なぜみんなで実験するの? ~理科実験における「再現性」の大切さ~ 【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

理科ではより正しい、より確からしい結果を導くために観察や実験を行って問題解決をしていきます。その際、班や複数の人の考えをもとに解決をしていくわけですが、最初から先生が結果を教えず、わざわざ子ども自身で問題を解決しているのはどうしてでだと思いますか?それは、理科の授業の目的が学習内容の知識(結果がこうなる、覚えたい用語など)を教えることだけではなく、子どもたちに問題解決の方法やその考え方も学ばせたいという点にあります。今回は「再現性」ということに着目したお話ですが、再現性とは、「誰が行っても、何度行っても同じ結果が出る」という考え方です。このような考え方は、より正しい、より確からしい結果を導くためにとても大切な考え方です。今回は、どのように「再現性」の考え方を子どもたちに学ばせればよいか考えみましょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/神奈川県公立小学校教諭・堀優太
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

なぜみんなで実験するの? ~「再現性」~

理科の授業で実験をするときには、同じ実験をグループごとに行なったり、一人ずつ行なったりすることがよくあります。授業では当たり前のように見られる光景ですね。
結論をハッキリさせたいのなら、先生が演示実験をすれば良いはずですが、なぜ、みんなで実験するのでしょうか? その意味を子どもたちとしっかり共有し、考察に繋げることが大切です。

ここでは、第5学年「植物の発芽と成長」で「インゲン豆の発芽に水は必要なのだろうか」という問題の実験場面を想定してみましょう。

この問題を解決するために、水に触れさせておくインゲン豆と、水に触れさせないインゲン豆を準備し、観察することにしました。1週間後、結果を見ると…。

水ありの条件では8班中7班が発芽して、水なしの条件では8班中発芽した班はありませんでした。
もし、5班だけが実験をしてその結果から考察をするなら、「インゲン豆の発芽に水は必要ない」と考えられます。しかし、みんなで実験することで「8班中7班が発芽した」という結果から、「インゲン豆の発芽に水は必要である」と考えられますね。

このように、みんなで実験することで、より多くのデータに基づいて考察することができますね。

しかし、5班の子どもたちは納得していないかもしれません。自分達の班だけ結果がずれているのです。そんな時は、先生が問い返してあげましょう。

なんで5班だけ発芽しなかったんだろうね。

発芽率(※)っていうものがあるんだって。班に1つずつじゃなく、2つのインゲン豆を使ったら良かったのかもしれないよ。

脱脂綿に水をしっかり含ませていなかったんじゃないかな。

じゃあ脱脂綿に10mLの水を染み込ませるって決めようよ。

なぜ5

結果がずれた時は、その原因を問い返すことで子どもの考えが深まるチャンスになります。そして、先生は考えを深めた子どもたちを価値付けてあげましょう。

みんなで実験したから、次の実験につながるような方法を考えることができましたね。5班の結果がずれていなかったら、ここまで考えは深まりませんでした。より多くの結果を基に考えることが大切ですね。

こんなやりとりを年度初めから繰り返していくと、子どもたちは段々と実験結果を大切にするようになってきます。実験結果には「正しい」も「間違い」もなく、「それぞれの結果」という事実があるだけです。みんなで実験するからこそ、みんなで納得できる結論に辿り着くことができるのです。

※発芽率:種子にはその種類ごとに「発芽率」があり、条件が揃っていても発芽しないものが含まれていると考えるのが一般的です。本記事で紹介したインゲンの発芽率は、市販の種子で80%程度です。なお、ニンジンやシュンギクなど発芽率の低いものは50%程度で、発芽率の高いダイコンやハクサイなどでも85%程度とされています。
また市販の種子は防湿処理などで保護されており、開封後すぐに使い切らないと品質が落ち、期待通りの発芽率にならないことがありますので、注意してください。

イラスト/難波孝

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堀 優太先生

<執筆者プロフィール>
堀 優太●ほり・ゆうた 神奈川県公立小学校教諭。理科の研究校に着任したことで科学の面白さに気付く。現在は様々な研究会に顔を出し、日々勉強に励んでいる。SSTA横浜支部会員。現在所属する横浜市立立野小学校は、令和5年度に全国小学校理科研究大会を控えている。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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