発達障害【わかる!教育ニュース#18】
先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第18回のテーマは「発達障害」です。
目次
公立小中学校の通常学級に通う子の8.8%に、発達障害の可能性あり
1学級35人のうち3人。今、学習や対人関係に困難を抱える子が、そのぐらいの割合で存在すると言われています。多いか少ないかはともかく、必要な支援を受けているのでしょうか。
全国の公立小中学校の通常学級に通う子の8.8%に、発達障害の可能性があることが、文部科学省の調査で分かりました(参照データ)。調査は2022年1〜2月に抽出で実施。学習面や行動面にまつわる困難について質問項目を複数設け、当てはまる子がどれだけいるかを確認しました。ただし、医師の診断に基づく回答ではありません。担任が子供の状況から判断し、校長の了解を受けて答えています。
発達障害とされる8.8%のうち、「書く」「計算する」など特定分野の学習に困難のある学習障害(LD)の子は、6.5%。注意力の欠如や多動が見られる子は4.0%、対人関係が苦手、特定のこだわりが強いなど高機能自閉症の傾向の子は1.7%でした。
質問内容が異なるため単純な比較はできませんが、発達障害とされる子は2012年の前回調査より、2.3ポイント増えました。文科省の有識者会議はその背景を、文字に触れる機会や対面での会話、体験活動の減少を挙げる一方で、「特別支援教育に対する教員や保護者の理解が進み、今まで見すごされた困難のある子に目を向けるようになった」とも見ています。
「自分のいる学校で通級指導を受けられるよう充実させる」
調査からは、発達障害と見られる子に、支援が十分届いていない実態も窺えます。
学校の対応などを検討する「校内委員会」で支援が必要と判断したのは、28.7%。授業中に教室内でていねいな指導を受けられる座席位置や、習熟度に応じた指導などの配慮を受けていない子は、43.2%に上ります。通常学級に在籍し、必要に応じて別室で指導を受ける「通級指導」は、10.6%にとどまりました。
文科省は現在、通常学級に通う障害のある子の支援を巡る有識者会議を設け、2022年度内に報告を受ける予定です。通級指導には他校に通って学ぶ形もありますが、永岡桂子文科相は「他校に通わなくても、自分のいる学校で通級指導を受けられるよう充実させる」と、自校での指導を重視。通級指導を担う教員の基礎定数化や、教職課程での特別支援に関する科目の必修化を進めるとともに、新規に採用した教員が10年目までに特別支援学級を経験するよう促す姿勢も打ち出しました。
障害の有無にかかわらず、子供たちが一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」が唱えられるなか、国連は2022年9月、日本に対する勧告で、障害のある子を「分離」する特別支援教育に懸念を示し、通常学級での学びを促しました。障害のある子や保護者が通常学級を望んでも、受け入れ態勢の不備を理由に拒まれたと訴える声も出ています。その子に必要な、そして将来につながる支援を講じるには、多忙な教員の負担を増やすことなく対応できる仕組みづくりも考える必要があります。
参照データ
▽文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
https://www.mext.go.jp/content/20221208-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf
心の病い 【わかる!教育ニュース#19】はこちらです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子