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サンマをきれいに食べて学ぶこと【ぬまっち流】

2019/9/21

斬新な授業で、子どものやる気をグングン引き出すカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生が、低学年の自主性を育む実践を紹介します。10月は旬のサンマをキレイ食べること。SPHF(サンマ・パーフェクト・骨抜き・フェス)と名付けた活動のゴールとは?

サンマの骨を上手に抜きたい!子どものやる気を教材にする

子どもが成長するのは、子どもの中にこうなりたい、これをやりたいというモチベーションがあるとき。やる気があれば、子どもは勝手に動くし、自分の力で伸びます。ですから教師がやるべきことは、子どもに何かをやらせることではなく、「こうなりたい」「これをやりたい」という気持ちを引き出す仕掛けをつくり、それを実行できるような環境をつくること。さらに、やる気を持続させ、自信につながるようなシステムをつくることなのです。

子どもたちのやる気を尊重したことで、子どもが自ら課題を解決し、多くの可能性を広げていった活動例が、「SPHF(サンマ・パーフェクト・骨抜き・フェス)」。総合学習の時間で、サンマを焼き、どうすればきれいに食べられるかをクラス全員で研究する取組です。

一年生の担任の時、朝の会で「昨日食べたサンマがすごくおいしかったんだよね。サンマを食べられる人いる?」と聞いてみました。すると、「嫌い」「無理」「魚は骨が多くて食べづらい」という子が多かったのです。そこで、「大人になって箸で魚をきれいに食べられるとかっこいいんだよ。モテるよ?」などと話していると、子どもたちは「骨を上手に取って魚を食べられるようになりたい」と言い出したのです。

その時ボクの頭に浮かんだイメージが、箸で上手にサンマを完食する「子どもの笑顔」と、普段は食べたがらない魚をモリモリ食べる子どもを見ている「保護者の笑顔」です。子どものやりたいということが、みんなのためになるならば、ボクは絶対にやると決めてます。早速、2週間後にSPHFを開催することにしました。

当日、焼いたサンマをそれぞれお盆に乗せて、「始め!」の合図でスタート。みんな驚くほど上手に骨を取り出して食べていました。その後振り返りをしたところ、「もっとやりたい」というので、第二回も開催することにしました。

このイベントを開催するにあたり考えたのは、「PDCAサイクル(P=計画・D=実行・C=評価・A=改善)」を回すこと。サンマをどうすればきれいに食べられるのか、自分で考えさせ、実際に上達するところまで話し合わせようと考えたのです。このPDCAサイクルこそ、モチベーションを持続させ、自信につなげるシステムです。実際、プランと実行だけで終わらず、振り返りをしっかり行い、改善策を考えて取り組ませることで、子どもたちの中に、「もっときれいに食べたい」というモチベーションが高まり、どんどん上達していきました。

さらに、骨を取りだすコツを他のクラスの子にも伝えようとポスターにして発表しました。また、国語の時間に自分が食べたサンマに手紙を書くことで、作文力・表現力はもちろん、命をいただく感謝の気持ちも高まりました。

SPHF当日とPDCAの話し合いの様子

(左)PDCAについての説明 (右)見事に完食!
(左)PDCAについての説明 (右)見事に完食!
(クリックすると別ウィンドウで開きます)

まずはPDCAについて丁寧に説明。単にサンマを食べて楽しかったイベントで終わらせず、やる気を継続するシステムをつくります。当日までに家庭で練習してきた子どもたちは、見事に完食! 中には6匹もサンマを食べて練習した子や、骨や頭まで食べてしまう子もいました。

SPHFのC
(クリックすると別ウィンドウで開きます)

イベントを振り返るPDCAの中の「C(チェック)」の活動。「できたこと」「できなかったこと」「やってみた気持ち」の3点について話し合ったところ、「もう一回やる」という新たな目標ができました。

SPHFのAを考える
(クリックすると別ウィンドウで開きます)

C(チェック)でできた目標に対し、達成するためにどうすべきか考える「A(改善のアクション)」の話合い。次はどうすればもっと上手にできるか、「マッサージはやさしくする」「身と骨の間に箸を入れる」など、さまざまな意見が挙がりました。

子どものやる気を継続するシステムづくりが重要

これがもしも、「サンマを残さず食べよう」であったり、「作文力を高めるためにこんなことをしてみよう」ということがゴールであれば、うまくいかなったでしょう。「サンマの骨をきれいに抜きたい」という子どもたちのモチベーションをゴールに設定し、PDCAサイクルを回しながら子どもの意思で改善を繰り返すことで、食育、国語の文章力やプレゼンテーション力の向上に至るまでやる気を継続できたのです。

教材は焼き魚でなくてもよいのです。大事なのは子どもの中から「やりたい」という気持ちを引き出すこと。やる気があれば、それをどうやって教材にしていくのか後付けで考えてもよいと思っています。「子どもにこうなってほしいから、この教材を使おう」ではなく、子どもの「こうなりたい」「これをやりたい」という気持ちを教材にして、そこから生まれる行動や考えを意味付けしていくことで、より多くの付加価値を生み出すことにつながるはずです。

取材・文/出浦文絵

沼田晶弘先生 撮影/下重修
沼田晶弘先生 撮影/下重修

沼田晶弘先生
1975年東京生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に、『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)等がある。

『教育技術 小一小二』2019年10月号より

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