あなたの学校の進捗をチェックする10のこと【妹尾昌俊の「半径3mからの“働き方改革”」第22回】
学校の“働き方改革”進んでいますか? 変えなきゃいけないとはわかっていても、なかなか変われないのが学校という組織。だからこそ、教員一人一人のちょっとした意識づけ、習慣づけが大事になります。この連載では、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた妹尾昌俊さんが、「半径3m」の範囲からできる“働き方改革”のポイントを解説します。
執筆/教育研究家・一般社団法人ライフ&ワーク代表理事・妹尾昌俊
目次
働き方「改革」になっているのか?
読者のみなさんの学校では、働き方改革や業務改善は進んでいるだろうか。掛け声だけはあるが、ほとんど中身は進んでいないという学校も少なくないのかもしれない。ノー残業デーなどは設定されていても、結局他の日にしわ寄せが来るだけといった例も多い。
やっかいなのは、残業の「見えない化」が進んでいることだ。民間企業でも指摘されている現象で、勤務時間の過少申告が起きたり、持ち帰り仕事が増えたりするなど、見えてこない時間外業務が膨らむ事態である。学校でも、残業時間が80時間を超えたりすると、教育委員会や校長から怒られる、指導が入るということで、過少申告の例もあると聞く。
これでは働き方「改革」と大々的に言える代物ではない、「改悪」になる可能性もある、との見方もできるだろう。
10のチェックリスト
こうした点は留意しつつも、結局のところ、学校や教職員が担ってきた業務のスリム化、業務改善が進まないかぎり、長時間労働は解決しない。
また、教員定数改善などの環境整備も必要であるが、財務省から見れば、人を増やしても、仕事が減らないようでは、際限のない財政支出に見えて、OKとは言えないであろう。学校だけが頑張れという話では全くないのだが、学校や自治体単位での業務改善は不可欠である。
私は、校長等への研修などで、次の10のチェックポイントについて振り返ってもらっている。「バッチリです:2点、少しやってます:1点、ほとんでできてません:0点」とすると、20点満点となるから、一度、診断してもらいたい。低い点は、校内外で今後の対策を話し合ってほしい。
働き方改革10のチェックリスト
■意味づけ、動機づけ
①なぜ今、働き方改革が必要か、教職員の間で共有できていますか?
■現状把握、分析
②時間外勤務時間について、平均値や月80時間オーバーの割合といった丸めた数字だけでなく、個々の教職員の状況を、校長はある程度把握していますか?
③長時間勤務や休日出勤(補習、部活動等を含む)が続く人がいる場合、その背景や内訳(何に時間を要しているか等)について情報収集し、分析できていますか?
■組織マネジメント
④自校の重点的な課題、またカリキュラムの重点は、明確になっていますか? 多方面に力を割き、ビルド&ビルドな(次々に新しい業務を加えるだけで整理を行わない)学校経営になっていませんか?
⑤一部の教職員の負担が重い場合、業務量の調整や役割分担の見直しなどを図っていますか?
⑥学級運営や授業準備、保護者対応等について、校長または副校長・教頭は、若手教員等の悩みを聞いたり、解決を支援したり、育成したりするなどの時間を十分にとれていますか?
■業務改善
⑦「ノー残業デーを設けています」、「○○時には帰るように呼びかけています」、「会議を見直しました」といった取組で満足していませんか? これら以外も実行できていますか?
⑧教員がやるべき業務、あるいは教員でしかできない業務を見定め、それ以外のことについては、ほかのスタッフや家庭・地域等と協力・分担できないか検討していますか?
⑨教員のやるべき業務(たとえば、授業や行事の準備、進路指導等)についても、教材などの過去の蓄積の共有・活用、企業・NPO等の外部との連携などを通じて、負担軽減と質の向上を図れていますか?
⑩部活動について、休養日の設定・遵守や適正な部活動数の検討(部活動数の精選)を進めていますか?
※参考:妹尾昌俊『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、中原淳ほか『残業学~明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?~』(光文社新書)
『総合教育技術』2020年1月号に加筆
野村総合研究所を経て独立。教職員向け研修などを手がけ、中教審・働き方改革特別部会委員などを務めた。主な著書に『変わる学校、変わらない学校』『学校をおもしろくする思考法』(以上、学事出版)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、最新著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP研究所)がある。