特別支援学級の急増に思うこと<前編>~スクールソーシャルワーカー日誌 僕は学校の遊撃手 リローデッド⑦~


虐待、貧困、毒親、不登校──様々な問題を抱える子供が、今日も学校に通ってきます。スクールソーシャルワーカーとして、福岡県1市4町の小中学校を担当している野中勝治さん。問題を抱える家庭と学校、協力機関をつなぎ、子供にとって最善の方策を模索するエキスパートが見た、“子供たちの現実”を伝えていきます。

Profile
のなか・かつじ。1981年、福岡県生まれ。社会福祉士、精神保健福祉士。高校中退後、大検を経て大学、福岡県立大学大学院へ進学し、臨床心理学、社会福祉学を学ぶ。同県の児童相談所勤務を経て、2008年度からスクールソーシャルワーカーに。現在、同県の1市4町教育委員会から委託を受けている。一般社団法人Center of the Field 代表理事。
通常学級に “不適応” な子が、特別支援学級に
受け持っている小・中学校を回る中で、ここ数年、特別支援学級が格段に増えたなあ、と感じています。
特別支援学級とは、障害のある子供を対象にした少人数の学級で、小・中学校に設置されています。
自立に向けた活動や柔軟な学習指導など、個々の子供のニーズに応じて、障害による学習や生活の困難さを克服する指導を行います。知的障害や肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害と、障害種別に学級が編成されています。1学級の定数は8人で、9人になると学級増になります。各学年1~2学級の規模の学校なのに、特別支援学級が8学級もあるところもあります。
この中で特に増えたと感じているのが、自閉症・情緒障害学級です。
自閉症・情緒障害学級では、「基本的な生活習慣の確立」「コミュニケーション能力の向上」「基礎学力の向上」を目的とした指導が行われます。障害への対応が明確な他の種別の学級と異なり、曖昧で広範囲に及んでいます。
そのためか、発達障害または発達障害の可能性がある子供の多くが、自閉症・情緒障害学級に在籍しています。急に暴れたり教室を飛び出すなど通常の学級で問題を起こしている子や、教室での授業にまったくついていけない子、学校を休みがちな子など、通常の学級に不適応を起こしている子供が発達障害の診断を受け、特別支援学級に編入してくるケースも少なくありません。
「個々に対応した教育を」と言えば耳触りがいいですが、実はそういう子供たちを“隔離”しているようなものではないかと疑問を持つことがあります。本来、「個々に対応した教育」が必要なのは、そういう子供たちだけではなく、全員に対してです。