとのやりとりは本当に楽しいです。町のお店なんかでも、そういう裏技好きというか、間違った方向に知恵の回る大人、ちょくちょく見かけますよね。そして、それをスマートにお断りできる店員さん、かっこいいなぁって思います。
私も叱るのではなく、「10ページに何分かけましたか? またのお越しをお待ちしております♪」といった感じで、柔らかく対応します。

自学としての合格ラインの塩梅は、私は「30分程度はかけているか」としています。

数十秒で終わるような内容を自学として認めていたら、本当にその子のためになるか、その子の成長につながるかを考えるようにしています。

自学をやって、自学ノートを提出したことは、「えらい! すごい!」とものすごーーくほめます。さらに、「全部で何分かかりましたか?」と具体的に努力をねぎらうことも忘れません。

数十秒でやってきた自学ノートに対して、ポイントカードのハンコを押して宿題なしにしていたら、保護者からの不信を買うことにもなる可能性もあります。「適当な先生やな」「あんなので自学? それで宿題なし?」と……。

ハンコは教師が押す

ポイントカードにハンコを押す作業を、子どもに任せていたこともありました。でも、どれだけ忙しくても教師が押した方がいいと思い直し、私が押すようになりました。

きっかけは、よく行くラーメン屋さんです。会計のとき、店員さんにポイントカードにハンコを押してもらう瞬間がとても幸せだからです。また一段、そのお店のファンとして認められたような気持ちにさせてくれるからです。来てよかったと思います。また来ようと思います。

ハンコを押すという行為自体が、ほめることと同じなのだと思います(もしかしたら、ほめ言葉よりもインパクトが強いかもしれません)。ハンコを押しながら、「頑張ったね」などほめると、子どもはとても嬉しそうな表情をしてくれます。そんな子どもの表情を見ると、疲れが吹っ飛びます。自分自身が幸せになります。教師の仕事って本当に楽しいなーと感じます。

自学を子ども目線で考えると……

自学は、子どもにとってかなりハードルが高いものです。放課後の「遊ぶ時間」「のんびりする時間」を削られるのですから。習い事で忙しい子どもだっています。普段の宿題もあります。

たまにはポイントと引き替えではなく、自学に取り組んでもらうために、その日の宿題をなくすなどの配慮をして、自学に取り組む時間と意欲をつくるのも必要かと思います。

普段の宿題にプラスして自学をするのでは、大きな負担を感じる子どももいるからです。

もっといえば、宿題も本来は、絶対にしなければならない(学校が出さなければならない)ものではないのです。

帰宅後は、家庭の管理するところであり、学校が管理するものではないからです。

私も家で仕事をすることはありますが、管理職からの職務命令ではありません。

宿題も自学も「する」「しない」は、子どもの自由です。それを無理強いさせると、子どもも教師もしんどくなってしまいます。子どもも教師も楽しく、無理なく続けられるのがいいかなと思います。

松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ、横井智美

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